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今まさに家を建てている私が『ありふれた家を建てる』を読んだら、刺さりまくった

はじめに:家を建てている途中で、家を建てた人の本を読んだ

いま、私は人生で初めて、家を建てている真っ最中だ。

建売見学から始まり、注文住宅にシフトして、見学会に赴き、ようやく施工会社と契約したのがつい先日。
そして今は間取りの最終調整をして、補助金やローンと格闘している最中……。
やることが多すぎて、頭の中がずっとパンパンになっている。

そんなタイミングで読んだのが、椹野道流さんの『ありふれた家を建てる』。
小説家である著者が、自分の家を建てた一部始終を、なんと完成から17年経って振り返ったエッセイだ。

これがもう、最初から最後まで「わかる〜!」と「えっ、そんなことある!?」の連続で。
今日は、これから家を建てる私の目線で、この本に何を感じたかを書いていきたい。

▼ 家づくりを始めた頃に読んだ本

家づくりを始めたばかりの頃に読んだ本も、すごく面白かった。
プロの書き手の家づくり本は、読むたびに刺激をもらえる。その感想はこちらに。

▼ 私の家づくりシリーズ(家探し連載の最新作)


17年前のことを、なんでこんなに覚えてるの?

まず驚いたのが、これが「家を建てた17年後に書かれた本」だということ。

土地を決めた日の景色も、設計士さんとの会話も、地鎮祭の天気まで、ぜんぶ鮮明に綴られている。
自分が言ったこと、言われたことが、克明に残されている。
私なんて、先週の打ち合わせで何を話したかも怪しいのに。

きっと、家を建てるという出来事が、それだけ人生の中で大きくて、濃い時間だったんだろう。
17年経っても色褪せないくらいに。

それを思うと、いま私が体験している一つひとつも、きっと一生忘れない出来事になるんだろうな、と背筋が伸びた。
薄々感じていたけれど、家を建てるって、人生で一番大きな買い物になるだろうし、間違いなく、一大プロジェクトだ……!


登場人物のネーミングセンスが、最&高

この本、とにかく登場人物が魅力的。

家づくりに関わる住宅会社の人たちに、著者が勝手にあだ名をつけているのだけど、これが絶妙。
設計を担当する営業さんは、見た目がそっくりだという理由で「オバマ氏」。

しかもこのオバマ氏、著者が「夢のない、ありふれた家がいい」と力説したあとに、晴れやかな笑顔でこう言い放つ。

「やりましょう!」

そう、バラク・オバマの「Yes, we can!」である。
ありふれた家を作る話なのに、テンションだけは大統領就任演説。このギャップで一気に引き込まれた。

そして読みながら、ずっと思っていた。
「いや、こんなにいちいちドラマティックなこと、ある!?」と。

土地との運命的な出会いも、職人さんたちの個性も、トラブルの数々も、まるで物語みたいにドラマチックで。
……まあ、小説家さんだし、多少は盛っているのかもしれないけれど(笑)。
でも、それも含めて「プロの書き手はやっぱり違うな」と唸らされた。

私も今、家づくりシリーズをnoteに書いている。
だからこそ、「うわー、私ももっと面白おかしく書きたい!」と、いい意味で悔しくなった。


土地と人には、不思議な「ご縁」がある

そもそもこの本、始まりからしてドラマチックだ。

きっかけは、実家の台所で洗い物をしている母の、唐突なひと言。
「あなた、そろそろ家を建てなさいよ」。

そうして出会った土地が、なんと20年以上ずっと空き地だった、実家の斜め前。
敷地のど真ん中にそびえる赤松の老木と、満開の山桜の景色に一目惚れして、著者は思わず「ここにします。ここ、買います」と口走ってしまう。
即決ぅ!?

そんな著者に、不動産屋のおじさんがかけた言葉がいい。

「そういうもんなんですよ。土地ってね、ダメな時は何十カ所見てもダメなのに、決まる時は、すぐ心が決まっちゃうの」

これ、なんだか妙に納得してしまった。

家も土地も、理屈で選んでいるようでいて、最後は「ご縁」みたいなものに背中を押される気がする。

私もちょうど、これから土地の契約を控えているところ。
それこそ何十カ所も土地は見てまわったけど、この土地には「ビビビッ」ときた。

私よりも夫の方がその感覚は鋭くて、

「あの土地を超えてない」

という名言が生まれた。
この土地も、きっと、「ご縁の糸」が結ばれていたように思います。


「ありふれた家」が、全然ありふれていない

この本のいちばんの魅力は、タイトルの「ありふれた家」が、結果、まったくありふれていなかったこと。

著者は最初、設計士さんにこう宣言する。

「癒しとか夢とかじゃないんです。家は、不自由なく住めれば、それでいいんです。私が求めているのは、ただの『ありふれた家』です!」
「ドリームとファンタジーは捨ててください」

