#3-10②【挿入話】アスナロ|追憶のオリジン〜氷の女王の眠る街〜
第三章 知を求めて
挿入話 アスナロ
ミミが火を操る手元を見ながら、タトはそっと視線を落とした。
ふと、思う。
「ボクは、何も持っていないな」
魔法も、知識も、ない。
せいぜいできることといえば、誰かの言葉を伝えるくらいだ。
無意識にこぼれたその一言に、レイが口を開いた。
「タト。
僕は、基本的にはこの世界の全ての人に、何かしらの才能があると思っている。
その才能を魔法と呼ぶかどうかは、後付けの分類の違いだ」
レイは静かにまっすぐに、タトを見ていた。
「そして“才能”というのは、自分で認めて、磨いていくものだ。
……君はもっと、自分を認めていいと、僕は思う」
(ことばの終わりに、レイは少し視線を落とした。)
「そう、……かな……」
何者でもない自分が、
みんなの助けを受けながら、それでも、なんとかここまで来た。
動くことは、できる。
ミミの魔力が安定したときの笑顔。
レイが、わずかに頷いたしぐさ。
ボクはそれを、ただ見ている。
それで、いいのかもしれない。
「ありがとう、レイ……」
タトは、眼前の若木を見つめた。
ミミの炎が照らす葉の光沢を、ひとつひとつ目でなぞる。
細い幹に、青々とした葉を伸ばす——アスナロ。
なろうとしているだけで、充分なのかもしれない。
ほんの少しだけ、そう思えた。
(#3-11へつづく)
挿入話 アスナロ - 追憶のオリジン〜氷の女王の眠る街〜|不思議な六角柱の石が世界の謎へと導く冒険ファンタジー | Tales 物語・小説
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