助産師はオワコン?少子化時代のリアルな将来性と、今だからこそ「選ばれる助産師」になる方法
「出産の場面を見て、助産師という職業に憧れた」
「妊娠・出産・育児という女性の大きなライフイベントに寄り添えるようになりたい」
そんな素敵な夢を持って勉強に励んでいる看護学生・助産学生の皆さん、あるいは助産師を目指そうか迷っている社会人の皆さん。
日々流れてくる「少子化」のニュースを見て、ふとこんな不安が頭をよぎることはありませんか?
「出生数がこれだけ減っているのに、今から助産師を目指して大丈夫か…」
「産婦人科の閉鎖が相次いでいるし、就職先がなくなったらどうしよう…」
ネットで検索すると、心無い「助産師はオワコン」なんて言葉が目に入り、せっかくのやる気が削られてしまうこともあるかもしれません。
現役の先輩たちの間でも、「以前より、分娩介助の機会が減っており、経験不足で焦っている」というリアルな声を聞くことがあります。
お産の数そのものが減っている現代、これから先細る業界であることは間違いありません。
しかし、結論からお伝えすると…
助産師はまったくオワコンではないと思います。むしろ、少子化の今だからこそ、価値を出せる「専門職」だと考えます。
ただし、これまでの時代と同じように「ただ資格を持っているだけの、普通の助産師」のままでいると、時代の波に呑み込まれてしまうリスクはあります。これからの時代を生き抜くために必要なのは、「選ばれる助産師」になることがカギになってくると思います。
私自身、これからの時代に「選ばれる助産師になるにはどうすればいいのだろう?」と考えたとき、ある一つの言葉を思い出しました。
教育改革実践家である藤原和博氏の著書『10年後、君に仕事はあるのか?』に出てくる、「100万分の1のレアキャラ(希少価値の高い人材)」を目指すというフレーズです。
「選ばれる」というのは、何もママ(妊産婦さん)からだけではありません。就職・転職時にあなたを欲しがる「病院(経営者)」、そして現場であなたと一緒に働きたいと望む「上司や同僚」のすべてから選ばれることが求められるようになる気がします。
この記事では、綺麗事だけではない助産師を取り巻く「データや学校のリアルな現状」をしっかり直視した上で、この「100万分の1のレアキャラ助産師」になるためのキャリアの掛け算について考察します。
進路に迷っているあなたの不安を解消し、「やっぱり助産師になりたい!」と自信を持って一歩を踏み出せるお手伝いがしたい。ぜひ最後まで読んでみてください。
【現状のリアル】データから考える、助産師を取り巻く環境
ネットの情報に惑わされないために、まずは厚生労働省などの正確なデータをもとに、現在のリアルな環境を直視してみましょう。
10年後の出生数は「50万人台」へ。想定を上回るスピードで進む少子化
日本の出生数は毎年、過去最少を更新し続けています。
直近の日本の出生数は67万1,236人でした。実は、国の公式データでは「出生数が67万人台になるのは2040年頃」と考えられていたのです。しかし、現実にはそれよりも15年も早く、すでに67万人台まで減ってしまいました。
このままのペースでいけば、10年後(2036年頃)の日本の出生数は「50万人台」に突入すると予想されています。今よりもさらに約10万人近くお産が減るのは、ほぼ避けられない未来です。
実際、ここ数年だけでも多くの分娩施設が閉鎖を余儀なくされており、若手助産師の間でも「昔ほど分娩介助の経験(件数)が積めなくて焦っている」という声があるのは事実です。
なぜ少子化なのに助産師の数は増えているの?
