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国際情勢:アメリカはこれ以上、作戦域を広げてはならない_31/07/2026追記

前置きと結論

 あまり書きたくないが、
 書かざるを得ない状況となった。
 (文字数11,348)

 本当は違う事を考えていたが、
 状況が危険極まりないので、
 書く事にした。

 もちろん、
 記事を書いた処で、
 戦争は止まりやしない。
 攻撃は続くだろう。
 
 だが考える事はできる。
 どうすれば人類の危機は、
 避けられるのかと。
 
 世界大戦は避けられるなら、
 避けた方がいい。
 
 人類の半数が死ぬ未来は、
 誰でも嫌だろう。
 今ならまだ避けられる。
 
 何が言いたいか、
 簡単に言うと、
 アメリカの攻撃と
 ウクライナの攻撃が、
 このまま続くと、
 ロシアとイランがくっつき、
 戦域が拡大して、
 収拾が付かなくなる。

 
 イランもロシアも、
 攻撃を受け続けるなら、
 攻撃を逸らしたくなる。
 
 であれば戦場を広げて、
 他の場所でも火の手を上げる。
 攻撃が分散するからだ。
 
 またイランとロシアは
 お互い結び付く利害もある。
 
 よって、

 ロシア・ウクライナ戦争と
 イラン・アメリカ戦争は、
 結合する恐れがある。

 
 またイランは、
 イエメンのフーシ派に、
 紅海封鎖を依頼し、
 中東の原油輸出を、
 止めようとしている。
 
 これはウクライナによるロシアの
 石油関連施設の攻撃と相まって、
 石油価格を確実に上昇させる。

 ウクライナの攻撃は、
 かなり利いているので、
 ロシア国内も燃料が逼迫し、
 プーチンより軍部が動く。

 ロシアは4年以上戦争を
 行っている国である。
 
 4年も全力で戦争していれば、
 軍隊が社会の中心となる。

 
 大統領でも抑え切れない。
 それはプリゴジンの乱を見れば、
 分かる通りだ。
 
 だから本当に怖いのは、
 ロシア軍だ。
 プーチン大統領ではない。

 だからプーチン大統領が、
 倒れた時、その後に来る男は、
 もっと怖い男だ。

 それがロシアの最後の姿で、
 世界を終わらせるかもしれない。

 だからプーチン大統領がいるうちに、
 この戦争を終わらせるべきだ。
  
 そして昨今の石油問題、
 ロシアとイランの「油断」が、
 世界の「油断」となる。
 油が絶たれたら、経済は大混乱する。
 
 とりわけロシアの燃料危機は、
 ロシア国内の圧力を上げる。
 
 プーチン大統領は下から突き上げられ、
 代わりにロシア軍が前に出て来る。
 
 だからロシアも核大国として、
 独自のエスカレーションに進む。
 これはプーチン大統領でも在り得る。

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 クレムリンは永遠に沈黙したりしない。
 必ず行動するだろう。
 核宣言→核実験→戦術核投入だ。
 
