#2-5 焚き火を囲む|追憶のオリジン〜氷の女王の眠る街〜
《前回のお話》
街を出たタトは、誰も行ったことのない隣町を目指して道なき森を進む。寒さと恐怖に耐えながら数日後、禁じられた火の気配を感じて近づくと、獣族の子どもに威嚇され——。
*
広場の中央では、パチパチと音を当てて炎が揺れていた。
氷うさぎの肉を焼こうとしているようだ。水も汲んである。
端には屋根付きの簡素な寝床があった。
「改めまして、こんにちは。ボクはルミナリーのタト。キミは、フェリサリアのミミというの?」
タトは、確かめるようにゆっくりと話した。
右手を差し出すと、ミミは少し戸惑った様子で、それを真似るように右手を出してきた。
赤毛に覆われたふっくらとしたその手は、じんわりと温かかった。
「うん。ミミっていうの。」
ミミの瞳は猫のように丸く、金色に輝いていた。フサフサしたしっぽがゆったりと揺れている。
「ミミは……一人でここに住んでいるの?」
「そうだよ」
「フェリサリアはすぐ近くなの?」
「うん。3日くらい走ったら着くよ」
(走って3日…! )
ミミの両手が頭の後で組まれた。
「タトは初めてここに来たのー?」
「うん。ルミナリーから出たのはこれが初めてなんだ。森は、危険だろう?」
「うーん。でも、ミミは強いから大丈夫なの!あっ、そうだ、ごはん食べるの!タトも一緒に食べよう!」
すっかり警戒を解いているミミは、嬉しそうに肉を火の上へとかざした。
タトは腰を下ろすと、その表情をじっと見つめた。
裏表のなさそうな無邪気な顔。
燃えるような赤毛をまとった耳としっぽ。鋭い爪。
赤獅子の血を引く獣族がいて、火魔法の始祖なのだと聞いたことがある。
初めて会った人族以外のこの子も…、
この深い森で、寂しかったのだろうか…。
久しぶりの会話と、火の暖かさに、タトは思いの外、安堵している自分を感じた。
(つづく)
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