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#2-3 炎の予感|追憶のオリジン〜氷の女王の眠る街〜

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第3話 炎の予感


夜が来ると、森はさらに厳しさを増した。

氷の底のような冷気。気を抜けば命を落とす。

タトは、立ったまま眠気と恐怖に耐え、ただ、夜明けを待った。


闇の中、遠くで木の軋む音がする。

風か。魔獣か。それとも――誰かの叫びのようにも聞こえる。

何かが、森を通り抜けていく。



――本当に、隣町はあるのだろうか?


タトは心の中で問いかけた。

この先の街について、誰も知らない。行って帰ってきた者が、ひとりもいないのだから。


脇に抱えた熾石(しせき)の温もりが、じんわりと伝わってくる。

この熱がある限りーー。

そう思えることだけが、タトを保っていた。


そんな夜を、タトは三晩、越えた。




日の光りが木々の隙間から差し込む昼下がり。
わずかな日が当たる岩の上で、タトは目を閉じていた。束の間の静かな温もりが、冷えきった体の奥まで染み込んでくるようだった。


――そのとき。

かすかに、焦げた匂いが鼻先をかすめた。


タトはさっと地面に降りると身を低くし、苔の上を無音で移動する。

(これは……木が燃える匂いだ)


ルミナリーでは、森で火を使うことは禁じられていた。

そもそも火を扱えるのは、火魔法に長けた者だけ。街では、長老婆だけだった。


ここはもう、あの街の加護が届かない場所――

そう思った瞬間、胸の奥に冷たいものが走る。


木々の奥に、ちらちらと赤い光が揺れている。

火の気配――どうやら、開けた場所があるらしい。


タトは息をひそめ、慎重に歩を進めた。


パチ、パチ……

薪の爆ぜる音がする。


――炎が、確かにそこにある。


(つづく)

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望月むう(ムーン)🐾|物語と思考|物語に浸りたい ここまで読んでくれてありがとう♡