#4-5 ルリの町|追憶のオリジン〜氷の女王の眠る街
第5話 ルリの町
荒れた街道をたどり、ルリがいるという町へと向かう。
レイはいつものように、何かを書きながら黙々と歩いていた。
先ほど歌を聴いた広場に、ルリの姿があった。
まるで彼女のまわりだけに光が差しているように、ひときわ目を引いた。
「どう? 長(おさ)とはうまく話せた?」
三人に気がつくと、彼女が笑いかける。花が開くようだ。
「うん……この街のことを聞いたよ」
「あまり頼りにならない長だけど、大事な役目を担ってるわ。
今夜はどこに泊まるの?」
「どこでも使っていいと許可をもらった。教会跡に行こうと思ってる」
「あら、あそこは亡霊が出るわよ。うちの隣を使ったら?」
「……君は、信じているの?」
「亡霊のこと…?」
ルリは身を乗り出してタトの顔を覗き込んだ。
「ええ。会ったことがあるもの」
そして、いたずらっぽく笑った。
「ふふ。ね、今日はこの街を案内しましょうか?
私も、あなたたちの話を聞きたいの」
瑠璃色の瞳が、タトをまっすぐにとらえる。
タトは返事を飲み込んだまま、動けなかった。
「まずは中央町へ行きましょうか」
さらりと長い髪をかき上げ、ルリは三人を振り返る。
「うんっ!」
ミミが顔を輝かせて答え、ルリの手を握った。
いつの間にか、すっかり懐いたようだ。
*
ルリに導かれ、三人は廃墟が点在する通りを抜けていった。
「私はいつも色々な町を回ってるの。頼まれごとをしたり、子どもたちの相手をしたりね」
彼女が通ると、子どもが走り寄ってくる。
「ルリ! 今日のお昼の歌はなぁに?」
「おばあちゃんが、膝が痛いって」
「南で大物が取れたから、ハンスが来てって!」
ルリは一人一人に丁寧に声をかけながら、
歌うように手配をしていく。
「今日は西町で歌いましょう。聞きたい子には声をかけてね」
「辛い痛みには手当てをしましょうね。リリ、東町でヒシの薬草をもらってきて」
「サナはゲンたちを連れて、ハンスのところへ」
伝言、見守り、物資の配分、町と町をつなぐ役割まで──
気がつけば、すべてがルリを中心に回っているようだった。
けれど本人は、「好きなことをしてるだけよ」と、屈託なく笑った。
タトはその姿から目が離せなかった。
一方レイは、タトと皆の様子を無言で見つめていた。
人の輪が遠ざかっていく中、レイの背に冷たい風が触れる。
レイは、何者かの視線を感じていた。
(つづく)
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