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国際情勢:イラン民主化への道

 イラン・アメリカ戦争だが、
 今、アメリカは岐路に立っている。
 8日、イランから以下の要求があった。
 (文字数6,287字)

NBC Nightly News Full Episode - August 8 

IRAN’S DEMANDS TO THE U.S.
Never threaten or insult Iran in any language
Withdraw its military forces from around Iran
Lift sanctions and pay back assets to Iran

「イランのアメリカに対する要求」
いかなる言葉でも、イランを決して威嚇したり侮辱したりしない事
イラン周辺からアメリカ軍を撤退させる事
制裁を解除し、イランの資産を返還する事

NBC Nightly News Full Episode - August 8 

 CNNを見ると「紛争によって生じた損害の補償」とも書かれているから、これもイランの要求として追加すべきだろう。Reutersなど各社報道も重ねると、イランの要求は大体、8つに整理できる。

 米国の軍事的威嚇・敵対行動の停止
 NBCでは「いかなる言葉でもイランを威嚇・侮辱しない」、Reutersでは米国の脅迫停止や、イランおよび地域の同盟勢力への敵対行動停止として出ている。

要求1

 戦争の恒久的終結・攻撃停止
 単なる一時停戦ではなく、アメリカおよび同盟国(イスラエル等)による軍事攻撃を終わらせる事。イランは6月の暫定合意がアメリカによって破られたという認識も示している。

要求2

 イラン周辺からのアメリカ軍撤退
 NBCにも出ていた要求だ。以前のイラン提案でも、アメリカ軍撤退は繰り返し要求されている。

要求3

 イラン港湾に対するアメリカ海軍の封鎖解除
 ホルムズ再開と直接結び付けられている重要条件だ。これは現在の交渉でかなり具体的ではある。

要求4

 対イラン制裁の解除
 石油・金融を含む制裁解除。今回だけでなく過去数か月の提案でも一貫して要求されている。

要求5

 凍結されたイラン資産の返還
 NBCの pay back assets to Iran の部分。過去の交渉では具体的な金額まで議論されており、6月案では250億ドルの凍結資産解除という報道もあった。

要求6

 戦争被害への補償・復興資金
 CNNとReutersが伝えている項目だ。過去の交渉ではイラン側が戦争被害補償として4000億ドルを要求し、アメリカが直接支払いを拒否した結果、湾岸諸国などによる3000億ドル規模の復興基金という案まで出ていた。

要求7

 海峡サービス料金徴収
 イランは海峡への管理権・影響力を認めさせたい。船舶から料金を徴収する構想もあり、Reutersによればイラン側は貨物価値の5~7%、オマーン案は約3%、アメリカは航行の自由を掲げ、料金ゼロを要求している。

要求8

 この中に、イランの非核化の話はない。先にアメリカとイランが暫定合意した文書は停戦・戦争終結に向けた覚書(MoU)で、6月17日にトランプ大統領が、フランスで署名した事をホワイトハウスが発表している。イラン側では、6月15日に、ガリバフ国会議長がデジタル署名していた。
 

 戦闘停止・段階的な停戦履行
 一気に全面解決ではなく、段階的に履行・検証していく枠組み。Reutersは14項目のMoUと報じている。

項目1

 ホルムズ海峡の再開
 商船航行の再開、海峡の安定化が主要項目。初期案では「海峡再開」と「アメリカによるイラン港湾封鎖解除」が対になっていた。

項目2

 アメリカによる海上封鎖の解除
 イラン側が海峡を開く事と引き換えに、アメリカ側が港湾封鎖を解除するという事。

項目3

 制裁緩和
 アメリカ側が一定の対イラン制裁を緩和し、石油販売や国際金融への復帰を認める方向。APも初期合意に制裁緩和が含まれると報じている。

項目4

 核問題は第2段階へ
 ここが重要で、当初のMoUは核問題を完全解決した文書ではない。核開発・濃縮・監視については、その後の交渉で詰める設計だった。Reutersも、核問題は第2段階に残されたとしている。