 これは危険極まりない。
 アメリカも、
 ウクライナも、
 作戦を見直した方がいい。
 
 戦略が合理的であればあるほど、
 相手も合理的に戦略を組む。
 
 イランとロシアが、
 攻撃を避けるため
 取る行動が、
 思わぬ結果を招く。
 
 要するに、
 アメリカも、
 ウクライナも、
 攻撃が有効である程、
 イランとロシアに
 攻撃を避けるため、
 取る行動の根拠と、
 合理性を与えている。
 
 そうなると、
 避けられない結果が来る。
 inevitableだ。
 
 ロシアは、
 ウクライナの攻撃を止めるため、
 イランに接近して、
 アメリカ経由で、
 ウクライナの攻撃を
 止めようとするだろう。
 交換条件だ。
 
 石油価格の事を考えると、
 アメリカ側も検討せざるを得ない。
 一定の合理性はある。
 
 そしてイランは、
 ロシアを利用するだろう。
 これは極めて厄介だ。
 戦争が長引く。
 
 この程度の事、
 各国インテリジェンスや、
 参謀本部で考えられている
 と思うが表に出て来ない。
 
 可能性の話だし、
 予測の一つに過ぎないとして、
 特に警告したりしない。
 
 だから実際に起きた時、
 そんな話、聞いていないか、
 何が起きたのか、
 全く分からないとなる。
 
 今更言っても、
 仕方のない事だが、
 2022年2月24日の前、
 ロシアはウクライナを
 確実に攻撃すると、
 周囲の人に伝えていた。

 誰も信じなかったが、
 実際は見ての通りだ。
 
 ソ連がアフガニスタンに
 侵攻する時と同じだと、
 感じていたのだ。
 
 2023年10月7日の前、
 イスラエルで起きた
 オクトーバーセブンの前も、
 どうしても嫌な予感がして、
 イスラエルが悪事を為す
 と考えて警告した。
 
 これは記事化している。
 オクトーバーセブン1ヶ月前だ。
 今見ると古いが、
 現在のイスラエルを予告している。

 前置きと結論は以上だ。
 
 これで十分という人は、
 ここで離脱しても結構だ。
 最低限の事は伝えている。
 
 以下、問題の理論面に入る。
 難しいと感じたら、
 途中離脱して構わない。

 まず最初に図解から示したい。
 軽く見るだけでいい。
 説明は後でする。

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   これらの図は、記事解説用に作った。アメリカのAnnapolisとか、フランスのÉcole de guerreとか、各国兵学校で教えるものとは違う。NATO標準でもない。フランスは近いが、どちらかと言うと、クラウゼヴィッツ的だ。
 
 「戦争とは外交の延長線上にある」という理解から図を起している。だから、国家の大戦略を一番上に置いている。フランス以外の兵学校では、この上部構造は別として入れていない。政治と軍事は別だと考えるからだ。
 
