#推したい会社!「お菓子は文化のバロメーター」北海道が誇る【六花亭】
降りしきる、無垢な雪が描きだす
銀色の景色のごとく
清く、正しく、美しい
北海道の企業「六花亭」を、わたしは推したい。
北海道を代表する企業「六花亭」
去年の冬のこと。はじめて札幌の地へ降り立った。旅行で1週間の滞在だった。
時計台やテレビ塔などの観光地に出かけ、寿司やラーメンをはじめとしたグルメも堪能。
日頃から甘いものに目がないわたしは、北海道ゆかりのお菓子屋さんの本店巡りも予定に入れていた。
北海道はそれ自体が強烈なブランド力を持っている。
日本各地で開催されている「北海道物産展」の人気ぶりは、他の地域のそれを圧倒している。
「北海道産〇〇を使用」とあるだけで、おいしさが保証されているような気さえする。
北海道というコンテンツの吸引力は、北海道に行ったことがない人にも十分な影響力があるのだろう。
物産展やイベント等でなくてはならない、北海道を代表するブランドはいくつもある。
そのうちのひとつが「六花亭」だ。
言わずと知れた北海道土産「マルセイバターサンド」
「マルセイバターサンド」は六花亭のシグネチャー商品で、イベントでは必ず売り場に並んでいる。
北海道やスイーツにくわしくない人でも一度ならず、その名前を聞いたことがあるように思う。

今回札幌旅行で訪れた六花亭の本店は、札幌駅から少し歩いたところにある。
その日は雪が降っていた。日中でも仄暗く、モノクロな世界に迷い込んでしまったような不思議な感覚に包まれていた。
北海道の雪はサラサラとしていて、積もっても溶けることがない。雪道というよりも、砂浜を歩いている感覚。
わたしが生まれ育った東京の冬とは、景色も空気も匂いも感触までも、まるで違っていた。

六花亭本店へ到着したのは午後3時頃。店内の暖かさに体がじんわりとほぐれる。
天井が高くゆったりとした店内。正面には一面に大きな窓。そこに収まる雪景色の中庭。
明るく開放的な空間に六花亭自慢の商品が並ぶさまに心が躍る。
六花亭本店での買い物体験で気づいたこと
悪天候で外を歩く人はまばらだったにもかかわらず、店内はお客さんで賑わっている。
観光客と思しき人たちは、カゴいっぱいに六花亭の商品を入れている。
そんな中、杖をついた年配の方がひとりで買い物している姿があった。
店内にはイスが配置されていて、そこに腰掛けて休憩しては、また立ち上がり買い物を再開する。このご老人は地元の人だろうか。
店内にはこれまで見たことのないお菓子がたくさん並んでいる。
あの有名な「マルセイバターサンド」はもちろんのこと、和菓子もあれば洋菓子もある。種類豊富だ。季節柄、クリスマスにちなんだ商品までラインナップしている。
先ほどイスで休憩していたご老人は和菓子やおかきをいくつかカゴに入れていた。
六花亭がこれほどの種類のお菓子を作っていることは知らなかった。
大人も子ども、性別問わず、自分の好みに合わせて自由に楽しめるような品揃えだと感じた。
たっぷり時間をかけて店内を何周もしながら、わたしも次々と商品をカゴにいれていく。
うれしいことに個包装のものも売っていて、少しずついろいろな種類を食べたい要望を叶えてくれる。

すっかり買い物に夢中になってしまった。同行していた夫はいつの間にか店内のイスに腰掛けていて、わたしの買い物が終わるのを待っていた。
ようやくレジでお会計を済ませると、紙袋に丁寧に入れてくれて、雨よけ(雪よけ)のビニールまでつけてくれた。
丁寧な対応に感動していると、ふと気がつく。
わたしが時間をかけて選び購入したお菓子は、お店にとっても心をこめて大切に作ったお菓子なのだ。
"どうぞ家まで大切にお持ち帰りください。あたたかいお部屋でゆっくりとおいしくお召し上がりください。"
店頭で売っておしまい、ではない。
六花亭が請け負っているのは、その先の、お菓子を囲む風景なのではないか。
誰かを笑顔に変え、誰かを元気づけ、誰かを癒す。
六花亭は誰かの小さなしあわせを願っているように感じて、心が温まった。
売り場の一角にある階段を上がった先に、喫茶兼カフェスペースがある。
喫茶でゆっくりと食事を楽しむこともできるし、ちょっと休憩したい人はカフェスペースを利用できる。
わたしはカフェスペースでホットコーヒーをいただいた。
あたたかい飲みものと、手軽に食べられるスイーツが販売されている。
ホットコーヒーはなんと120円。コンビニのコーヒーよりも安い価格だ。
ビターでコクのある本格的な味のコーヒーが、じんわりと体を内側から温める。
買い物のあと、ちょっと一息つきたい。
そんな気持ちをわかってくれていて嬉しくなる。

