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ある日のきおく:森の碑石③〜サイドストーリー

【背景】
追憶のオリジン本編から遡ること数年前。タトがまだ10歳前後の頃、希望の塔の街ルミナリーでのお話。
②からのつづき


タトはもう、いつでも専門職を決めていい年頃だった。
けれど、自分だけがまだ――ふらふらとしていた。

その日ごとに、大人たちに頼まれたことを、こなすだけの日々。

ニナは、幼い頃から糸が好きで魔法糸を自在に操れた。
ジルは植物が好きで、合成魔法の素質があった。

けれど自分には、特別に好きなものも、魔法の力もなかった。


ならば、自分のやるべきことは……?

タトには、まだ、その答えが見つけられずにいた。


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不気味な風を感じた、あの日から数日後――
タトはもう一度、教会の裏を訪れた。

危険だと分かっていても、あの碑石をもう一度見たかった。

けれど――


そこにあったはずの石は、もう、どこにも見当たらなかった。

土ごと崩れ、苔も、根も、何もかも、森の成長に流されて地面は新しい形へと変わっていた。
瘴気のせいで、森も、地中も、通常ではありえないくらい早く動いていくのだ。
あの詩も、言葉も、跡形すら残っていなかった。


「……消えた」


タトはしゃがみこみ、ボコボコと盛り上がった根の間をそっとなぞった。
石の感触は、どこにもなかった。


何も、残らないんだ。

あの詩の断片も。あの、静かな感動も。


気づいても、見つけても、
黙っていたら――

動かなければ、埋もれてしまうんだ。


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何もせずにいるのが、一番嫌だった。


タトはすくっと立ち上がると、走った。
街の掲示所へ一直線に向かった。


「明日の仕事、なにが空いてますか。何でもやります」


乱れた呼吸を懸命に整えながら、タトはきっぱりと言った。


自分にできることを、やろう。

求められていることを、まずはやってみよう。


答えは、まだ見つからない。

けれど――それが、

いつか“自分が本当に欲しいもの”の、手がかりになるかもしれないから。


--



そして、
あの詩がいつかタトの胸によみがえる時、
新たな扉が開く−−




(おわり)


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望月むう(ムーン)🐾|物語と思考|物語に浸りたい ここまで読んでくれてありがとう♡