 教育上はそれでいいのかも知れない。
 civilian controlとかあるからだろう。
 しかし実際は政治がないと全体が見えない。
 
 あと政治は全体に影響を及ぼすので、
 単に戦略と重なり合うだけではない。
 
 他の階層とも重なり合う。
 そういう意味では完全に図式化できない。

 
 また戦術が政治に影響を及ぼす事もある。
 救出作戦の成否とかがそうだ。
 
 だからこの図解の動きは単純ではない。
 本当はあちこち重なり合う。

 だが分かり易く形を取らなければ、
 イメージが伝わらないため、
 このような図にした。
  
 ここで最初の図と最後の図を、
 頭の中で動かして欲しい。
 
 縦の動きと
 横の動きだが、
 一見して、
 統合できるようで、
 統合できない。
 相互に矛盾している。
 
 図解だとどうしても、
 二次元的、三次元的に、
 なるので、限界があるが、
 最初の図と最後の図が
 混ざり合う四次元的なものを、
 イメージして欲しい。

 
 最初の図は階層的だが、
 最後の図は横断的なのだ。
 単純に区分せず、混ぜるのだ。
 
 さらに階層の接続点は、
 単線ではなく複線で、
 常に動いているので、
 立体的でもないのだ。
 三次元的に表現できない。
 
 故に、
 時間と空間で、
 捻じれが起きて、
 矛盾が起きている。
 立体にならない。
 
 だが人間の頭の中で成立する。
 だから四次元的と言うしかない。

 
 国と国が関与すれば、
 さらに多層的に重なり合う。
 
 だから政治と軍事、
 その結果としての戦争は、
 単純に説明できるものでもない。

 相互に矛盾したものが、
 組織的に、社会的に結合するからだ。
 
 それはそのまま理解の困難度を高める。
 問題解決の困難度も同様だ。
 
 なぜならば、
 人間は矛盾を受け入れて、
 考える事ができるからだ。
 
 AIなら論理矛盾で停止する。
 だが人間は矛盾しても、
 思考停止しない。
 考え続ける。
 
 なぜならば、
 人間の思考は四次元的だからだ。
 
 そこが決定的に違う。
 だから未来も切り開ける。

 
 そして結論は、
 常に一つではなく、
 複数あり得るので、
 答えを一つ出しても、
 あまり意味がない。
 
 多くの可能性を示し、
 全体的傾向として、
 こうなると示せないと、
 説得力を欠く。
 予測にならない。
 
 選択する世界線は一つでも、
 それが多数の中の一つなのか、
 少数の中の一つなのかで、
 意味はかなり変わってくる。

 これは人間の頭の中でないと、
 再現できない。
 AIを使っても無理だ。

 仮にこれをスフィアと呼ぶなら、
 アメリカのスフィアと、
 イランのスフィアがあり、
 今、重なり合っている。
 
 近くにロシアのスフィアがあり、
 ウクライナのスフィアと重なっている。
 
 そこにイランのスフィアと
 ロシアのスフィアが重なると、
 アメリカとロシアのスフィアも
 重なり合ってしまう。
 
 軽い接触であれば、
 離脱は可能だろうが、
 本当に重なり合うと、
 離れるのは容易ではない。

 それは矛盾しているもの同士が、
 重なり合う事で、重層的に、
 解決困難度が上がるからだ。

 スフィア単体が矛盾構造を持つ
 四次元的存在であるのに、
 それが重なり合えば解けるものではない。
 
 宇宙で銀河と銀河が衝突するようなものだ。
 結果的にどうなるか予測困難だ。
 
 お互いスフィアが潰れるまで、
 ぶつかり合うだろう。
 
 今までは、
 アメリカのスフィアは、
 ウクライナのスフィアと、
 軽く接触する程度で、
 ロシアのスフィアと接触していなかった。

 だが今アメリカのスフィアは、
 イランのスフィアと重なりつつある。
 仮にこれをスフィアA群と呼ぶ。
 
 ロシアとウクライナのスフィアは、
 すでに重なっており、容易に分離できない。
 こちらもスフィアB群と呼ぶ。
 
 スフィアがスフィア群化すると、
 容易に分離できない。
 それはこれまでの戦争を見ても、
 分かる通りだ。
 
 スフィア単体でも矛盾しているのに、
 それを複数結合すれば矛盾度が増して、
 解決困難なスフィアが出来上がる。
 それが戦争だ。 

 そしてスフィアA群と
 スフィアB群が結合した場合、
 四つのスフィアを
 解かないといけないので、
 さらに分離は困難になる。
 乗算的な解決困難度になる。
 
 このタイプの戦争は過去にあった。
 第一次世界大戦がそうだ。
 
 同盟同盟同盟のスフィアがあり、
 一度戦争に入ると全部巻き込まれる。
 関係する国が多いので、
 紛争解決困難度は乗算的になる。
 2倍、4倍、8倍になる。
 
 恐らく人類が戦争を解決できるのは、
 乗算度2倍くらいまでだろう。
 
 4倍になったら、収拾がつかない。
 外交的解決困難度が途方もない。
 だから白黒付くまで戦争する。
 
 そして今起きている
 ロシア・ウクライナ戦争と
 イラン・アメリカ戦争が、
 結合したら、歴史的に言って、
 外交的解決困難度は、
 ほぼ不可能レベルになる。
 
 そして第一次世界大戦を見れば
 分かる通り、関係国は芋ずる式に、
