#2-2 故郷のぬくもり|追憶のオリジン〜氷の女王の眠る街〜
第2話 故郷のぬくもり
氷山のほうから、何の前触れもなく風が吹いてくる。
森の魔現象、蒼刃(ソウジン)だ。
受けてしまうと裂傷に加えて数時間は動けない。避けるには、氷山に背を向けてはいけない。
さらに、もうひとつの魔現象――毒滴(トキロット)が森を濡らす。
周囲の霧が集まり、人の頭ほどの雫を作る。
ぽとり、と雫が地面に落ち、煙を上げて穴を開けた。
飛沫ですらしびれを起こし、まともに受ければ一日は動けない。
寒さと変異動物の住む森では、それは死を意味する。
タトは霧の向こうの気配を探って進んだ。凍えかけた足に力を入れる。
「街は、あれでも暖かかったのか…」
あたりが暗くなりかけた頃、ふと、腰の荷物袋の辺りが温かい気がした。
中を探ってみると、熱の正体は長老婆からもらった薬包に入っていた、熾石(しせき)だった。
じんわりと熱を持つ石。病気の人にのみ使われる貴重な物のはず。
(こんなに小さく加工されて…きっと大変だっただろう。)
タトは、空を仰いだ。
木々の枝の隙間のか細い光にその熾石をかざして見つめた。
(…街の石畳と同じ模様だ…)
…そうか、ルミナリーが寒くなかったのは、婆が街全体を温めていたのだ。
タトは婆を思って、ぎゅっと石を握りしめ、前を向いて足を進めた。
進めるところまで行こう。
(婆、必ず隣街までたどり着くよ)
(つづく)
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