オープンデータバトル2025に参加して
2025年のオープンデータバトルに参加しました。ここでは、どのようにオープンデータを探し、どうやって作品を形にしていったのかをご紹介します。これから参加される方々にとって、少しでも参考になれば幸いです。
なお、「オープンデータバトルとは何か」については、次のNoteをご覧ください。
1.取り組みのきっかけ

(1)オープンデータバトル2024観戦
2024年11月、Xを眺めていたときに、OpenDataBattle2024への投票を呼びかけるポストが流れてきました。気になってサイトを開いてみると、自分の“推し(地元)”をさまざまな工夫でアピールしたTableauのVizが並んでいました。
投票方法がとてもユニークで、分析力やストーリーテリングなど、いくつかの視点ごとに優れた作品を三つずつ選んで投票します。どの作品も魅力的で、今まで知らなかった日本の姿をたくさん知ることができました。
このイベントの目的は、オープンデータ活用による地方創生。そして掲げられていた「データで人の心を動かせるか?」というコンセプトに強く共感し、2025年は自分も参加したいと心から思いました。
(2)身近なことを可視化することの楽しさ
私の2022年1月ごろからの活動テーマは「未来をつなぐ~Team TaToTsu(たとつ)」です。『たとつ』とは Tasks to Tsunagu を略したものです。
2022年4月にTableauと出会ってからは、Tableauによる身近なことの可視化がその活動の一部になっています。そんな中で出会ったのがオープンデータバトルです。
身近なこと、そして自分の地元をアピールするためのVizをつくる——まさに私の活動テーマとぴったり重なる取り組みでした。
「これはもう、参加するしかない」。そう強く思った瞬間でした。
(3)「わたし参加します」宣言
6月に一次エントリーはしたものの、原爆投下80周年に向けた原爆Vizの作成に取り組んでいたため、なかなかオープンデータバトルの作業を進められずにいました。
8月、ようやく原爆Vizを仕上げて投稿した頃、Tableau関連のキャンプイベントに参加しました。
その際「今年のオープンデータバトルに参加しようと思っているんです」と話したところ、「ぜひぜひ、作品お待ちしています!」という言葉をいただきました。お話ししていた方が、実はオープンデータバトルに深く関わっている方だったのです。
その瞬間、「これはもう、やり切るしかない」と気持ちが固まりました。
振り返ってみると、この“宣言”こそが最後まで走り切る大きな力になっていたと思います。言葉にすることで自分を動かす力が生まれる——まさに言霊のようでした。そして、誰に向けて宣言したのか、それもまた重要だったと感じています。
2.テーマ選び

(1)気になっていたこと
私には、以前からずっと気になっていることがありました。地元にある大きな水門です。治水設備であることはわかっていて、この存在のおかげで私たちは水害に遭わずに暮らせています。
ただ、「誰が、どのように管理してくれているのだろう?」という疑問がずっと心に残っていました。
(2)Copilotとの壁打ちからスタート
テーマ選びの最初の一歩は、Copilotとの壁打ちでした。
最初に投げかけた質問は、次のようなものでした。
「大阪の治水について、オープンデータを使用したTableau Vizを作成していきたいと思います。
「水の都」大阪 それはたくさんの川の恵みを受けた商いの歴史
ただ、これは水害の受けやすさと背中合わせ。 それでも、それを乗り越えるだけの治水の知恵のおかげで現在の繁栄があるのだと思っています。
その歴史と、治水の知恵のすばらしさにスポットをあてたいです。
そこで、質問です。関連のデータにはどのようなものがあるでしょうか?」
(3)テーマとなる「水防」との出会い
Copilotの回答を手がかりにオープンデータを辿っていく中で、「水防」という取り組み、そして「水防団」という存在を知りました。
テーマと調べる糸口が見つかった途端、展開は一気に加速しました。作業そのものもどんどん楽しくなり、データから新しい事実が見えるたびに、「水防がどれほど大切で、私たちの暮らしを支えているのか」を伝えたいという思いが強くなっていきました。
3.どんなオープンデータを使ったのか?