かっこいい。潔い。
……と思いきや、打ち合わせが進むにつれて、要望がどんどん「ありふれていない」方向へ転がっていく。

「リビングは要りません」
「くつろぐなら、仕事部屋でいいです。というか、仕事部屋がいいです」

これには設計士・レオ氏も絶句して、ついにこう言う。

「正直申しまして、もはやまったく『ありふれた家』ではないですね」

これ、すごくよくわかる。
私も「シンプルでいい」「普通でいい」と思っていたはずなのに、気づけば防音室がほしい、眺望がほしい、ここはこだわりたい……と要望が増えていく。

「普通の家」なんて、たぶんこの世に存在しない。
人それぞれの「普通」があって、それを形にしようとした瞬間、もう全然ありふれていないのだ。

『ありふれた家』で良いのなら、建売住宅を購入しているだろうしね!コスパも良いし!
「眺望が良い」「ちょっと郊外が良い」「防音室が欲しい」「一階和室はいらない」という私たち夫婦の希望も、全くありふれていないのだ。
当の本人にとっては、重要項目だし、「あたりまえじゃん、これは必須だよ」案件なので、たまに忘れそうになるけれど。

きっと、私たち夫婦の家も、全然ありふれていない。


家づくりは「選択と、迷いと妥協、そして決定」の連続

本の中に、こんな一節がある。

家を一軒建てるって、「選択と、しょっちゅう迷いと妥協、そして決定」の連続だなあ……

これ、施工会社を決めたばかりの今の私でも、もう痛いほど実感している。

建売にするのか、注文住宅にするのか。
どこの会社で建てるのか、土地はどうする、間取りはどうする、ローンはどこで組む、補助金は使えるのか。
ひとつ決めたと思ったら、次の選択が待っている。

しかもこの本を読んで気づいたのは、私はまだまだ入り口に立っているだけ、ということ。
というか!ようやく入り口に立ったって感じですよね!
施工会社を決めるまでも、めちゃくちゃ悩んだのですが!?

これから間取り、内装、設備、外構、コンセントの位置に至るまで、決めることは膨大に増えていく。

そう思うと、「うわ、これからが本番か……」と気が引き締まる。

それと同時に、ちょっと心強いこともある。
それは、その過程をnoteに書いているということ。

だから、何かトラブルが起きても、「ちくしょう!……でも、これはネタになるなぁ!!」という強い気持ちで臨めそう。
記録する人間の、アウトプットする人間の、ささやかな特権である。
失恋したとしても、「曲にできるぜ!いや、曲にしたるぜ!」って反骨精神メラメラ湧き上がりますからね。

何かを創る人間というのは、得てしてそういうものでございます。


「心が安らぐ家」という視点の重要さ

内装の打ち合わせで、かけられたという言葉も、心に残った。

「ご自宅というのは、うれしい時も、悲しい時も、苦しい時も、過ごす場所なんです。そこでお仕事もなさる。ですから、できたら、心安らげる、穏やかな気持ちになれる内装をご提案させていただけたら、と思います」

著者はそれまで、新しい家を「趣味を全開にして、快適に仕事ができて、本がたくさん収納できて、猫が快適に暮らせる場所」だと位置づけていたという。
でもこの言葉で、自分自身の心に意識を向けられていなかったことに気づく。

家は、仕事場であると同時に、いつか必ず「自宅」になる。
うれしい時も、しんどい時も、自分を守って癒してくれる場所。
その視点を、私はこの本に教えてもらった。

流行りやオシャレさを一番に考えるのではなく、将来も見据えて、決めていきたい。


「銀行は、借金取りじゃなくて用心棒」で心が軽くなった

40年ローン。
正直、この数字を見るたびに、胸の奥がきゅっとなる。
ずっと怖いし、未だに怖い。
40年先ってー!私、完全に、おばあちゃんじゃーーーん!

そんな私に、この本の言葉がそっと効いた。
内装の打ち合わせで、レオ氏が著者にかける言葉だ。

「銀行のことを、借金取りではなく、用心棒だと考えてみるのはどうでしょうかね。ローンを背負っている間、あなたのおうちは、銀行に守られているのだと」
「あなた自身にも、『銀行が融資するに値する人物』という付加価値がつきますよ」

これを読んで、すーっと心が軽くなった。

ローンって、どうしても「借りているもの、返さなきゃいけない重荷」として捉えてしまう。
でも、「銀行が私という人間に大金を貸してくれた=信用してくれた証」と思えば、ちょっと胸を張れる。

ものは考えようだなぁ、と。
この一文に出会えただけでも、読んでよかったと思える。


「物わかりの良い施主は、舐められる」

ドキッとした言葉が、もうひとつ。
地鎮祭のトラブルを経て、著者が学んだことだ。

物わかりの良い施主は、舐められる

著者いわく、担当者に悪意はなくても、彼らも会社員。
上司が「押し切れ」と言えば、その指示が優先されてしまうこともある。
だから、自分が我慢して丸く収めようとする「都合のいい慎み深さ」は、家づくりにおいては捨てなければいけない、と。

これ、他人事じゃない。

実は私も、契約まわりで早速ひとつ「やられかけた」ことがある。
長期優良住宅の補助金について、「もう締め切りました」と言われた一件だ。
家に帰ってnoteを書き、調べていたら、2025年度版の情報を見て言っていたことが発覚。

そりゃぁ!締め切られてるだろうよ!去年の話だもの!!!

