#7-1 氷のウォール|追憶のオリジン~氷の女王の眠る街
【前回までのあらすじ】
空白の塔に導かれるように「氷の門」へと辿り着いたタト、ミミ、レイの三人。その足元には多くの旅人たちが凍りつき横たわっていた。中の一人が携えていたのは、彼らが探していた「自信の塔」のオリジア石だった。石を手にしたその時、彼らに呼びかける謎の声が――。
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第七章 終焉の入り口
第1話 氷のウォール
三人は、呼びかける声の主を探した。
吹きつける風の中、氷の門に佇む氷像が揺らいだ。
「おまえか?!」
女性の氷像は、先ほどまで固まっていた腕をパキと音を立ててしならせた。
そして、ゆっくりと三人を指さした。
「オリジンよ…帰りなさい…」
遮るようにそびえる氷門の前で、タトはゾクゾクと震える背中に力を込めて、一歩踏み出す。
「あなたは?!」
「この門を守る者、門番ウォールです」
「ここは、氷山の入り口なのですか…?」
「その通り……しかし、誰も通れません」
その声が発せられるたび、空気中の水分が凍りつき、パリパリとまつ毛をうつ。
「私たちは、女王に会いに来ました」
「女王は眠りについています」
感情のない、氷のような返答。
「門番ウォール。ここを通して私たちをパレスへ向かわせてください」
タトがウォールの前へ進み出る。
しかし、門番はピクリとも揺るがない。
「誰も通すことはできません。お帰りください」
「なぜ女王は眠る?」
すぐ横にレイが並んだ。
「……危険だからですよ」
「女王が眠るから危険なんだろう?氷を溶かさないと世界は終わる」
門番ウォールはゆっくりと首を振った。
「いいえ。
どの世界にも終わりはあります。その時が来れば、そうなるだけです。
雪が降り積もるのを誰にも止められないように…」
タトが静かにウォールをにらんだ。
「それまで眠らせておく気か?
女王は、この世界がどうなっているか知っているのか?」
門番ウォールは、冷ややかな視線をタトへ向けた。
「女王は眠っています。私の役目は、女王を守ること。ただ、それだけです」
「とにかく、通してくれ。ボクたちはオリジンだ」
「いいえ。通せません」
「なぜ? 資格はある。ここに、集めてきた!」
タトの声に応じ、三人はそれぞれの石を差し出した。
『希望』、『友情』、『知識』、『愛』。
かつて各地の塔で光を反射させていた結晶が、オリジン達の体温を通して、淡く光りだした。
旅人が持っていた、『自信』の塔ヴァリスの石をレイが掲げると、
その光は一層大きくなった。
カチリ。
門の上に据えられていた六つ目の石――「空白の塔」のオリジア石が、五つの光を受けて、共鳴するように白く光り始めた。
「あ……! あそこに、最後の一つが……!」
三人が見上げた頭上、吹雪の中にぼんやりとした輪郭を描き出す。
その光は、大きな氷門を反射して、門全体を白く輝かせた。
「さあ、世界の六つの石が揃ったぞ。これでも通さないと言うのか!」
白く輝く門を前に、レイが詰め寄る。
その瞳には、オリジンとしての誇りと、世界を歩いてきた自信が宿っていた。
門全体を包む白い光が、ウォールの全身を照らす。
しかし、彼女の瞳には驚きも、石への敬意も微塵もなかった。
ウォールは抑揚なく答えた。
「ここを通る資格は、この門番である私と、あの山頂にいる裁判官ドーマが判断します」
「なにっ?!」
言い伝えと違う反応に、タトは焦った。
その横で、レイが問いかける。
「……オリジンでなくても通れるのか?」
「いいえ。
オリジンでない場合は、即凍結です」
三人は顔色を変えて、足元を見下ろした。
「……この人たちを、氷に閉じ込めたのはおまえか!!」
「ええ、そうです。
ここに来ても意味はありません。おかえりください。
そして、おとなしく運命を待ちなさい」
ウォールの発した言葉は、雪の結晶となって辺りの氷を一層、厚くしたように見えた。
(つづく)

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