#3-10 引返す旅路|追憶のオリジン〜氷の女王の眠る街〜
旅立ちの朝、ノーレムの街には霧のような風が吹きこんでいた。
塔の前に集まった三人は、ライアンと教会の数人の見送りを受けながら、静かに準備を整えていた。
「レイ、見送りの祭りもせず、こんなに急に出発するなんて……。念のため、これとこれも持っていきなさい」
「三ヶ月後に一旦戻ってくる。その時までとっておいて」
「帰ってきたときは、盛大な祭りを開くぞ!」
レイはひらっと手を上げ、無言で歩き出した。
「行ってきます!」
タトが深く頭を下げ、ミミが大きく手を振る。
三つの影は霧に溶けるように、朝の森へ消えていった。
*
来た道を戻る旅は、ミミの記憶とレイの地図、そして知識に頼って進んだ。
レイの指示でもっとも効率的なルートを選ぶ。
危険な魔獣の森を何日もかけて抜け、やがて湿地に入った。
一羽の白鷹が空を横切り、すっとレイの腕に舞い降りた。
レイは巻物に何かを書き込むと、その紙片を白鷹の足に結び、再び空へと放った。
「この先は、こちらから回った方が歩きやすいだろう」
空を見上げながら、レイが淡々とつぶやく。
そうして彼は、道の脇に石を三つ積み上げ、小さな目印をつけていった。
行き先も道筋も曖昧だった往路と違い、帰り道には、どこか懐かしさと安心があった。
*
道中、レイはミミに魔法の扱い方を教えた。
だが、ほとんど口を開かない。
タトの後ろにぴったりついて、ブツブツと呟く。
タトがそれを聞き取り、代わりに伝えるのが日常になっていた。
「ノーレムでは、あんなに喋ってたくせに!」
ミミが呆れたようにぼやく。
「ほらミミ、集中して。魔力が散りかかってるって、今、彼が言ってるよ」
タトが苦笑いしながら言う。
「レイはクセ強いなぁ、もう!」
「……効率だ」(ボソッ)
*
ミミは小さな火の扱い方も訓練した。
おかげで、熾石を燃やすことがなくなった。タトが声を弾ませる。
「すごいよ、ミミ! 熾石の熱が安定してる!」
そして、レイの言葉を聞き取ると、続けて言った。
「次のステップは……飴だって。このサイズを焦がさずに、沸騰させてごらん」
レイの呟きを翻訳するタトの口調は、どこか楽しげだった。
訓練はまだまだ必要だったが、ミミは確実に変わり始めていた。
(つづく)
第10話 引返す旅路 - 追憶のオリジン〜氷の女王の眠る街〜|不思議な六角柱の石が世界の謎へと導く冒険ファンタジー | Tales 物語・小説
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