こぼれ話〜森での食事②
【背景】本編 第二章のこぼれ話
森での食事②
あっという間に仕留めたシカを見下ろしてミミが言った。
「ミミ、大きいのは丸焼きはしないよ?火事になるから」
「もちろん、解体してから焼こう」
ミミのダイナミックな発想に微笑みつつ、
タトは手際よく小柄のシカを解体し、広場へ運んだ。
「さて、今日の分はこれでいいかい?」
早速、肉を火にかざして嬉しそうにしながら、ミミは言う。
「うん?……もうちょっと」
タトが選り分ける肉を、ミミは指差して次々と追加していく。
「ここも」
「はい」
「これも食べたい」
「ミミはよく食べるんだね」
「だってだって、おやつも欲しいもん!」
「それならこのあと保存食を作るからぴったりだ。木は登れるかい?」
「うん。ちょっとなら」
*
タトは適当な木を見つけると、余った肉を担ぎ、ナイフを使って幹を登った。
ミミも爪を立て、素手で後を追う。
冷気で白くなった枝に肉を吊るし、さらに上層へはツルで縛った肉を投げ上げた。
「凍った肉は、火がないときは薄くスライスしてシャーベット状で食べるのもいいんだ。」
「へー!ミミは焼いたのと生しか食べたことないよ!」
「それなら、こんなのもあるよ。ほら、固いけど…樹液の飴」
「まるい…!へー!甘い!」
火が乏しいルミナリーでは、冷気を生かし、加工保存をしてきた。
けれど、ミミがいれば、この森でも豊かな食事ができそうだ。
「ミミはねぇ、たまに色々と焦がしちゃうの。それでよく怒られてさぁ…」
こんなふうに語らいながらの食事は、タトに、故郷を思い出させる。
あんなに冷たくて恐ろしかった森が、ミミとなら暖かく感じた。
二人ならどんな場所でもやっていけそうだ、タトはそんなことを思った。
そう、二人なら、きっとどこへでも行ける――そんな思いが頭の隅を、手のひらに落ちた雪の結晶のように、そっと触れて、消えた。
(おわり)
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