広々とした店内。買い物中に休憩できるイス。丁寧な梱包。カフェスペースに喫茶。
来店した人が気持ちよく過ごせる工夫。
それは歓迎の印。
滞在時間は30分程度。
しかしその30分は六花亭のおもてなしの気持ちを受けるのにじゅうぶんな時間であった。
Threadsに集まった六花亭への想い
札幌の六花亭本店に行って体験したこの話を、後日Threadsにポストした。
すると、地元の方々からたくさんのコメントが寄せられた。
本店はもともと帯広にあったこと ——
商品に込められた想い ——
お菓子づくりの理念 ——
思い出にまつわる話 ——
そのすべてが六花亭への愛にあふれていた。コメントの一部を紹介する。

わたしは驚いた。と、同時にうらやましく思った。すべてのコメントの根底に、北海道を誇る気持ちをたしかに感じる。
果たしてわたしはどうか?生まれ育った東京で、わたしは誰かに、どれくらいの熱量で、どんなことを語れるだろう?
プールに落とした一滴のインクのように、溶けて、流れて、消えていくSNSの世界で、コメントをしないではいられないほどの愛。
六花亭本店での体験は、単純な買い物だけに止まらない、さまざまな気づきを得た時間だった。
六花亭とはどのような企業なのか。
もっと六花亭のことを知りたいと思った。
北の大地で六花亭が目指すもの
六花亭は、売上や規模の拡大を一切目指さないという。一体どういうことなのだろう。
その六花亭では、売り上げのノルマや目標は設定していない。「売り上げが落ち込めば、お菓子が美味しくないという証拠。目的は売り上げではなく、あくまでも美味しいものを提供すること」と考えている。
お客さんに喜んでもらうこと
ファンを作ること
愛される会社になること
六花亭の経営指針はこれだ。
そして理念の実現のための最重要事項は、働く人を重視するということだという。
今となっては、従業員満足度と顧客満足度の相関関係は誰もが知るところである。
働く人のモチベーションアップが生産性を向上する。
やがてはサービスや商品の質が高まり結果顧客満足度が上がるというものだ。
六花亭は早くからこの従業員満足度に着目していることがわかる。
会社ホームページによると1981年から有給休暇の取得率100%の取り組みを開始。2009年には20年連続で達成したとの記事がある。
「働き方改革」という言葉が存在しない40年以上も前のことだ。「時代の先駆け」と呼ぶにはあまりにも軽々しい。
経営者の確固たる意思をもってこそ、理想は実現し得る。
綺麗事や夢物語ではなく、心からそれを信じていなければ決してできない取り組みなのだと思う。
健全なる精神は健全なる身体に宿る
一般的な企業の福利厚生には資格取得支援などのスキルアップ支援など、仕事に直結したものが多くみられるなか、六花亭の福利厚生は、とことん働く人に寄り添っている。
社員の前向きな取り組みを応援したり、リフレッシュにも力を入れていることがわかる。
次のような福利厚生がある。
公休利用法
従業員が日々働く中で抱いた興味のあることに公休で挑戦できる制度です。社内公募、書類選考により2週間から最長2ヶ月間の公休を自分磨きに使えます。
社内旅行制度
行きたいコースと目的を企画して6名以上の仲間が集まれば、会社から旅行費用の70%(年間20万円まで)が補助金として支給されます。有給休暇や休日を利用する社内旅行、遊ぶときはとことん遊ぶ「仕事も遊びも一生懸命」を代表する制度です。
他にも表彰制度やクラブ活動などがある。六花亭が働く人に還元していく姿勢を随所に感じる。
社員が心身ともに健康で働くことができる。それは企業が健全に永続することにつながっていく。
「仕事と休日のバランス。その利用の仕方で、精神的な健康が維持増進されると考えています。社員1人1人が身心ともに健康でなければ、おいしいお菓子は作れません。さらに充実した休暇制度作りに取り組みたいと思います」
六花亭が体現する「ノブレス・オブリージュ」
六花亭は文化事業にも力を入れている。
「六花亭アートヴィレッジ」は自然豊かな森の中に美術館や作品館がいくつも並ぶ観光地だ。なんと美術館の入館料は無料。(寄付を募る形をとっている)
そして今年2025年にはさらに美術館も新設されるとのこと。
約8000冊の食に関する蔵書が自由に閲覧できる図書館「六花文庫」は、誰もが利用可能なのだという。
北海道の中札内村には六花亭が直接運営する美術館が。実はこの美術館、大正2年から銭湯として利用されていた建物を移築したものだという。
他にも、ツタに覆われた築75年の建物を、誰もが利用できる図書館として、活用しているのだ。略)
こうした歴史的に価値のある建物を地域に残すことで、その景観を地域の財産として後世に残そうと考えている。
「マーケットに限界がある産業だからこそ、成長を追うのではなく、いかに企業として深耕していくか」を考えなければいけない。
六花亭本店にはコンサートホールがあり定期的にイベントが開催されている。
チケットはリーズナブルな価格で販売されており、さらには六花亭の買いもので貯めたポイントの景品にもなっている。
六花亭は十勝、帯広で生まれた。生誕の地、十勝に生きる子どもたちの詩を掲載した冊子「サイロ」は65年にわたって毎月発行されている。
札幌、函館など北海道各地に店舗を構える今も、十勝は特別の想いを強く持っていることがわかる。
″高貴な身分に伴う義務″と言う意味の「ノブレスオブリージュ」。現代ではビジネスシーンをはじめ幅広く使われるようになった言葉だ。
六花亭を知るほどに、この言葉を思わずにはいられない。
ノブレス・オブリージュとは、一般的に「財産、権力、社会的地位を持つものは社会的義務が伴う」という意味です。
元々は西洋貴族等への啓蒙として、自発的な無私の行動を促す言葉です。
「財産、権力、社会的地位」というものは、自分自身の能力ではなく、社会から与えられたものであるから、自己を犠牲にしてでも果たすべき社会的義務があるという考えです。
事業で得た利益を惜しみなく文化活動や地域とのつながりに投じる。
事業規模を横に広げていくのではなく、根を張るように深く強く。
そんな姿勢を創業からずっと貫いてきたからこそ、今もなお、地元の人々に愛され続けているのだと思う。
東京出店を選ばなかった六花亭
今を遡ること1980年代。六花亭は東京への出店を打診されながらも、売上や規模の拡大を一切目指さず、その代わりに従業員の質を向上することに努めた。
その成果は前述のとおりである。
わたしは東京で生まれ育った。新しく最先端であることを至上とし、そうあるように要求される場所のように思う。
もちろん東京にも古き良きものがまったくないわけではない。
日々変化し続けることを求められ、伝統や文化を守るよりも、便利さや利益の追求が優先される。
短期的に利益を生むことが存在意義かのように。
それは東京に課せられた役割、あるいは宿命のようなものだと、わたしは感じている。
時の流れがどこよりも早く進む東京。一時的に加熱して、急速に萎んでいった流行を、わたしたちはいくつも見てきた。