「お産が減っているなら、助産師の仕事はなくなっていくはず」と思いますよね。しかし不思議なことに、厚生労働省の統計によると、就業助産師の数は2014年の33,956人から、2024年には38,721人へと、この10年間で約5,000人も増加しているのです。
これには主に3つの理由があります。
①お産以外(産後ケアなど)の仕事が増えた
近年、市区町村が主導する「産後ケア事業(宿泊や日帰りでの育児サポート)」が全国で拡大しています。この産後ケアや、不妊治療のサポート、育児相談など、「分娩」以外での助産師のニーズが急増しています。
②高齢出産やハイリスクなお産の増加
晩婚化に伴い、高齢出産や高度な医療管理が必要な「ハイリスク妊産婦」が増えています。安全にお産を行うために、病院側がより多くの専門知識を持つ助産師を確保しようとしています。
③働く環境の整備と資格の「一生モノ」の強さ
助産師は看護師免許も持っているため、ライフステージ(結婚や育児)に合わせた柔軟な働き方が選べます。そのため、一度離職しても復職する人が多く、全体の数が底上げされています。
養成学校は減っているの?(学校のリアルな現状)
学校をめぐる環境も激変しています。今、教育の形が「専門学校」から「大学・大学院」へシフトしているのが現状です。
1年制の専門学校は「閉校」が相次いでいる
助産師になるには、「在学中に10例以上の分娩(お産)介助を取り扱う実習」を行う必要があります。しかし、少子化でお産の数自体が減ったため、学生に経験させるお産の数が足りず、実習が組めなくなって閉校する専門学校が続出しています。実際、日本赤十字社助産師学校(2027年3月閉校予定)や国立病院機構の養成校(2029年3月閉校予定)など、歴史ある名門校が相次いで募集停止を発表しており、この流れは今後10年でさらに加速すると考えます。大学や大学院での養成ルートが中心に 🎓
一方で、看護系大学の数はこの20年で増えました。大学の「4年間の中で助産師資格も取るコース」や、大学卒業後に進む「大学院(2年制)」で助産師を育てるケースが増えています。今後は大学院への進学など、資格を取るためのルートが今より「高学歴化(かつ狭き門)」していくと予想されます。
「1年制の専門学校は少子化のせいで減っているが、大学や大学院での養成枠があるため、毎年一定数の助産師が誕生し続けている」というのが正確な構造です。
私は看護大学の「4年間の中で助産師資格も取るコース」で助産師になりましたが、母校は付属の病院を持っていません。それでも、助産実習ができたことがどれだけありがたいことだったか…付属の病院がある専門学校でも実習が組めなくなって閉校するニュースを見て心が痛みました。
【本音】「お産が減っているのに助産師が余らない」のは綺麗事じゃないの?
ここで、一つの大きな疑問が浮かびます。
「分娩件数がこれだけ劇的に減っているのに、助産師が余らないわけがない。女性の生涯サポート職へのシフトなんて、ただの綺麗事じゃないの?」
私はお産が好きだからこそ、その違和感が拭えないのです。
もし「お産の現場をサポートを憧れて助産師を目指している」学生さんに対して、「これからはお産以外を支えるから大丈夫だよ」という説明だけでは、不誠実な回答だと思うからです。
現実を包み隠さず言えば、「1人の助産師が経験する生涯の分娩介助数」は物理的に激減します。 昔のように「お産を何百例も取り上げる働き方」ができる枠は、これから確実に狭くなっていきます。
だからこそ、今から「選ばれる助産師」の価値について考える意義が大きくなると思います。
「選ばれる助産師」の価値について考える
【比較検証】「普通の助産師」と「選ばれる助産師」の決定的な違い
生き残るどころか、これからの時代に引っ張りだこになる「選ばれる助産師」になるには?
確かな技術はもちろんですが、技術は後から付いてくるもの。それよりも、マインドの部分が違いを分けると考えます。
私が考える選ばれる助産師とは「相手の潜在的なニーズ(本人がまだ気づいていない困りごと)に応えられる助産師」ではないか…と。
普通の助産師
ママに「何か困ったことはありますか?」と聞いて、言われたこと(目に見えるニーズ)にだけ答える。
選ばれる助産師
「今はこうだけど、退院して家に戻ったら、きっとこういうことで困るだろうな」と先回りして、具体的な提案や保健指導ができる。
さらに、相手が「自分の頑張りを認めてほしい」「不安を分かってほしい」という承認欲求(心の声)に応える声掛けが抜群に上手な助産師。
ただ医療的なお世話をするだけでなく、ママの心に寄り添い、安心感で満たす。この「先回り力」と「声掛けの技術」こそが、普通の助産師とプロ中のプロを分ける境界線だと日々感じながら働いています。
【生存戦略】藤原和博氏に学ぶ「100万分の1」の人材になるキャリアの掛け算
先ほどの「先回り力」を磨けば、あなたは1万分の1の少しレアな人材になれます。
少しレアってちょっと微妙ですよね(笑)
でも、オリンピックの金メダリストが「100万分の1の人材」と考えるとどうですか?そして、「1つの分野で100万分の1」を目指す必要はありません。