項目5

 高濃縮ウランへの対応
 APによれば、初期合意にはイランの高濃縮ウラン在庫を希釈する方向も含まれていた。

項目6

 地域問題
 イスラエルの軍事行動のため、レバノン(ヒズボラ)やガザ(ハマス)など、イランの代理勢力の問題も議題に含まれていた。

項目7

 6月の合意は事実上、破綻しているが、8月イランとオマーンが進めてきた海峡解放の枠組みの中に、突然イランから別の包括案、最終回答めいた要求が出て来た形だ。これだとオマーンもアメリカに預けるしかない。

 そしてアメリカは長い沈黙を保っている。トランプ政権、ひいては過去のアメリカ政権から見ても異例の長さだ。すでに決が出て、アメリカはすでに軍事作戦進行中の可能性もあるが、現時点で、報道は何もない。
 
 これまでアメリカは軍事オプションで、イランに圧力を加えながら、交渉を推し進めてきた。これをプランAと呼ぼう。空爆など軍事オプション+トランプ大統領のSNS発信、ホワイトハウス声明発表などだ。

 プランA
 空爆など軍事オプション+トランプ大統領のSNS発信、ホワイトハウス声明発表など

プランA

 だがここに来て、アメリカ軍のジョン・ダニエル・ケイン統合参謀本部議長から、これ以上イランを攻撃すると、アメリカ軍のミサイルの在庫が払底する恐れがあるので、イラン攻撃を見合わせて欲しいと、要請があった。

 要するに、トランプはミサイルを使い過ぎで、将来、別の紛争に備えた分まで使い始めたので、現場が危機感を持って止めた形だ。裏ではピート・ヘグセス戦争長官から報告がなかったと、トランプは怒っていたが。

Tomahawk巡航ミサイル(攻撃用)
開戦前在庫数約1,700発前後(推定)→約850発消費→残弾約850発 

トマホーク残り約50%

ATACMS(陸軍戦術ミサイル)+PrSM(精密打撃ミサイル)(攻撃用)
開戦前在庫数約700発前後(推定)→約700消費→残弾ほぼなし

ATACMSとPrSM残り約0%

Patriot PAC-3迎撃ミサイル(防衛用)
開戦前在庫数約2,300発前後(推定)→約1,473発消費→残弾約827発

パトリオット残り約36%

THAAD迎撃ミサイル(防衛用)
開戦前在庫数約425発前後(推定)→約278発消費→残弾約147発

サード残り約35%

 制服組トップのダン・ケイン議長が、アメリカのミサイル在庫数をトランプ大統領に伝え、そんな話聞いていない、なぜ報告しなかった?と背広組トップのピート・ヘグセス戦争長官に対して怒ったが、後に取り消した。

 攻撃ミサイルの約75%を使い、迎撃ミサイルの約65%を使ったという計算が成り立つから、これは危険水域に入ったと見ていいだろう。勿論、これは軍の機密で、マスコミの推定値に過ぎないが、大筋は上記の通りだろう。

 アメリカはプランAを実行したくても、困難な情勢だ。ただトランプ大統領は、アタック、アタック、アタックだから、攻撃を続行したい。しかし、ダン・ケイン議長を中心に反対意見が強くなってきた。
 
 ダン・ケイン議長からは、ホワイトハウスを差し置いて、アメリカは出口戦略を探るべきと、異例の発言があったが、これはペンタゴンや現場のセントコムの意見だろう。もういい加減にしてくれという事か。
 
 なお間に挟まれたヘグセス戦争長官の発言はない。トランプ大統領も、一度は怒ったが、ホワイトハウスで揉め事は不味いので、すぐにSNSで仲直りの誉め言葉を出していた。ま、茶番だろう。
 