 戦争へと突入する。
 
 現代だと同盟と言わず、
 集団的安全保障と言うが、
 NATOがそのまま、
 スフィアを拡大させる装置になる。
 4倍が8倍、16倍、32倍、64倍まで進む。
 
 もうそうなったら、
 誰も手を付けられない。
 
 また厄介な事に、
 石油問題も起きている。
 
 この利害から逃れられる国は、
 少ないだろう。
 
 そこでもスフィアはお互い接近する。
 二重に危険だ。
 
 ゴルディアスの紐ではないが、
 これを一刀の下に斬る事ができるのは、
 神仏だけだろう。その場合、
 人類の半数が死ぬ結末となる。
 それは避けたい。
 
 だから今の段階で、
 アメリカも、
 ウクライナも、
 作戦を見直して、
 戦域拡大を避けないと、
 裏でイランとロシアが、
 結合して、大変な事になる。
 
 戦争や外交を、
 このように説く事は、
 普通はしないが、あえて、
 外交的解決の困難さや、
 問題の深さを示すため、
 このように説明した。
 
 見た事も、聞いた事もない
 説明かも知れないが、
 理解の助けになれば幸いだ。
 
 ここから先は各論、
 議論の詳細で、
 普通の話になる。
 
 だが前段の議論を踏まえると、
 違って聞こえるかも知れない。

 最初はこの普通の話だけ、
 書こうとしたが、
 それではこれまでの記事と変わらず、
 事態の危険度が伝わらないので、
 こういう書き方をした。
 
 ただすでに聞いている話題も
 多いと思うので、
 ここで離脱しても、
 問題はない。

 これまでの議論が、
 理解できていれば十分だ。

ロシア・ウクライナ戦争とイラン戦争が接続する時

 戦争は、宣戦布告によってのみ世界大戦になる訳ではない。別々に始まった地域戦争の作戦域が拡大し、各国の戦略が地政学的に接続され、同じ軍事資源、海上交通、エネルギー市場、同盟網を奪い合うようになった時、形式上は複数の戦争であっても、実質的には一つの世界戦争へ近づいていく。
 
 現在のロシア・ウクライナ戦争と、アメリカ・イラン戦争には、その兆候が現れている。前者では、ウクライナがロシア国内の製油所、石油輸送施設、パイプライン、タンカーへの攻撃を拡大している。

 後者では、アメリカ軍がイランへの連続攻撃と海上封鎖を続け、イランはホルムズ海峡だけでなく、紅海とバベルマンデブ海峡まで戦域を広げようとしている。

 この二つがロシアの対イラン支援を介して接続すれば、欧州、中東、紅海、インド洋が一つの作戦体系へ組み込まれる。その段階では、アメリカが個々の戦闘で勝っているかどうかは、中心問題ではなくなる。問題は、アメリカの国家大戦略が、拡大し続ける作戦域を管理できるかどうかである。

ウクライナの攻撃は「ロシア軍」だけを削っているのではない

 ウクライナは現在、ロシアのエネルギー基盤への攻撃を大規模化している。2026年7月8日には、ウクライナの無人機がロシア国内の三つの製油所、パイプラインのポンプ施設、アゾフ海のタンカーを攻撃した。攻撃範囲はウクライナ国境付近からウラル方面まで広がり、一部地域では深刻な燃料不足も生じている。

 さらにウクライナは、ロシアが制裁を回避して石油を輸送する、いわゆる「影の船団」への攻撃も強めている。7月上旬、クリミアへ燃料を運んでいたとされる影の船団のタンカーがアゾフ海で相次いで攻撃された。ウクライナ側は、制裁対象となっている複数のタンカーを攻撃したと発表している。

 7月5日から14日にかけては、ウクライナ側部隊がアゾフ海で116隻の船舶を無人機で攻撃したとされる。対象にはタンカー、貨物船、曳船が含まれ、ロシアの石油輸送とクリミア向け燃料供給を妨害する事が目的とされた。ウクライナ側から見れば、これは合理的な作戦である。

 製油所を破壊すれば、ロシア軍の燃料供給を圧迫できる。タンカーを止めれば、輸出収入を減らせる。クリミアへの燃料輸送を妨害すれば、現地の軍事活動を弱められる。

 しかし、これはすでに戦場内の兵站攻撃だけではない。石油生産、精製、輸送、商船、港湾を一体として攻撃対象にしている以上、戦争はロシアの国家経済と世界のエネルギー市場へ直接接続している。

 しかも現在は、イラン情勢によってホルムズ海峡の通航量が急減し、世界の石油供給そのものが不安定化している。アメリカとイランの衝突再開を受け、原油価格は大きく上昇した。

 ホルムズ海峡は世界の石油・天然ガス輸送の約2割が通る要衝であり、その不安定化とロシア産石油の供給減少が同時に進めば、影響は単純な足し算では済まない。

 ウクライナの攻撃は、ロシアの戦争遂行能力だけでなく、世界の燃料価格、物流費、食料価格、インフレにも波及する。それでもウクライナは、攻撃を「ロシア戦争経済を破壊する正当な軍事行動」として説明するだろう。

 だが作戦の評価は、攻撃対象を破壊できたかどうかだけでは決まらない。その作戦が上位の戦略と国家大戦略にどのような影響を与えるかを見なければならない。

ロシアの忍耐には限界がある

 ロシアが現在まで全面的な核のエスカレーションを避けてきたからといって、今後も同じとは限らない。製油所、パイプライン、港湾、タンカーへの攻撃が続けば、ロシア国内では複数の圧力が重なる。

