#6-4 黒い大地の嘲笑|追憶のオリジン~氷の女王の眠る街
【 前回までの話】最後の塔へ向かう中、ルリとイオが離脱し一行は分裂。失意の彼らを氷山の魔現象が襲う。激昂したミミの魔力が暴走し、その爆発でタトとレイは吹き飛ばされてしまった。舞い上げられたタトは―?
6-4 黒い大地の嘲笑
反転する世界で、タトは必死に視線を走らせる。
その瞬間、体が急降下し始め、そのまま雪をかぶった針葉樹林へ突っ込んだ。
枝葉をバキバキと折りながら落ちていくと、太い枝で体が止まった。
全身がビリビリするほどの衝撃。
「……ッ」
顔を覆った腕を解き、目を開く。
タトは肺の中の息をすべて吐き出した。
背骨は…動く。全身が軋むが、機能に支障はなさそうだ。
吹き飛ばされる瞬間に聞こえた、レイの呪文のお陰だろうか。
早い呼吸が戻る。
周囲は雪と針葉樹の折れた枝の匂いで満ちていた。
空を見上げると、木々の隙間から灰色の空が見える。ミミの爆炎の熱も、魔現象の気配も、この場所までは届いていないようだ。
「レイ!ミミ!」
咳き込みながら声を出すが、返事はない。
あの爆発だ。レイは別方向へ飛ばされているはずだ。
タトは木から降りると、周囲を見渡した。
森の中は静まり返っており、自分の荒い息遣いだけが響いている。
(ミミは……、どの方向だ?)
不安と焦りがタトの胸を締め付けた、その時だった。
フィー!フィ、フィーーー!
小さく澄んだ、角笛の音が、遠くから響いてきた。
それは、タト、レイ、ミミの三人が持つ鹿の角笛の音だった。
「レイ……!」
タトは安堵で全身の力が抜けるのを感じた。笛は、レイが無事であり、この場にいることを知らせている。
そして、その音はタトにレイの位置を伝えてきた。
森の中に細い糸が張られたように、方向と距離が頭に流れ込んでくる。
これが言霊の魔法なのか!
タトは自分の笛を握りしめ、ふらつく足を蹴って、一直線に走り出した。
*
数分後、森の終わりが見え、開けた空間に出た。
そこは、ミミの炎によって全てが焼き払われた大地だった。
地面は黒く焦げ、雪は消え、木々は炭と化している。
煤で黒く、ボロボロになったレイが森の奥から出てくるのが見えた。
「レイ!」
「タト、無事か。ミミは――」
レイの言葉は途中で途切れた。
タ・トが、その視線の先の炎上した大地の中心を見た。
そこに、横たわる小さな影があった。
それは、体中が煤と血に汚れたミミの姿だった。赤く燃え盛っていたはずの炎は、完全に鎮火している。
爆発的な魔力を使った反動か、まるで内側から焼かれたように、その肌は焼けただれ、息があるのかどうかもわからない。
「ミミ……」
タ・トは呆然と立ち尽くした。
「助けに行かないと」という思考が浮かぶが、体が動かない。
ルリが去り、仲間を失ったばかりだというのに。
頼りになるイオもいないというのに。
今、目の前で仲間が、まるで自分たちの無力さを嘲笑うかのように、命の炎を消しかけていた。
(つづく)

【ミニ解説👉️】二人のタト(タとト)はタ・トまたはタトと記載しています。これはタトがミミとレイの前ではほとんど差異がなくシンクロしているためです。
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◯設定・サイドストーリーはこちら
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