#5-11 暴かれた理由|追憶のオリジン~氷の女王の眠る街
【前回までの話】
ラーフェの地下都市から地上に戻った一行は、廃墟の塔で仮面の男イオと話すことに。その直後、森からミミの火柱が上がった。駆けつけると異常な魔現象に襲われる。イオの魔法で助けられるも、ミミは重傷を負い、塔に運ぶが…
第11話 暴かれた理由
教会塔の上階にある静かな一室。
窓からは、雪雲に透かした白い光が差し込んでいた。
座っているのは、タト(タとト)、レイ、そしてイオ。
ルリは別室で、寝ているミミのそばにつきそっていた。
タトたちは木造の机を囲んでいたが、言葉は少なかった。
重い沈黙の中、最初に口を開いたのはレイだった。
「ここに来てから、森の魔現象が増えている。これまでの道中では、1時間に一回程度だった。
でも、今回の頻度は異常だ」
タとトは先ほどの出来事を思い出し、顔を歪めた。
「原因は分からない。ただ……」
レイは思案顔で手元の地図を指でなぞった。
「この街が“氷山”の入り口に近いことと、関係があるのかもしれない」
言葉を区切ると、レイはタトをチラリと見た。
「それに、ミミは感情が高ぶると魔現象と共鳴してしまうようだ。まるで、何かに取り憑かれるみたいに」
「共鳴……なるほど。理屈は通りますね」
イオが小さく頷いた。
「魔現象は、“思念の残響”です。強い記憶、祈り、苦しみ。
誰かが残した感情が、時を経て魔力を宿し、形を持つ。
……ミミさんは、そうした“声”を受け取りやすい体質なのかもしれません」
「その、“声”はどこから……」
タトが両手を固く握りながら尋ねた。
「特定はできませんが、氷山の方向から発生しているでしょう」
「氷山には、女王が眠っているんだ……」
タは決意を込めて顔を上げた。
「やはり、会いに行かないと。それでミミに何が起きているのかも、分かるはずだ」
そしてイオへ向き直った。
「イオ、反映する対象がいないと言っていたね?僕たちと一緒に、女王の元を目指さないか?
このままだと、この世界は氷と瘴気の森に飲み込まれてしまう。
世界を終わらせないために、きっと君の力が必要だ」
イオは静かにタを見つめ、しばらく間を置いた。
仮面の奥の目がキラリと光った気がした。
そして、抑揚のない声で答えた。
「はい。私は記憶を抱きながら、ここにいる人々と未来へ伴走する存在。
必要な方の傍に立ちましょう」
その合意に、少し明るい空気が広がった。
だが、それを破るかのように、トがぼそりとつぶやいた。
「……本当は、怖いだけだろう」
「え?」
タが眉をひそめて聞き返す。
「女王に会うのが。本当の理由を知るのが。
自分が“何者なのか”を知るのが――それが全部、怖いから、仲間を増やすんじゃないのか」
トは冷やかに、だが刺すように言った。
タは言葉を探したが見つからず、黙り込んだ。
代わりにレイが割って入る。
「イオを連れて行くのは合理的だよ。不安なのは君もだろう?」
「……だったらなにさ」
トはタから目を逸らさなかった。だが、それ以上は言葉にならなかった。
「とにかく今は、ミミが回復するまで休もう」
レイの言葉が届かないかのように、タとトは無言で睨み合った。
イオは静かにその様子を見つめていた。
(つづく)


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