 第一に、燃料不足による国民生活と物流への影響である。第二に、石油輸出収入の減少である。第三に、軍事補給基盤が継続的に攻撃される事による軍部の不満である。第四に、欧米諸国がウクライナの攻撃を止める意思を持っていないという認識である。

 これらが一定水準を超えれば、クレムリンは「通常の報復では攻撃を止められない」と判断する可能性がある。その場合、ロシアには幾つかの選択肢がある。

 ウクライナへの航空・ミサイル攻撃をさらに拡大する。黒海やアゾフ海の封鎖を強化する。ウクライナの港湾、発電所、鉄道、燃料備蓄を徹底的に破壊する。欧州諸国へのサイバー攻撃や秘密工作を強める。

 あるいは、核兵器そのものを使用しなくても、核演習、核部隊の移動、限定的な核的示威によって、攻撃停止を迫る事も考えられる。

 さらに現在、ロシアにはもっと
 間接的で合理的な対抗手段がある。
 イランへの支援である。

 ロシアは過去にも、イランへミサイル、防空システム、軍事技術を提供し、アメリカやイスラエルによる攻撃の費用を高めてきた。2026年3月には、ロシアがイランへアメリカ軍の艦艇や航空機の位置に関する情報を提供しているとの報道も出ている。

 ロシアがウクライナへの攻撃停止をアメリカに求めても、アメリカが応じないなら、ロシアはイランの抵抗能力を高める事で、アメリカへ圧力を返す事ができる。

 つまり、ウクライナを止めないなら、イラン戦争も終わらせない。という交換関係である。この方法なら、ロシアはアメリカ軍と直接戦わなくてもよい。イランへ防空、電子戦、衛星情報、部品、技術者を提供し、アメリカ軍の作戦を難しくするだけで、中東における米軍の負担を増やせる。
 
 アメリカの注意と兵力が中東へ固定されれば、ウクライナへの支援も、停戦仲介も後回しになる。ロシアにとっては、軍事的にも政治的にも合理的な選択になり得る。

イラン・アメリカ戦争は、すでにイラン本土だけの戦争ではない

 アメリカ軍は2026年7月、イランへの攻撃を連日継続した。7月18日には、七夜連続となる攻撃を完了したと発表している。攻撃対象は、沿岸防衛、ミサイル拠点、港湾、軍事施設だけでなく、橋梁、電力、交通インフラへも広がっている。イラン側の発表では、死傷者も増加している。

 これに対し、イランはイラン本土だけで防御しようとはしていない。イランは湾岸諸国にある米軍関連施設や、アメリカを支援する国のインフラを攻撃し始めた。クウェート、ヨルダン、バーレーン、サウジアラビアなどが攻撃対象となり、クウェートでは淡水化施設、空港、石油関連施設に被害が出たと報じられている。

 これは単なる報復ではない。イランは、アメリカ軍が守らなければならない対象を増やしている。イラン本土を攻撃する米軍に対し、イランは、ホルムズ海峡、湾岸諸国の米軍基地、石油施設、空港、電力・水道インフラ、商船、紅海、バベルマンデブ海峡へ作戦域を広げようとしている。

 アメリカは攻撃側であると同時に、広範囲の防御側へ転換させられる。航空基地、港湾、タンカー、クウェートのインフラ、サウジアラビアの輸出施設などを守る。ホルムズ海峡を通す。さらに紅海まで不安定化すれば、バベルマンデブ海峡とスエズ航路も守らなければならない。

 米軍の戦力がどれほど強くても、作戦目標が無限に増えれば、指揮、情報、給油、整備、迎撃弾、艦艇、航空機、同盟調整は分散する。イランはアメリカ軍を正面から撃破する必要がない。アメリカが処理しなければならない問題を増やし続ければよいのである。

フーシ派が紅海を抑えれば、危険度は跳ね上がる

 イランが切ろうとしている最も危険なカードが、イエメンのフーシ派である。ロイター通信は、イランがフーシ派に対し、アメリカがイランの電力網を攻撃した場合、バベルマンデブ海峡の閉鎖を求めたと報じている。

