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#5-12 白い森の先へ|追憶のオリジン~氷の女王の眠る街

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第12話 白い森の先へ


ミミの傷は深く、ルリは毎日、手当てを続けていた。

タトとレイは連日、冬の森で食料を調達した。
普段はミミに頼りきっていた二人だったが、互いがとても心強い相棒であることを新たに発見していた。

タトは、レイの耳の良さと狩りの技術に驚かされ、
一方のレイも、タトの森歩きの“勘”に感心していた。まさに、生まれ持ったものなのだろう。

長い時間を共に過ごすうち、レイは自分の魔法について少しずつ語るようになった。


「――あのシロオオタカは、君の相棒かい?」


ある日、上空を旋回する鷹を見上げて、タトが尋ねた。


「ああ。あの子は雛から育てたんだ。そして、言霊で契約している」


「言霊魔法で?」


「言霊は、基本的には“意味を理解する相手”に作用する」


レイは、ふと何かを思い出したように続けた。


「けれど、印を見た者や、音を聞く者にまで有効な場合がある」


そう言うと、足元から木の枝を拾い上げた。

短い呪文を唱えると、枝に文字のようなものが刻印された。
それを力いっぱい遠くへ放ると、枝は別の木にぶつかり、乾いた音を立てた。

直後、茂みの奥で、ゴソッ、ドサリと音がした。



「えっ、なに、どうしたの?」


「あの音を聞いた獣の動きを、止めたのさ」


倒れた獲物を確認しながらレイは言った。


「工夫次第で、いろいろできる」


そして、人差し指を唇に当て、いたずらっぽく笑った。


「言霊は、聞く者の認識だけでなく、世界の響きそのものにも触れる時があるんだ。極秘だぜ」



ミミの容体がようやく安定したのは三日後のことだった。


「ふぅ、ひと安心ね」


ルリは満足そうに呟き、いつもの快活な笑顔をミミに向けた。


「どう? どこか痛いところはない?」


「ルリ……ありがとう」


「大変だったわね。
でも…なぜ、あんな現象が突然起きたのかしら…」


「ミミ、おこりんぼだし……」


「そんなことないわ。身を守るためでしょ?」


「うん……。やっつけちゃえって思ったら、こうなってた」


「そう。力が強いのね」


ルリは優しく頷いた。


「あまり気に病むことないわ。もう少し歌いましょうか」



さらに四日が過ぎた頃。


「もうじっとしてられない! もう大丈夫! 動くー!」


ミミが部屋で暴れ出した。
その勢いに、ルリは笑い、タトは胸を撫でおろした。


一行はいよいよ出発に向けて冬装備を整えた。

タトはレイと共に慎重に計画を立てた。
そうして、誰もいない崩れた「愛の塔」に別れを告げる。


タ・ト、ミミ、レイ、ルリ、そしてイオは、雪に覆われた白い森を進み、最後の街――「空白の塔」を目指す。


その街についての手がかりは、どこにもない。
だが、あの氷山へ続く入り口は、きっとそこにある。

いま、行かなければならない。

違うことなく一致したタとトの直感が、そう強く告げていた。



(つづく)



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