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#5-10 魔攻撃と混乱|追憶のオリジン~氷の女王の眠る街

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第10話 魔攻撃と混乱


タトはフードもかぶらず、森を北西へ走っていた。
吐く息は白く、寒気が頬を刺す。


ミミは、出会った頃から変わらず、ときどき暴走した。

朝、離れた木々が焦げていたり、姿が見えないと思えば、遠くで火柱があがることもあった。
ミミはそのことについて何も語らなかった。
タトも問い詰めることはしなかった。
おそらく、一人になって発散しているのだと考えたからだ。

だからこそ、タトはできるだけミミのそばにいるようにしていた。

暴走したミミは、いつも傷だらけだった。誰の助けも求めない無表情で、炎の中に立つその姿は、混乱と深い悲しみの中にいるように見えた。
タトは何度も、無言のまま手当てをしてきた。


気がかりなのは、ミミの暴走がいつも“突然”であることだ。

それは、氷山から発せられる魔攻撃が、何の予兆もなく発生する現象に似ていた。
氷山の影響かもしれない――、タトは薄々そう感じていた。



(今回の炎は、これまでよりも大きい)


タトは険しい顔で全速力で森を進んでいた。


イオは息ひとつ乱さず、ぴたりと並走してくる。



やがて焦げた匂いが漂いはじめ、黒く焼けた木々の列の向こうに、ぽっかりと開けた広場が現れた。
その中心に、ミミが立っていた。


焼けた葉がパラパラと舞い、ミミの周囲では風の魔攻撃「ソウジン」が巻き起こっている。

タトが近づこうとしたその瞬間、足元がじり、と熱を帯びた。


(地中からの魔攻撃だ!)


とっさに横へ跳ぶ。直後、地面から火柱が噴き上がった。


森でこれほど魔攻撃が集中するのは異常だ。
タトはイオを振り返った。


「この森は、いつもこうなの?!」


「いいえ、違います。これは、何か別の理由で魔現象が集まっているのでしょう」


ザーッ、と風が逆流するように流れはじめた。
雪をかぶった枝が揺れ、氷の粒が頬に当たる。


「また……ソウジンか?!」


タトが氷山を見上げて身構える。
魔攻撃には対処法がなく、避けるしかない。

だがイオは、静かにタトの前へ一歩進み出た。


その瞬間――どこからともなく霧を裂くような“風”が生まれ、
白い霧をまとった三日月状の風が、いっきに襲ってきた。


「多い……!」


タトが声を上げたとき、イオは片手を前に伸ばし、低く呟いた。


「風よ鎮まり、すべての記憶に還れ
――アーカ・ルミナ」


空気が光の幕に変わる。
襲いかかる三日月の風はすうっと速度を落とし、空気へ吸い込まれるように、消えた。


広場には、タトの荒い呼吸だけが響いた。


「……魔法、なの?」


ようやく言葉を絞りだす。


「私は“記憶”を封じる術を持っています。この現象は、苦しみの残響。
その記憶を“記録”に還せば、暴走を止められることがあります」


初めて聞く事実に、タトは目を見開いた。

そこへ、レイとルリが到着した。


「ミミは?!」


ミミは多くの切り傷を負い、自身の炎で皮膚が焼け、立ち尽くしたまま意識を失っていた。
ルリは急いでミミを寝かせ、呪文を唱えた。


ひとつ 風よふたつ 影よ
みっつ 灯をたずさえ
魂よ 今ここにとどまれ
イリース ダムファム



祈りの歌とともに、ミミは眠った。
傷は一時的に止血されたようだ。


タはミミをマントで包み、トがそっと抱えると、沈黙したまま教会塔へ向かった。


イオがすっと先導する。

氷山は雪をまとい、巻き上がる雪雲をはべらせるように、冷たく森を見下ろしていた。



(つづく)


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望月むう(ムーン)🐾|物語と思考|物語に浸りたい ここまで読んでくれてありがとう♡