 フーシ派はすでに、イスラエル船舶の紅海航行を阻止すると表明し、攻撃を行ってきた。ホルムズ海峡だけが不安定なら、サウジアラビアやアラブ首長国連邦は、パイプラインを使って紅海側へ原油を振り替える事ができる。

 しかし、その紅海の入口であるバベルマンデブ海峡まで閉じられれば、ホルムズの代替ルートも失われる。ホルムズと紅海が同時に不安定化すれば、中東産原油と天然ガスの輸送だけでなく、アジアと欧州を結ぶ商船交通全体が影響を受ける。

 船舶はアフリカ南端の喜望峰へ迂回しなければならず、輸送日数、燃料費、保険料、運賃が上昇する。そこへウクライナによるロシアの製油所、石油輸送、影の船団への攻撃が重なる。

 世界の主要なエネルギー供給路が、中東と欧州の二つの戦争によって同時に傷つけられる。この時点で、二つの戦争はエネルギー市場を通じて一つの戦争になる。これがもう一つの大きな問題だ。世界大戦の引き金足り得る。

世界大戦化とは、作戦域の接続である

 戦争を四層に分けると、現在の危険が分かりやすい。最上位には、国家の大戦略がある。同盟、外交、諜報、戦争を統合し、国家が何を守り、どのような国際環境を作るかを決める。その下に戦略がある。

 国家の大戦略に基づき、各作戦域を設定し、優先順位と資源配分を決める。その下に作戦がある。各作戦域で達成すべき個別目標を決め、複数の部隊行動を時間的・空間的に統合する。最下層に戦術がある。

 個々の戦闘で、どの兵器をどこへ、いつ、どのように使用するかを決める。米軍は戦術レベルでは優勢である。目標を発見し、ミサイルや航空機で破壊できる。イランの防空、ミサイル、港湾能力を削る事もできる。

 作戦レベルでも、一定の成果を上げているだろう。しかし、その攻撃によってイランが作戦域を湾岸諸国、紅海、イエメンへ広げれば、戦略レベルでは不利になる。

 さらに、ロシアがイラン支援を強め、大陸がアメリカの中東拘束を利用し、ウクライナがロシアの石油基盤を攻撃し続ければ、アメリカの国家大戦略そのものが破綻しかねない。

 下位の戦術的成功が、上位の戦略的失敗を引き起こすのである。事実上の第三次世界大戦化とは、必ずしもアメリカ、ロシア、大陸勢力、イランが同時に宣戦布告する事ではない。

 欧州戦域、中東戦域、紅海戦域、西太平洋戦域が相互に接続し、一つの戦域での行動が他の戦域の軍事行動を誘発する状態である。その状態では、各国は別々の理由で戦っていても、作戦効果は一つに合成される。

アメリカは作戦を見直すべきである

 アメリカがイランへの圧力を完全に止める必要がある、という話ではない。ホルムズ海峡の商船航行を回復し、タンカー攻撃を止め、米軍基地と同盟国を守る必要はある。

 しかし、現在のように攻撃対象を拡大し、イラン国家全体のインフラへ継続的に打撃を与える方法は、再検討すべきである。イランが国家存亡の戦争だと判断すれば、ホルムズだけでなく、紅海、湾岸諸国、代理勢力、サイバー空間を総動員する。

 アメリカの目的がホルムズの自由航行回復であるなら、作戦もその目的に限定しなければならない。優先すべき対象は、機雷敷設能力、沿岸対艦ミサイル、攻撃艇、商船攻撃を指揮する施設、米軍基地への直接攻撃能力だ。

 反対に、イランの一般的な電力網、社会インフラ、国家全体の統治機構を破壊するような攻撃は、戦争の目的を体制転覆へ変質させる危険がある。同時にアメリカは、イランへ明確な出口を示す必要がある。

 ホルムズ海峡で商船攻撃を止める。フーシ派を通じた紅海封鎖を行わない。湾岸諸国の民間インフラへの攻撃を止める。これらが実行されれば、アメリカも攻撃範囲を縮小し、制裁、凍結資産、航路管理について交渉する。
威圧だけでなく、停止条件を具体的に示さなければならない。 

ロシア・ウクライナ戦争にも最低限の蓋が必要である

 イランが最優先課題になったとしても、ロシア・ウクライナ戦争を放置してよい訳ではない。全面和平を直ちに実現できなくても、石油施設、港湾、タンカー、商船、燃料輸送への攻撃だけは一時停止させる必要がある。

