#7-7 二つの光|追憶のオリジン~氷の女王の眠る街
第7話 二つの光
激しくぶつかる青白い光と金色の光を抜けて、
ミミがタッと氷の地面を蹴った。
慌てたタトが止める間もなかった。
ミミは真っ直ぐにドーマの胸元へ飛び込んだ。
「ミミッ!!」
タトの恐怖を帯びた悲鳴が空間を裂く。
ミミは小さくて身軽な身体を、ドーマの甲冑を使ってトトトっと駆け上がると、あっという間にドーマの首元へ。
「なにっ?!」
そして、目を剥くドーマの口に何かを入れた。
カロン!と硬く軽やかな音がこぼれる。
「怒りすぎだよ、ドーマ!!」
それは、白樺の樹液で作ったあの、飴玉だった。
ミミはニヤッと笑うと、その肩を越えて、ドーマの背後に降りた。
そこには大きな扉があった。
「タト!」
ミミが叫ぶと同時に、レイが準備をしていた呪文を唱えた。
「俊敏強化――突破するよ!」
一筋の風が吹く。
ウォールが狼狽して声を上げた。
「消えた?!」
タトとレイは壁のような二人の間を瞬時に抜け、背後に回った。
ミミと合流すると、氷の絶壁にそびえる門扉を三人で力いっぱい押した。
「させぬ!!」
振り返ったドーマとウォールは、金色の光をまとった三人を凍らせることができず、
巨大な腕を伸ばして握りつぶそうとした。
パッと三人がかわすと、ドーマの手が門に触れて扉がわずかに開いた。
「今だ!!」
その隙間に、三人が滑り込む。
ドーマとウォールは怒り狂って、扉になだれ込んできた。
「ならぬ、ならぬ、うおおおおーー!!」
バキバキと、空気が悲鳴を上げて凍っていく。
しかし、扉の中までは届かなかった。
三人のすぐ後にドーマとウォールは門の中に飛び込んだ。
氷山の内部は、巨大なドームのような空洞となっていた。
その空間はただ広く、裾野に沿って途方もなく広がっている。
底は霞んで見えない。ただ、青白い闇が深く深く続いていた。
二人の巨大な身体は、その勢いのまま氷の上を滑った。
――ズザザザーッ!!
鎧が氷を削り、砕けた破片を激しく巻き上げる。
彼らはタトたちを掴もうと手を伸ばすが、すんでの所で届かない。
そのまま中央の縁を砕いて、広大な空間の闇へと投げ出された。
ドーマとウォールは空洞を落ちながら、狂気じみた笑い声を上げた。
「は、ははは!もう終わりだ。この世界は破滅だ…ははははは……」
砕け散った破片がくるくると回りながら、声を追うように落ちていく。
その笑い声は、氷山の内壁にこだましながら、穴の底へ徐々に消えていった。
後には、はるか底から立ちのぼる冷たい霞だけが、静かに漂っていた。
*
「門が、開いた……」
呆然と立ち尽くすタトに、穴を見つめていたミミがつぶやいた。
「ドーマ、飴をあげても落ち着かなかったね……」
「……ミミ、あの状況で飴を食わせたのか?」
レイは呆れると同時に、こらえきれずに吹き出した。
「ぷっ……アハハハ!」
つられて皆も笑い出す。
その笑い声が、途方もなく広い氷のドームに、かぼそく響いた。
笑いながら、タトの視界がぐらりと揺らぐ。
目を開いているはずなのに、目の前が真っ暗になった。
タトは限界だった。
「タト!」
崩れ落ちるその体を、レイが抱きとめる。
均衡を失うタトの意識の向こうで、自分を呼ぶミミの声が反響しては、遠くなっていった。
(つづく)
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