 このままイランの要求を認めるか、交渉して譲歩するか、あるいは攻撃に転じるか、まだ分からないが、攻撃に転じる場合、核施設があったナタンツの南2kmのピッケル山(クー・エ・コラング・ガズ・ラー)がある。

ピッケル山(كوه کلنگ گزلا، クー・エ・コラング・ガズ・ラー)

 プランAの延長線上で、このピッケル山の地下施設を攻撃する案がある。ここに核物質及び核施設があると推定されるから、バンカーバスターで攻撃して、出入り口を塞いで、使用不能にしようという作戦だ。

バンカーバスターでも届かない

 ステルス爆撃機B2から投下して、地下施設の搬入口を塞ぐ作戦だが、対処療法的で、イラン側が修理すればまた施設は使える。だから特殊部隊も降下させて、地下施設を爆破、そのあとバンカーバスター投下案もある。
 
 特殊部隊ピッケル山降下は、かなりハリウッド映画向きの作戦だが、リスクが高い。だが英語圏やフランス語圏のミリタリー動画では、施設が使用できなくなる深度まで降りて、爆破するだけでよいと伝えている。

 アメリカの冒険者たちは、ダンジョンの最深部まで到達する必要はないと、英語圏やフランス語圏のミリタリー動画では解説している。勇者による竜退治は必要ではなく、ダンジョンごとドラゴンを埋める作戦だ。

 トランプ大統領も一度、このピッケル山について言及した事があったので、在り得る作戦だ。またミサイルを消費する訳でもなく、バンカーバスターを使うので、ペンタゴンの合意も取り易いだろう。

 トランプ大統領の目標は、イランの非核化だから、ピッケル山を攻撃して、イランの非核化は達成されたと、一方的に宣言して、政治解決する選択肢もある。ただ施設を破壊しても、イランの核開発能力までは奪えない。
 
 
そういう意味では、一時的な非核化に過ぎない。

 ピッケル山攻撃は、イランの8つの要求に対する、明確なNOを突きつける意味で、ホワイトハウスは検討しているだろう。またペンタゴンが求める出口戦略にも繋がる。ただ実質において、進展はない。ただの時間稼ぎだ。
 
 このように、プランAは手詰まり状態だ。ではプランBはあるのか?ある。当方が考えたプランBは、シャルル・ド・ゴールが第二次世界大戦中、イギリスに亡命して、自由フランス政府を作った案を真似する事だ。

 プランB
 イラン国外に、暫定移行政府を樹立する。イランの元皇太子や、イランのノーベル賞受賞者を中心に、アメリカが支援する。

プランB

 イランの元皇太子とは、クロシュ・レザー・パフラヴィーで、元パフラヴィー朝イランの皇太子。元王位継承者。最後の皇帝モハンマド・レザー・パフラヴィーの子で、アメリカに亡命している。イラン反体制派の指導者だ。
 
 イランのノーベル賞受賞者とは、シーリーン・エバーディーで、弁護士だ。2009年、イランで最初のノーベル平和賞受賞者で、女性のムスリムでも初だ。現在はイラン当局の弾圧を避けて、イギリスに亡命している。
 
 またナルゲス・モハンマーディもいる。彼女はイランの科学者で、人権活動家だ。2023年、イランの獄中でノーベル賞平和賞を受賞した。ただこの人は今動けないだろうから、象徴的な存在に留まる。
 
 プランBの暫定移行政府は、シャルル・ド・ゴール風にラジオで呼び掛けてもいいし、ネットから情報発信してもいい。イラン国内の国民に、新しい政権の用意がある事、別の選択肢、受け皿がある事を伝え続ける。
 
 イラン・イスラム共和国は、アメリカの傀儡政権だと言うだろうが、それを百も承知で、シャルル・ド・ゴール風にラジオ等で呼び掛け続けるのだ。できれば、弁士は奇人・変人の類がいい。まともな人には務まらない。
 
