#8-11 君と同じ時間を|追憶のオリジン~氷の女王の眠る街

第11話 君と同じ時間を
【前回までのお話】
氷山は巨大で得体が知れず、時間の概念がなかった。さらに空間も歪み、進んでも戻っても印の「112」へ行き着いてしまう。
レイとイオは調査のため上階へ向かい、タト、ミミ、ルリはパレスのある階下を目指した。
靄に覆われた螺旋階段は単調な繰り返しで、感覚は次第に曖昧になっていく。その時、靄の向こうに、かすかな足音と人影が揺らいだ――。
タトは、明かりのオリジア石を掲げて、腰の鉈剣に手をかけた。
階下の靄(もや)の奥で影がゆらいだ。
輪郭が、少しずつはっきりしてくる。
やがて現れたのは――
上へ向かったはずのレイとイオだった!
「……レ」
「タト!!」
レイはタトを見つけると、氷の階段を駆け上がりタトの両手を握った。
「出会えた!会えたよ!君に会いたかった!ミミ、ルリ、みんな無事で良かった!」
「レイ……本物…?」
タトの顔が歪む。目頭が熱くなった。
タトはなぜか、レイといると涙もろくなるのだ。
そんな自分をどこか恥ずかしく感じてうつむいた。
「もちろん、本物だよ!君たちだってそうだろう?」
確信していたと言わんばかりに、頬を紅潮させて喜ぶレイ。
ミミは夢から覚めたように、キョロキョロと辺りを見回した。
「レイだ……。
あ、みんなもいる。
ミミ、一人じゃなかった…」
「え、ええ、そうね…私たちどうしたのかしら……?喉がカラカラだわ」
後ろのルリも、ホッと息をついた。
「よし、休もう!祝いだ!」
レイは、嬉々として言った。
「あはは、レイ…なんかライアンみたい〜」
弱々しくミミが笑った。
ノーレムの塔の、あの温かい人が思い出される。
レイは自分の言葉にクスッと笑った。
「本当だ…こんな時にね。
いや、こんな時だから。出会えたことを喜ぼう!」
五人は安堵のため息をつきながら、一段ずつ段差に腰を下ろし、休憩の支度を始めた。
保存食を分け合い、ミミは炎で干し肉を炙り、飴玉を細く伸ばした。
「生き返るようね…。階段しか見えなくて休憩も忘れていたわ」
お茶を一口飲むと、ルリはふーっと息を吐いて肩をすぼめた。
「でも、二人はなんで下から来たの?上へ行ったよね?」
三人がレイを見つめる。
「上へ行ったら、その印も112だったんだ」
「え!ボクたちが待っていた場所も112だったのに?!」
「こわっ!!」
タトとミミが目を剥いた。
レイは不敵な表情で続ける。
「そこで、上へ行ったのさ。そうしたら、君たちに会った」
「おかしなこともあるのね」
ルリが肩をすくめる。
「ボクたちはかなり長い間、待ったけど、あそこにいても会えないと思って、底のパレスを目指したんだ」
「いい判断だね。
途中で壁の落書きを見たぞ。傑作だったな!ね、イオ?」
「はい。階段には滑り止めが彫られていました」
「はは。時間だけはあったからね」
「どうやら、この青白い靄が意識を混濁させるようなんだ」
みんなは空洞から湧き上がるその青白い靄を見つめた。
「空洞の下から上がってくるのよ。避けられないわ」
「みんなに魔法をかけるよ」
レイは手を前にかざし短く呟いた。言葉が光の粒となって空気を揺らす。
直後、心地よい風が一行を吹き抜けた。
泥のように重かった意識が、すうっと軽くなっていく。
「ふわぁ…。レイ、力が強くなったんじゃん?」
ミミが気持ちよさそうに深呼吸して言った。
「…うん。今まで押さえていたんだ」
青白い靄がそこだけ晴れ、五人の刻は再び重なり合った――同じ時間に。
レイは、改めて座り直した。
「…ルリ、イオ。
オリジア石を渡しておくよ。
入り口では、厳しい態度をとって悪かった」
レイのグレーの瞳は、二人をしっかりと見つめていた。
(つづく)

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