#1|生まれる、ということ|彼女が母になるまで、僕は何を知らなかったか
あの日、私は思いました。
ひとりでは、この子を守れない、と。
そのとき、隣にいたパパは、何を感じていたんだろう。
これは、あるパパの物語です。
Episode1|第1話「その日、すべてが予定外になった。」
その日、僕はただ、エコーを見るのを楽しみにしていた。
まさかその数分後に、
「このまま入院です」と言われるなんて、思ってもいなかった。
父になる準備なんて、
まだ何もできていなかった。
その日、僕は初めて妊婦健診に付き添った。
妻は、思っていたよりもつわりは軽く、妊娠経過も順調だった。
だから僕は、どこかで「このまま何事もなく出産を迎える」と思っていた。
年明けすぐの健診。
「あと2ヶ月で二人の生活も終わりか」と、少し寂しくて、少し楽しみだった。
エコーで動く我が子を見るのを、心から楽しみにしていた。
妻が先に診察室に入り、僕は呼ばれるのを待合で待っていた。
——まだかな。
エコーを見たら、もっと父親としての実感が湧くんだろうか。
男の子なら、それらしいものが見えるのかな。
そんなことを考えながら待っていた。
でも、なかなか呼ばれない。
こんなに長いものなのか。
僕は初めてのことで、何も分からなかった。
すると突然、診察室の扉が開いた。
「奥様はこのまま入院になります!!
ご主人は入院の手続きをして、いつ生まれてもいいように準備をしてください!!」
頭が真っ白になった。
意味が分からないまま、「え?あ、はい」とだけ答えた。
——もう生まれるってこと?
——まだ予定日は2ヶ月も先なのに?
——妻は大丈夫なの?
疑問だけが頭の中をぐるぐるしていた。
帰り道、僕はずっと考えていた。
年末に一緒に出かけすぎたのがいけなかったんじゃないか。
もっと安静にさせておくべきだったんじゃないか。
後悔ばかりが浮かんできた。
それでも、「準備をして」と言われたことを思い出し、僕は動いた。
パパ友に連絡し、何が必要かを聞きまくった。
ベッドを貸してくれる友人、買い物に付き合ってくれる友人がいた。
僕は、言われるがままに必要なものを揃えていった。
その日から、僕は家で一人になった。
本当は二人で過ごすはずだった予定日までの2ヵ月。
その家で一人きりになると、不安だけが膨らんでいった。
漫画『コウノドリ』を読みながら、知識を得ては、不安になる。
そして初めて気づいた。
出産は、奇跡なんだ、と。
妻が入院している間、僕の中には不安が広がり続けていた。
女性は自分の身体で産む。
でも男性はそうじゃない。
——生まれてきた子を、本当に愛せるのか。
——ちゃんと父親になれるのか。
答えのない問いだけが、増えていった。
まさか、こんな始まりになるとは思っていなかった。
そのときの僕は、
出産がどれだけ予測できないものかも、
父親がどれだけ無力かも、
まだ何も分かっていなかった。
—— 第1話 おわり
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