#4-11 見届ける者|追憶のオリジン〜氷の女王の眠る街
前回の話
封鎖された教会跡地の地下には、言霊魔法を刻んだ石盤が残されていた。それは、かつて守り人たちが街を守るため、自らの魂を縛った魔術。彼らは黒き亡霊となり街の侵入者を拒んでいた。レイがその正体を解き明かし、ルリは亡霊の解放を決意する。
隠された遺跡のように、封印されていた「自信の塔」の教会地下。
四人はそこから地上へ戻ると、あえて地下の話題を口にした。
それが、瓦礫の影にひそむ“彼”に届くように。
ミミ「えーっ、地下のあんな奥まで行くの?」
タト「大丈夫。崩れているのは入り口だけ。中はしっかりしてるよ」
ルリ「本当に? 通れるのかしら?」
タト「もちろん。明かりも道もしっかり用意してあるから」
物陰で、ティルは慌てていた。
ルリを見失い、ようやく現れたと思ったら、また、よそ者と共に姿が見えなくなりそうだ。
一瞬ためらった後、彼は意を決したように、ルリの後を追って、崩れた瓦礫の隙間から地下へと足を踏み入れた――。
*
レイは、教会地下の中心部で、歴史と亡霊、石盤の謎を、もう一度ていねいに語った。
その声は石壁に反射し、ティルが潜む地下の隅々まで届いた。
そして、
レイの解放の儀が始まった。
石盤の前で、レイは静かな声で詠唱を始めた。
その言葉は、石盤に刻まれた文字と共鳴するように、地下の空気を震わせる。
レイの髪がわずかに揺れた。
詠唱は、祈りのような呪いのような、不思議な響きを伴い、音の粒となって流れていく。
じっと見つめていたルリの口から、自然と歌がこぼれた。
光のように、波のように。
それは彼らの魂をなでるような、静かな別れの歌だった。
二つの異なる旋律は混ざり合い、ミミが灯す炎を揺らした。
そのとき、
ミミの灯りの影に、あの夜に出会った黒い影の亡霊たちが浮きでてきた。
彼らはじっとルリの歌を聴いていた。
同時に、レイの詠唱にのってふわりと揺れる。
低く静かなレイの詠唱に、透き通ったルリの歌声が絡み合う。
二つの旋律が相互に響き合い、不思議な調和音のなかで、影たちは小部屋をぐるぐると回りはじめた。
影は炎の揺らめきに合わせ、伸びたり縮んだりし、音と共鳴しているようだった。
そして…、
黒い影たちは、一つ、また一つと、すうっと消えていく。
黒い影の気配がすべて引いた時、
石盤にピシッとヒビが入ったかと思うと、
ガランッ!
冷たい音を立てて、分厚い石盤が割れた。
――終わったのだ。
タトの頬には、知らぬ間に涙が伝っていた。
言葉にならない祈りのような願いが、確かにそこにあった。
そしてそれは、四人……いや、五人が共有した、「自信の塔」ヴァリスへの確かな想いだった。
そうして、この日を境に、亡霊は姿を見せなくなった。
(つづく)
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