大阪府の治水事業サイトや国土交通省をはじめ、さまざまな行政サイトを参照しながらデータを集めました。データ元は多岐にわたり、残念ながら“ダウンロードしてそのまま使える”ものはほとんどありませんでした。
それでも丁寧に読み解き、必要な情報を組み合わせていくことで、Vizに必要なデータを整えていきました。
使用したデータは、大きく三つの種類に分けられます。
(1)資料から起こしたデータ
使用したデータの約7割は、サイトの記事から必要な数値を拾い上げたり、PDF資料を読み解いてデータを起こしたものです。手間がかかるように思えますが、この作業の過程そのものが「ストーリー構築」につながり、振り返れば一番充実していて楽しい時間でした。
作りたいマッピングやチャートのイメージを思い描きながら、必要な数値を拾い、Excel上でデータを組み立てていきました。調査メモ=データソース作成のような感じの作業でした。
★オープンデータ活用で大切なこと
必ず出典(情報元)を記載する必要があるので、データとともに「情報元」のURLなどを都度メモしておくことをおすすめします。
(2)そのまま使えるデータ
Tableauで使用した18のデータソースのうち、ダウンロードしてそのまま使えたものは4つだけでした。国土交通省や国土地理院が提供している空間データがこれにあたります。
空間データの扱い方については、「地図Tableauユーザー会」とのタイアップイベントで学んだことが大きな助けになりました。オープンデータバトルでは、このような学びの機会が用意されているため、初心者でも安心して取り組めると感じました。
(3)フィールドワークによる実測値データ
百聞は一見に如かず——そう思い、水防の最前線や関連施設を実際に歩いてみました。これも、先ほど触れた「地図Tableauユーザー会」のイベントに参加したことがきっかけです。
「海より低いまち大阪」とはどういうことなのか。
ルートヒストリーというアプリをスマホで起動しながら歩くと、通ったルートや標高、坂道の傾斜度、スピードなどを記録できます。残念ながら“海抜マイナス”の数値はうまく取得できず、そのままVizに使うことはできませんでした。
それでも、海抜マイナス4〜5mの地帯に広がる住宅地や、防潮扉が立ち並ぶ光景を自分の目で確かめられたことは大きな収穫でした。実際に歩いたからこそ、大阪の水防が持つ独自性の理由を肌で理解することができたのです。
★参考1
地元をアピールする際、マップ表現はとても大きな力を発揮します。「地図Tableauユーザー会」では、地図を使った可視化の面白さを体験できるイベントが数多く開催されています。興味のある方は、ぜひ次のサイトを覗いてみたり、Xアカウントをフォローしてみたりすると、新しい発見があるかもしれません。
★参考2
「そのまま使えるオープンデータがない…!」と感じて不安になった方に、**Prepper Open Data Bank(PODB)**というサービスをご紹介します。株式会社truestarさんが提供されているもので、オープンデータを前処理なしで活用できる仕組みが整っているそうです。
詳しい内容については、オープンデータバトルの勉強会アーカイブ動画で紹介されていますので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。
その他、これまでに開催されたイベントの動画や資料も、次のリンクから確認できます。最近は各自治体のオープンデータも充実してきていますので、ご自身がお住まいの地域や、生まれ故郷の自治体サイトを覗いてみると、新しい発見があるかもしれません。
4.どうやって分析を進めていったのか?

(1)思いを軸に
Copilotに最初にした問い「治水の知恵のすばらしさにスポットをあてたい」その思いは最後まで持ち続けました。この思いを軸にしていたことで、途中ぶれることなく分析とViz作成を進めることができたと思います。
(2)確かなデータを辿ることを大切に
「水防団」に関するデータがなかなか見つからず、焦りを感じた時期もありました。それでも根気強く調べ続けた結果、国の取り組みとしてまとめられている「水防」関連のサイトにたどり着くことができました。
Copilotは瞬時に情報を提示してくれますが、その数値がどこから導かれているのかを必ず確認するようにしました。たとえばPDF資料が出典なら、「何ページのどのあたりに書かれているのか」を尋ね、自分の目でその箇所を確かめたうえで、確かなエビデンスがあるものだけを採用するよう心がけました。
どれほど自分の仮説を後押ししてくれる内容であっても、客観性に欠ける情報を使ってしまえば、その瞬間に本当の「ものがたり」は見えなくなってしまいます。だからこそ、確かなデータを辿る姿勢を最後まで大切にしました。
★ちょっと裏話
Copilotのハルシネーション(もっともらしいけれど事実ではない情報を生成してしまう現象)を防ぐために心がけていたことを書きましたが、実は自分自身も「ドラマティックなものがたり」に寄せたくなる瞬間がありました。
ファイナリストに選出いただき、決勝に向けた追加調査と分析を始めたときのことです。私はCopilotにこう尋ねました。
「大阪の水防文化について追加で分析したいです。三大水門ができたのは1970年で、この年は大阪で初めて万博が開かれた年ですよね。三大水門は万博開催に向けて、日本の治水技術を結集して作られたものでもあったのでしょうか?」
するとCopilotの答えは、こうでした。
「確かに三大水門ができたのは万博開催の年と同じ1970年です。しかし、この水門ができたのは、台風による水害から大阪のまちを守らなければならない、という真剣な取り組みの中で生まれたものです。」
その“きっぱり”とした回答に、ハッとしました。
奇しくも2025年は2回目の大阪万博の年。万博と絡めれば、インパクトのある物語が作れる——そんな誘惑に、私自身が引っ張られかけていたのです。
Copilotのおかげで目が覚め、背筋を伸ばして、決勝への取り組みをまっすぐに始めることができました。
5.Tableauによる可視化で心がけたこと