東京は人口が多く、観光客も多く集まる場所である。日本中、世界中からたくさんの人々が集まる東京に北海道の有名な企業が進出、出店すれば確実に利益をもたらすことは、素人にも察しはつく。
それでも目先の利益にとらわれなかった。
六花亭は東京進出を選ばなかった。
そして2025年現在も六花亭は北海道以外に出店していない。
お菓子を通じて描く未来のあるべき姿
六花亭は北海道とそこで暮らす人々とともに生きてきた。
1933年の創業から利益を求めず、働く人を優先し、地元へ還元する。
これからも、六花亭はこのシンプルなテーマを変えることなく、未来へと進んでいくのだろう。
小田豊四郎氏は、「お菓子は文化のバロメーター」という標語を掲げた。安全で健康的なお菓子が食べられること、あるいは季節を楽しめるお菓子があること、その土地を代表するお菓子があること。そしてお菓子を通じて心を育てる機会があること。暮らしを営むうえで、なくてはならないこうした「ゆとり」を文化の尺度と捉え、製菓の製造販売というビジネスとともに実現していく方針は、六花亭という企業の根幹をなしている。
北海道には六花亭以外にも、全国に名を轟かせるたくさんの製菓企業が集まる場所だ。
「お菓子は文化のバロメーター」。
それに則して見てみれば、北海道の文化はなんと豊饒なことだろう。
六花亭はお菓子作りを通じて、大切なものを教えてくれている。
それはどこかに置き忘れてしまったけれど、誰もがたしかに大切にしていた何かだ。
思い出す時間がないほど、現代社会は速く進み、必要以上に忙しい。
こうした現代にあって軸のぶれない六花亭の姿勢は、頼もしい。
日本が大切にしてきた、郷愁にも似た良心がそこにはある。
六花亭のお菓子を手に取ると、わたしは感じる。
雪のように静かに、いつもそばで寄り添うあたたかな優しさを。
清く、正しく、美しい。
六花亭は北海道の白銀の景色を思わせる。
北の大地に、おおらかな時間が流れている。

参照サイト
このnoteを書くにあたり、下記のサイトを参照しました。
・グローバルナビ
https://bs.tbs.co.jp/globalnavi/bigname/060603.html
・なぜ「北海道土産の定番」は東京進出しないのか…六花亭が「北海道だけの店舗」にこだわるワケ
https://president.jp/articles/-/80000?page=1
・六花亭 福利厚生・社内制度
https://www.rokkatei.co.jp/recruitment/outline/welfare/
・20年連続で、全社員が有給消化できたわけ――六花亭製菓
https://www.itmedia.co.jp/bizid/articles/0905/11/news075.html
・「六花亭」の独自すぎるサバイバル術の全貌に迫る!:カンブリア宮殿
https://www.tv-tokyo.co.jp/plus/business/entry/2018/018066.html
・「お菓子のとなりで文化が育つ。北のおやつ屋が教えてくれた『豊かさ』」についてhttps://www.mecenat.or.jp/ja/column/visit/17402
・ノブレスオブリージュとは?意味をわかりやすく解説!実践例に学ぶ日本人に重要な精神!
https://souken.shikigaku.jp/2136/

