#5-1 怪現象と道連れ|追憶のオリジン~氷の女王の眠る街
第五章 愛と選択の深淵
第1話 怪現象と道連れ
「タト…?えっ、なんで二人いるのー!?」
ミミのすっとんきょうな声に、レイとルリも飛び起きた。
「……分かんない……」
「どっちがタトー?!」
「ボクだ」「わたしだ」
声が重なった。微妙に違うが、よく似ている。
眠気が吹き飛んだレイは、呆気に取られつつ、ゆっくりと口を開いた。
「……こっちの君は、だれ?」
「レイ、ボクだよ。タッだよ」
「じゃあ……こっちの君は?」
「当たり前だろ、ットだよ!」
どちらも、自分が『タト』だと言っているつもりのようだ。
「……右がタで、左がト……」
レイは視線を行き来させながら、なんとも複雑な顔をした。
重い空気を振り払うように、ルリが明るく言った。
「まぁまぁ! とりあえず温かいものでも飲んで、落ち着きましょ!」
手際よく水を用意し、ルリの手持ちのハーブを湯に落とす。
すっきりとした香りが広がった。
「タト、何かあったの?」
カップを渡しながらルリが心配そうに顔をのぞきこむ。
「えっ?!う、ううん、特には…」右のタト(タ)が焦って否定した。
「何もないよ、ルリ。ほんと怪現象だね…」左のタト(ト)が顔をそむけ、そっけなく言う。
……沈黙。
みんなの困惑が収まらない。
「レイ〜、これってふつうなの?」
耐えかねたミミが、やや怯え気味に声を上げた。
「いや…聞いたことがないな。分裂か?森の魔現象の一つか……?
二人とも実体があるし、力も同じ…。性格がやや違うな」
レイは二人をあれこれと調べると、
顎をつまんでじっとタトたちを見つめ、首をかしげた。
「……さしずめ、表のタトと裏のタトか」
「なんだよ、それ〜」
「どうしたらいいの?!」
二人のタトが同時に不安そうな声を上げた。
「そうねぇ……こう考えたらどうかしら?」
ルリがにっこり微笑む。
「人手が増えてよかったんじゃない?」
「へー、ルリってけっこう楽観的だねぇ!」
ミミがケラケラ笑う。
「あら、ミミにそんなふうに言われるとは思わなかったわ。ふふふ。
まぁ、なってしまったものは仕方ないもの。
どちらもタトなんでしょう?いいじゃない、五人で」
歌うように話すルリの空気に、その場が少し和んだ。
「まぁ……うん。今できることもないしね」
レイが降参するように息を吐いた。
「スンスン……どっちもタトだねぇ。えへへ〜」
ミミは二人の匂いを嗅ぐと、満足げに間に入り腕に絡みついた。
タとトは思わずミミに微笑み、その拍子に目が合うとびくっとしてそっぽを向いた。
一番混乱しているのはタト本人だろう。
しかし、どちらも自分なのだ。どうすることもできない。
裏と表なら、背中合わせで顔を合わせないようにしよう。
それが唯一、二人が同意したことだった。
次の街、ラーフェへの旅路は、チグハグな落ち着かない始まりとなった。
(つづく)
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