危なかった。
こういうところは、施主である自分がしっかりチェックしないといけない。
noteを書いていて心底良かった!と思った瞬間であった。

それこそうちの夫は、「自分が我慢して丸く収まるなら、文句は言わない」タイプ。
だからそこは、私が強い気持ちで臨まねばならぬ。と、思っています。
と言いつつ、これを機に、夫にももっと意見を言える強さを持ってもらおう、とも思っています。

家づくりは、ぜんぶ人任せにしてはいけない!舐められてはいけない!と改めて気を引き締めました。


図面が「家」になるまでには、何が起きるかわからない

家づくりの怖さを、ぞくっと言い当てた一節もあった。

2次元を3次元にする作業は、プロ集団を持ってしても、決して簡単ではありません。
天候、思わぬ敵、怠慢、勘違い、説明不足、計算ミス……。

実際この本でも、このあとキッチンの発注ミスや、引き渡し日のトラブルなど、様々な予想外な事態が起きていく。
うわー、図面の上ではきれいに完成していても、それが現実の家になるまでには、いくつもの障害物が待っているのか……。
「絶対にミスは起こるから、しっかり確認した方が良い!」と、SNSなどでも何度も見かけていたけど、こんなに色々あるものなのか〜〜〜。うわぁ〜〜〜〜。

これ、今の私にとってかなりリアルな話だった。

実は、うちがお願いした施工会社は、パース(完成予想図)づくりがちょっと弱め。
だから今は、AIで家のイメージを生成して、自分の中の「3次元」を補いながら打ち合わせを進めている。

頭の中の2次元を、ちゃんと現実の3次元にしていく作業。
ここからが、いちばん気の抜けないところなんだろうな、と覚悟した。


17年後の「答え合わせ」が、いちばん沁みた

この本がただの家づくり記録で終わらないのは、ラストに「17年住んでみてどうだったか」が書かれているからだ。

これがもう、沁みる。

各部屋には、設計のときにちゃんと「使い方」が想定されていた。
でも、実際に暮らしてみると、想定通りにいかなかった部屋がいくつもあったという。

中でも笑ったのが、寝室の話。
朝の光で爽やかに目覚められるように、東向きの大きな窓がある素敵な寝室を作ったのに——

この17年間で、私がそこに寝た事は2度しかありません。

夜型の著者にとって、朝日は爽やかどころか「顔面ガン当たり」のまぶしさ。早々に寝室として諦めたらしい。
今ではその寝室、猫たちの寝床になっているそうだ。

そして、ぜんぶ読み終えて、いちばん心に残ったのはこの一文。

家と私と猫たちは、共に生き、共に成長し、共に歳を重ねている

家は、建てて終わりじゃない。
建ててからの、長い長い時間こそが「家づくり」なんだと教えてもらった気がする。

著者は、1階を仕事・2階を生活と分けるつもりが、結局どっちも仕事部屋で過ごす「ワークはライフの一部、分離不可」のスタイルに落ち着いたという。
「オンオフ切り替えよう」とか「ちゃんと休もう」というのが最近はよく言われているけれど、仕事が好きなら、別に仕事漬けでも良いのか……と、思った。

家は、住む人の暮らしにとことん付き合ってくれる。
そんな関係性に、ちょっと憧れてしまった。
それと同時に、私は、どんな生活がしたいんだろう。どんな生活になるだろう、と、思いを馳せた。


おわりに:私も、家づくりシリーズを最後まで書きたい

読み終えて、いちばん強く思ったこと。

それは、「私も、自分の家づくりを最後まで書き残したい」ということ。

今の私は、まだ営業さんと打ち合わせを始めたばかりの段階。
これから設計士さんや職人さんや、いろんな人が登場するんだろう……ごくり。
良い人たちだといいなぁ、と今からドキドキしている。
この本のように、個性的で、あだ名をつけたくなるような人たちが登場してくれると良いなぁ。

そして欲を言えば、家が建ったあとも、初めてのメンテナンスのことも、何十年後に住んでみた感想も書きたい。
この本みたいに、いつか「17年後の答え合わせ」ができるくらい、長くnoteを続けていられますように。

最後にひとつだけ。
著者は次回作で「実家じまい」について書く予定らしいのだけど、これも私にとってまったく他人事ではないテーマで。
次の本も、めちゃくちゃ楽しみにしている。

——というわけで。
これからの家づくり、不安もあるけれど、それ以上にワクワクしている。

おら、とってもワクワクしてっぞ!

みなさんの中に、これから家を建てる人・建てたいと思っている人がいたら。
この本、ぜひ一緒に読んでみてほしいです。


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