(1)見る人が迷わずストーリーを追えるしくみづくり
全部で7つのダッシュボードを作成しました。最後のダッシュボードを除き、左上に配置したラジオボタンを上から順に押していくと、同じダッシュボード内でVizが切り替わり、ストーリーが展開していく構成にしています。
そして最後まで見終えたら、右上の「次へ」ボタンを押すことで次のダッシュボードへ進む——この流れを全体で統一しました。
Tableauに触れたことがない人でも迷わず読み進められるよう、ガイドとしての導線づくりを大切にしました。


Vizが切り替わり、ストーリーが進みます
ボタンでの切替にはDynamic Zone Visibility (DZV)、「次へ」ボタンにはナビゲーションボタンを使っています。Tableau PublicにアップしているVizをダウンロードいただけば、どのように設定しているかをご確認いただけます。
(2)気になったことをその場で探索できるつくり
「このチャートや写真は、どんな情報から作られているんだろう?」
そう思ったときに、その場で確認できるよう、関連情報へアクセスできる仕組みを組み込みました。
見る人それぞれが、自分の興味に合わせて自由に探索できるようにしたかったからです。Vizを“読む”だけでなく、“歩き回れる”ような体験を提供したかったのです。
(3)見る人がストーリーに入り込めるしかけづくり
今回、実際に現場を歩くフィールドワークを行いました。水防のフロントラインがどんな場所にあるのかを、ただ説明するだけでなく“感じてもらう”ためです。
歩いたルートの高低差を線グラフで可視化し、その上に現場で撮影した写真を配置することで、地形の変化や空気感をそのまま表現できればと思いました。
見る人が、自分もその場を歩いているような臨場感を味わえるようにしたかったのです。

最後まで迷わずストーリーを読み進めてもらい、それぞれの視点でいろいろなことを感じていただけたらうれしいです。「水防」は、特別な人だけのものではなく、誰にとっても大切で、すぐそばにあるテーマ。そのことが少しでも伝わっていれば、今回のVizづくりは大きな意味を持つのではないかと思っています。
6.何にどれだけの時間をかけたのか?

(1)作業の半分はデータ準備=ストーリー構築
今回の取り組みにかけた時間を振り返ってみると、合計でおよそ400時間ほど費やしていました。そのうち半分は、データ準備にあてた時間です。
6月に一次エントリーはしたものの、作りたいVizの構想があり、さらにVizGamesにも出品しようとしていたため、本格的に取り組み始めたのは9月に入ってからでした。そこからは一気に集中モードに入りました。
データ準備の作業は、そのままストーリーを組み立てる作業でもありました。大変ではありましたが、ひとつひとつの事実がつながっていく過程はとても楽しく、夢中で取り組んだ時間でした。
(2)動かしてなんぼのTableauの良さを最大限に伝えるために
Tableauは、見る人がVizを操作するたびに変化が生まれる“動かしてこそ”のツールです。その魅力を予選でしっかり伝えるには、動画が最適だと考え、今回初めて動画作成に挑戦しました。
使用したのは、オープンデータバトル運営の方に教えていただいた「Clipchamp」というアプリです。PowerPointで作成したスライドをストーリー展開のタイトルとして挟み込み、その間にVizを実際に動かしながら録画した映像を配置しました。さらに、水をイメージできるようなBGMをセットし、全体の雰囲気を整えました。
ClipchampはMicrosoft Officeのアプリで、PCで検索して表示されればそのまま利用できます。今回の動画制作は、すべてこのアプリだけで、無料で完結させることができました。
Clipchampでの具体的な動画作成方法については、また別の機会にご紹介できればと思っています。
https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/clipchamp
わたしが作成した動画は次からご確認いただけます。
(3)プレゼン練習
決勝進出が決まってからは、決勝用Vizの仕上げにも時間がかかり、プレゼン練習に割ける時間がどんどん少なくなっていきました。7分という限られた時間の中で伝えたいことを確実に届けるため、決勝用にも動画を作成することにしました。ここでもClipchampを活用しています。
完成動画は次からご確認いただけます。予選用からプレゼン用に色々と変えています。
さて、原稿を書き上げ、完成した動画に合わせて自分の声を録音し、通勤の行き帰りにはスマホで繰り返し聞きながら、タイミングと内容を覚えていきました。
始業前やお昼休み、天気の良い日は淀川の堤防を歩きながら声を出して練習しました。この場所は、水防に思いをはせることができる環境でもあり、プレゼンの練習場所として、とても良かったと思います。