冒頭でお話しした藤原和博氏の「希少価値(レアキャラ)化」のロジックから「100分の1のスキル」を3つ掛け合わせる。
「100分の1 × 100分の1 × 100分の1 = 100万分の1」
藤原氏の教えるキャリアの生存戦略を助産師のキャリアに当てはめて考えてみます👇
1つ目の掛け算:「助産師の国家資格」を取得する(800分の1)
そもそも助産師になるのは決して簡単ではありません。倍率の高い受験を乗り越え、過酷な助産実習を突破し、国家試験に合格する。これだけで、社会全体で見ればすでに、100人に1人以上の希少価値があります。というのも日本で働く女性の数は約3,000万人を超えていますが、そのうち助産師は約3万8,000人と考えると、すでに800分の1の人材です。しかし、これだけでは「普通の助産師」のままです。
2つ目の掛け算:「組織のなかで独自のポジション(居場所)を確立できる人」になる(13分の1)
2つ目の掛け算は、現場から愛される「人間力」と「先回り力」です。どんなに素晴らしい専門知識を持っていても、「素直」・「誠実」・「報連相ができる」というコミュニケーションなしでは、組織の中であなただけのポジションを確立することは困難です。さらに、目の前の妊産婦さんの心の声を聴き、「この先、こういうことで困るかも」と先回りして提案や声掛けができる。この「愛される人間力」と「先回り力」を極めていくと、職場において「あの人がシフトにいてくれないと困る」という唯一無二の存在になります。先ほどの1つ目の掛け算:「助産師の国家資格」を取得する(800分の1)に、他の普通の助産師13人より組織の中で愛される「人間力」と「先回り力」を意識するだけで、10000分の1(800×13=10400)の人材になれます。周りの13人より「愛される人間力」と「先回り力」を極めるのがポイント。
3つ目の掛け算:助産師 × 「〇〇が他の人より得意」(100分の1)
最後の掛け算は、職場の誰もが持っていない「+αの専門性」を1つ持つこと。職場のなかの「100人に1人」、「〇〇が他の人より得意」の状態を目指します。例えば、「赤ちゃんの睡眠(夜泣き・寝かしつけ・ねんねルーティン)」の知識、ママの体を整える「薬膳・栄養学」や「離乳食のプロ」でも構いません。職業でもいいと思います。経営者とか、SNS発信者とか。〇〇はあなたが興味がある、人より得意な分野がいいと思います。
この3つの軸が掛け合わさったとき、あなたは「100万分の1の選ばれる助産師」になります。
少子化でお産の数が減少し、病院が淘汰される時代が来ても、社会は「100万分の1のレアキャラであるあなた」を絶対に手放したくないと思いませんか?
【生存戦略】時代に淘汰されない助産師になるために
ここまで、100万分の1のレアキャラになるための「キャリアの掛け算」をお伝えしてきました。
出生数が50万人台にまで落ち込むこれからの時代に、時代に淘汰されない助産師になるために…
【妊産婦さん】【経営層】【一緒に働く同僚】【社会】の4者に選んでもらうためには?選ばれるための理由を解説します。
① 妊産婦さんから選ばれるには?
これまでは、家から近いという理由だけで病院が選ばれる時代でした。しかし、SNSで口コミや体験が共有される時代、妊産婦さんはたくさん調べて病院を選ぶようになっています。
もしあなたが、ママの心の声(承認)に応え、先回りして不安を解消できる助産師だったらどうでしょうか。
「あの助産師さんがいたから、ここで産んで本当によかった」という感動につながると思いませんか?
お産の取り扱いを終了する病院が相次ぐ中、「あなたという存在が、妊産婦さんを引き寄せる理由」になる。 これこそが、少子化時代に最前線で淘汰されない助産師の姿ではないかと考えます。
② 経営層から選ばれるには?
出生数の減少により、病院の経営層も今、激しい生存競争の中にいます。生き残りをかけて「無痛分娩」や「産後ケア」など、時代のニーズに合わせた新しいサービスへの転換を迫られているのです。
経営層が最も手放したくないのは、単に「今まで通りのルーティンワークができる人」ではありません。病院が変わろうとするときに、柔軟に波に乗り、組織の成長に貢献してくれる人材です。
また、高い医療安全の意識を持ち、病院の信頼を揺るがすアクシデント(医療事故)を防いでくれる存在は、経営の観点から見ても選ばれる存在といえるでしょう。
組織の存続を脅かすリスクを減らし、新しい価値を一緒に作れる助産師こそが、リストラや縮小の波が来ても真っ先に「残ってほしい」と選ばれるのでは?と考えます。
③ 一緒に働く同僚から選ばれるには?
先述した通り、晩婚化に伴い、高齢出産や高度な医療管理が必要な「ハイリスク妊産婦」が増えています。
そんな緊迫したチームのなかで、素直で誠実、的確な報連相ができ、当たり前のことを当たり前にこなせる人がいるだけで、現場の空気はガラリと変わります。
同僚や上司から「この子と一緒にシフトに入ると、本当に仕事がやりやすいし安心できる」と思われることは、組織で生き残る上で最強の武器になります。
④ 社会(地域・企業)から選ばれるには?