 これはロシアを助けるためでも、ウクライナを非難するためでもない。
中東のエネルギー供給危機と、ロシアのエネルギー供給危機が完全に接続するのを防ぐためである。世界経済の混乱を防ぐためだ。
 
 ウクライナの攻撃が続き、ロシアの忍耐が限界を超えれば、ロシアはウクライナ戦域だけで報復するとは限らない。イランへ援助し、アメリカの中東作戦を長期化させる事ができる。そうなれば、ウクライナ戦争を放置した結果、イラン戦争まで解決できなくなる。
 
 本当は、先日のNATOの会議で、トランプ大統領が、ウクライナの攻撃を止める事を期待していた。だがトランプ大統領は、イラン問題を優先したため、ウクライナの攻撃を止めなかった。結果、ロシアが追い込まれている。
 
 これ以上、ロシアを追い込む事は危険だ。イランと接続する。そうなると解決が付かなくなる。だからトランプ大統領は、まずウクライナの攻撃を止めてから、石油関連施設の攻撃を止めてから、イランに取り組むべきだ。
 
 このままロシアと中東の石油が減り続ければ、世界経済も混乱し、予期せぬ紛争も起きかねない。ウクライナによるロシア石油関連の攻撃は、自国の利益になっても、世界を危うくする。世界はウクライナを止めるべきだ。
 
 それからウクライナは大統領選挙をやった方がいい。近頃、政権に対する抗議デモも頻繁に起きているが、戦時を理由にいつまでも選挙を実施しないなら、それは事実上の独裁者である。ヨーロッパはロシアと仲介して、ウクライナの大統領選挙のため、停戦を協議するべきだろう。

これ以上、作戦域を広げてはならない

 現在のアメリカに必要なのは、攻撃回数を増やす事ではない。どこまでを戦域とし、どこから先へは広げないかを決める事である。ホルムズ海峡と紅海を分離する。イランとフーシ派を分離する。イラン戦争とロシア・ウクライナ戦争を分離する。商船とエネルギー輸送を軍事目標から外す。

 ロシアがイラン支援へ本格的に移る前に、ウクライナの石油関連攻撃へ制動をかける。アメリカがこれをしなければ、軍事的には勝っていても、戦略的には戦争を増殖させる事になる。

 世界大戦は、ある日突然、一つの宣戦布告によって始まるとは限らない。
一つの作戦域を処理するために、別の作戦域を増やす。その新しい作戦域を守るために、さらに部隊を送る。

 敵はアメリカ軍を分散させるため、別の地域へ戦争を広げる。ロシア、大陸勢力、イラン、フーシ派、ウクライナ、欧州諸国が、それぞれ自国にとって合理的な行動を取った結果、すべての戦域が接続される。

 その時、世界は宣言のない世界大戦へ入る。だからこそ、アメリカは今、攻撃を拡大するより先に、作戦を再定義しなければならない。アメリカはこれ以上、作戦域を広げてはならない。
 
 31/07/2026追記

 以下、4陣営の地図と年表を追記する。

ロシア・ウクライナ戦争とイラン・アメリカ戦争、四陣営

 2014年04月06日 ドンバス戦争開始
 2022年02月24日 ロシア・ウクライナ戦争開始
 
2023年05月25日 ロシアの核がベラルーシに配備
 2024年10月08日 半島国家がロシアへ派兵開始
 2025年06月22日 アメリカがイラン核施設攻撃
 2026年01月08日 イランがテヘランで国民を虐殺
 2026年02月28日 イラン・アメリカ戦争開始
 
2026年06月17日 イラン・アメリカ戦争停戦合意
 2026年07月08日 イラン・アメリカ戦争停戦破棄
 2026年07月13日 フーシ派がサウジアラビアを攻撃
 2026年07月24日 バーレーンがイラン攻撃
 2026年07月24日 クウェートが非公式にイラン攻撃
 2026年07月25日 ウクライナがカスピ海でイラン船を攻撃
 2026年07月29日 サウジアラビアがイラン代理勢力を攻撃

疲労困憊してPCで眠り込むソマリ

 以上


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