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#4-10 亡霊の謎|追憶のオリジン〜氷の女王の眠る街

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前回の話
崩れた教会塔の跡地で、タト、レイ、ミミの三人は地下への入り口を発見した。そこには、街を守るため先人たちが命をかけて残した言霊の呪いがあった――。

「……明日、ルリを連れて、もう一度来よう」そう言ったレイの声は、いつになく深く、重く沈んでいた。


翌朝、霧が晴れない中、タト、ミミ、レイ、はルリと共に、再び教会跡の地下へ来ていた。


レイは、三人に向けて静かに語りはじめた。


言霊の魔法能力のこと。
ここで起きたであろう最期の戦い。
そして、教会地下に残されている石盤の言葉――それらすべてを、紐解くように。


「――かつてヴァリスの守り人には、言霊の魔法を使う者がいた。
街が野盗に襲われたとき、彼らは最後の手段に出たんだ」


その声に呼応するように、タトはかつてのヴァリスの街の光景を見た気がした。



地上では、街が破壊され、住民が散り散りに逃げ惑っていた。
街の男たちは必死に応戦したが、武器を持たないヴァリスの壊滅は時間の問題だった。

塔の守り人たちはそれを悟ると、数名が連れ立って地下へ入った。それは最期の別れだった。
通路は全て内側から魔法で封鎖される。
守り人たちは源光盤を中心にひざまずき、祈りを捧げた。言霊の呪文が石盤に刻まれていく。

名が刻まれると同時に、彼らの身体は凍りつき、背後から魂が抜け出した。
それらは呪詛をまとって黒く揺らめき、塔の外へ飛び出した。
一瞬の出来事だった。
黒い影たちは瞬く間に、敵を葬り去った。

静けさが戻っても、影たちは敵を探し、日が昇るまで街を彷徨った。


レイは静かに続けた。

「そして今なお、魂の縛りは解除されず、塔と街を守るため、近づく者を拒んでいる。

――それが、僕らが見た黒い影、亡霊の正体だ」


石盤に刻まれている呪文が、その意志と力の証明だった。

ノーレムの人々がこの街にたどり着けなかったのも、その結界が生きていたからだ。


タトは大きく息をついた。

「あの亡霊たちは、この街を守ろうとしていたんだね…」


タトの言葉に、誰もがしばらく言葉を失った。

静かな沈黙の中、やがてルリが問いかけた。

「どうして、長(おさ)じゃなくて、私を連れてきたの?」


レイは答えた。

「君が……彼らに向けて、歌っていたから」


ルリはゆっくり目を伏せた。長いまつ毛が青い瞳を覆う。

「……そうね。彼らはもう、対話できないわ。今さら、あの長が知ったところで、どうにもならないものね」


タトは、長椅子に体を沈め、濁った瞳で葉巻きをふかす長の姿を思った。
左腕は、魔獣との戦いで失ったという。


そして、レイは静かに言った。

「……僕なら、この呪文を、解くことができる」


ルリはハッと息を飲んだ。
しかし、すぐに小さくうなづいた。

「わかったわ。
もう、この町を襲う者はいない。彼らを、解放してあげたい」


四人は顔を見合わせる。
誰も異論も、迷いもなかった。


レイが確認する。

「ルリ、今日も『彼』は来ているね?」


「ええ。いつも必ず」


「なら……彼には、記憶してもらおう。今日という日を」


「…ありがとう、レイ」

ルリは心を込めて言った。


「ねえねえ、それならさ!ちょっと芝居してみる?イシシ」

いたずらっぽくミミが笑う。


「ふふ。いい案ね、ミミ」


四人は地上へと向かった。




(つづく)


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