結論から言うと、「病院にとらわれず、社会課題の解決を目指す」です。
社会課題というと急にスケールが大きくなりますが…病院の中で待っているだけでは、出会える「ケアの対象者」は限定されます。しかし、病院の外に出て「社会」を見渡すと、そこには病院の手が届かない無数の深い悩みが溢れていることに気づくはず。
現代の地域社会や民間企業は、不妊治療の増加、産後うつ、生理痛やPMS、更年期障害、働く女性のキャリアと出産のデリケートな両立(フェムテック分野など)など、女性の健康や生き方に関する課題に溢れています。
ここであなたが「病院の外にある課題」に目を向け、自分の強みを発信していくことで、社会から求められる専門家として選ばれるようになります。
社会の側にあなたの確固たる「独自の居場所」を確立できれば、病院の経営が傾こうが、お産の数がどれだけ減ろうが関係ありません。独立して開業することも、オンラインで全国のママを相手に仕事をすることも可能になります。
助産師を目指す理由も働き方も自由ですが、「病院にとらわれず、社会課題の解決を目指す助産師」になれる能力があれば10年後も、100年後もサバイブできる助産師になれるのでは?
と、考えずにはいられないのです。
私があなたに助産師を諦めてほしくない理由
出生数50万人台という数字や、学校の閉鎖というリアルを見て、「やっぱり怖いな」と助産師を目指すことに躊躇するかもしれません。
ですが、それでも私がどんなに時代になってもあなたに助産師の夢を諦めてほしくない理由。
それは、綺麗事でもなんでもなく、私自身がこの助産師という仕事に、言葉にできないほどのやりがいと誇りを感じていて、心の底からこの仕事が大好きだからです。
確かにこれからの時代、お産の件数は減り、求められるハードルは高くなるはずです。
ですが、目の前の妊産婦さんの役に立てた感じた時の喜びや、新しく尊い命が誕生するその奇跡の瞬間に立ち会える喜びは、何ものにも換えられない「プライスレス」な価値があるからです。
不安と陣痛に耐えるママが求めているのは、最新のロボットやAIではありません。「大丈夫ですよ」「順調ですからね」と目を見て優しく声をかけてくれる、あなたの存在ではないでしょうか?
背中をさすってくれる、あなたの手の温かさではないでしょうか?
「よく頑張ったね」と、一緒に涙を流してくれるあなたの心のぬくもりではないでしょうか?
命が生まれるその瞬間、そして不安でいっぱいの産後の毎日に必要なのは、マニュアルやデータではなく、人間が生み出す「安心感」のような気がします。助産師は、テクノロジーやAIがどれだけ進化しても、絶対に価値が薄れない究極の仕事だともいえます。
10年後、年間50万人のお産があるということは、毎日全国で約1,300回以上の奇跡が起きているということです。出生数が減ったからといって、命の価値が下がるわけでも、助産師の仕事の価値が下がるわけでもないはずです。
少子化の数字に、あなたの素敵な夢を奪われないでください。
未来のたくさんのママと赤ちゃんが、いま一生懸命勉強している「あなたのその手」を、心から待っています。
最後にー
時代が変わっても、新しく生まれる命がある限り、あなたの力は絶対に必要とされます。
「自分はどんな助産師になりたいか」「どんな掛け算ができるか」
まずはノートに自分の想いを書き出すことから始めてみませんか?
少子化が進み、「選ばれる助産師」にならなければ生き残れない時代。その最初の、そして最も重要なターニングポイントになるのが「就職活動」です。
「助産師になっても、希望の病院に就職できなかったらどうしよう」
「周産期センターや人気の産院は倍率が高そう……」
「就職先の産院は将来的に閉院にならないよね…」
実習や国試の勉強との忙しさの中で、夜も眠れないほど就活の不安を抱えていませんか?
実は、私もかつて皆さんと同じような不安がありました。地方から都市部の周産期センターを目指した時、周りから得られる情報が一切なく、ただ就活に対して焦っていました。「もし不採用になったら…」と、就活期間中は強いプレッシャーと孤独に耐えていたのを覚えています。
しかし、無事に採用され、その後10年以上現場で働きながら、実習指導や採用に関わる病院見学・インターンの対応を経験する中で、1つの重要な事実に気づきました。
それは、「採用側(病院)が、学生のどこを見て合否を決めているのか」には、明確な共通の評価基準があるということです。
この「採用側の視点」を正しく理解し、先回りして準備を整えた後輩たちは、高倍率の病院から次々と内定を勝ち取っています。
そこで、これまでの経験から、すべての助産学生が迷わず実践できるように1冊のnoteを書くことにしました。
それが、この『助産学生のための就活ロードマップ』です。
「就活の不安から解放されて、明日からの実習と国試対策に100%集中したい!」という方は、ぜひこちらの記事も読んでみてください🙇♀️