堤防から淀川をのぞむ
★ちょっと裏話:「伝えたいメッセージがみえん!」

12/20(土)、本番のわずか二日前。リビングを歩きながらプレゼン練習をしていたとき、夫から「おまえが伝えたいことってなんなんや?なんかよーわからんな」と一言。
「えっ」と固まり、その瞬間から思考が止まりました。「今?このタイミングで?」「無理でしょ?」と頭の中が真っ白に。逃げ出したい気持ちがよぎり、「もう熱が出たことにするしか…」とまで思いました。
でも、予選で投票してくださった方々、前日に大きなエールを送ってくれた職場のみんなの顔が浮かび、「逃げるなんてできない」と思い直しました。とにかく原稿を書き直そうと取りかかったものの、なかなか進まない。気分転換にXを開くと、尊敬するOkamoto Akaneさんの #B2VB2025 Week24 のポストが目に飛び込んできました。
そしてなんと、
“The tree part was inspired by …”
そこに自分の名前が。
私は単純です。元気がないとき、周りの人が食べ物を差し入れてくれるのは、食べれば大抵復活するから。
でもこのときは、どんな食べ物よりも強いエネルギーをもらいました。胸の奥が一気に温かくなり、「まだできる。時間はある。自分が伝えたいことを伝えよう」と気持ちが戻ってきました。
そこから3時間ほどで原稿をすべて書き直し、練習を再開。しかし、9割方覚えていた原稿を上書きするのは想像以上に大変でした。
当日、6時台の新幹線に単身で乗り込み、スマホで新しい原稿を聞きながら必死に覚えました。会場に着くと、会いたかった方々とすれ違うたびに声をかけ、ご挨拶。リハーサルを終えると本番が近づいてくる。
「まずは何か食べないと」と思いながら、廊下を歩きつつイヤホンで原稿を聞き、ぶつぶつ練習している私は、きっと少し変な人に見えたと思います。
本番30分前、緊張と焦りでプチパニックになったあと、ふっと何かがはじけました。
「自分が伝えたいことをちゃんと伝えるために、今できることは何か」
そう考え、運営の方に「スタンドマイクにしていただけませんか」とお願いしました。たとえ原稿を読む形になっても、心を込めてメッセージを届けようと決めたのです。
結果、ほとんどナレーションのようなプレゼンになりましたが、後から「うなづきながら聞いてくれていた人がいたよ」と教えていただき、少し肩の力が抜けました。
いつか、2025年JTUG総会で素晴らしい基調講演をされた山辺先生のように、舞台の上を歩きながら堂々とプレゼンできる日が来たらいいなと思っています。
さいごに
色々なことがありましたが、今回の取り組みを最後までやり遂げられたのは、何よりも“人とのつながり”のおかげです。「やります!」という宣言に始まり、Tableauコミュニティのみなさんとのやりとり、オープンデータバトルの運営の方々、一緒に参加した方たち、そして決勝でともに戦ったファイナリストのみなさん。さらに、水防に関わる施設の方々との出会いも含め、本当に多くの方々の思いに支えられてきました。
そのすべてが積み重なって、今回の結果につながったのだと思います。
オープンデータバトル2025に参加して、本当に良かったと心から感じています。

みなさんも、ぜひオープンデータバトルに挑戦してみませんか。
多くの人が参加することで、オープンデータの活用がさらに広がり、日本全体がもっと盛り上がっていく——そんな未来につながればうれしいです。

決勝でファイナリスト全員が着用したTシャツに書いてあった言葉です
伝えたいこと、思いがあれば、参加できます!
さいごまで読んでいただきありがとうございました。