 シャルル・ド・ゴールも、イギリスのウィンストン・チャーチルから「なんだあれは?」という感じで煙たがられた。亡命先のイギリスで言う事も聞かず、言いたい放題言っていた。准将が国家フランスを代表するという。

 シャルル・ド・ゴールの自由フランス政府は、傀儡政権には見えなかった。連合国さえ煙たがられたくらいだから、かなり独立性があるように見えた。准将のくせに、あたかもフランスの国家元首のように振る舞った。

 こういう変人がいい。現在のアメリカ政権で言えば、ケネディ厚生長官みたいな人だ。一度、論陣を張ったら、テコでも動かない。どんなに周りから言われても、一歩も退かない人だ。こういう奇人変人を弁士にするべきだ。
 
 プランBのいい処は、ミサイルも、兵士も、使わない処だ。言葉だけ浴びせ続ける。プロパガンダだ。そしてイラン国民を鼓舞する。結局、アメリカの空爆でイラン革命政権が倒せないなら、これしかない。

 イランの事は、イラン国民が決めるべきだろう。アメリカの言うイラン非核化は、必ずしも現在の政権の打倒を意味しないという人もいるが、当方はそう思わない。結局、イランを非核化するなら、政権打倒もセットだろう。
 
 2026年1月に、テヘランで、現革命政権は、イラン国民の弾圧、虐殺を行った。正確な数字は分からないが、BBCなどによると、数千人のイラン国民が当局の弾圧で、殺されたと報道されている。
 
 下手に立ち上がると、また2026年1月の二の舞いになるが、それでもイランの事は、イラン国民が決めるのが本筋だろう。アメリカができる事は、プランAで正面突破を図るより、プランBで迂回作戦をした方がいい。
 
 シャルル・ド・ゴール風に呼び掛ければ、イラン国内で、軍や警察、官僚で離反者が出て、レジスタンスが始まると思う。またイラン国民も、暫定移行政府に興味を持ち、受け皿があるなら、考え始めるだろう。
 
 イラン国民に向かって語り掛けるなら、なるべくイランの民主化について語り、イランに現在とは異なる未来があるという事、将来に希望を持てる事を語った方がいい。公正な選挙と健全な民主主義について語るべきだ。
 
 イランの元皇太子、クロシュ・レザー・パフラヴィーは、次の政権には参加しないと明言している。旧王朝の責任者として、イラン民主化の手続きを進め、旧王朝の責任者として、新政権を承認するだけだと述べている。
 
 これはよい事だと思う。イランの現革命政権を打倒し、選挙で次の政府首班を選出するまでの間、アメリカが支援する暫定移行政府が、イランを管理する。選挙が終われば、新政権とアメリカが対話すればよい。
 
 一にも、二にも、選挙だ。イランで公正な選挙を行い、イランの民主化を進める。政権に抗議する国民を虐殺する為政者に、国民を代表する資格はないだろう。また諸外国も、内政干渉と言われるのを恐れず、抗議すべきだ。
 
 自国民を虐殺するような政権に、人道上の観点から、諸外国が抗議する事は正しい。それは内政干渉ではない。場合によっては、制裁、断交の対象となる。国連で話し合ってもいいが、各国で対応を個別に決めていい。
 
 今、アメリカ軍で、一般兵士にまで、セントコムは、イランに対するよいアイディアをメールで募集していると言うが、当方であれば、この平和的なプランBを推す。またこのプランBは、プランAを妨げない点でも有効だ。

 だからトランプ政権は、プランAを実行しつつ、プランBも同時並行して、進めるのが良いと思う。プランBは即効性はないが、長期的には正しいプロセスだと思うので、政権打倒後も見据えて、打つべき手だと思う。
 
 組織だとシンクタンク、個人だとウォールームになるが、当方もAIにこのプランBを話したら、ソマリのwar roomと言われたので、中国古典に出て来る在野の軍師ではないが、アメリカにプランBを献策したい。

明日を見詰めるソマリちゃん、プランBを検討中

 以上


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