#6-2 凍える森の二人|追憶のオリジン~氷の女王の眠る街

6-2 凍える森の二人
張りつめた冬の朝の森を、ルリとイオは二人で歩く。
ひえて重たい空気が足にまとわりつき、吐く息が白く長くのびる。
ルリの胸には、さっきの議論の熱がまだ残っていた。
(なぜ、助けに行くだなんて悠長なことを言うのかしら。
どうして私の判断を支持してくれないの…?ヴァリスでは、皆が私の言うことを認めてくれたのに。
でも——私は町を、この世界を変えるのよ。元凶の女王を倒す。
迷うことなんて、ないわ。)
サク、サク、と細かい雪を踏む音だけが響く。
視線は前へ向いていたが、思考は自然と隣のイオへと引き寄せられていく。
とっさの判断とはいえ、心強い味方を手に入れた。
(イオは…やっぱり私の方に来てくれた)
ルリはふと顔を横に向け、イオに小さく微笑みながら尋ねた。
「ねえ、イオ。私は、間違っていないわよね?」
イオは淡々と歩きながら、答える。
「ええ、間違っていません。判断は合理的です」
その言葉を聞いた瞬間、ルリの口元が自然とほころんだ。
(ほら、ね。やっぱり、私が正しいのよ。
それに…)
「私を心配して来てくれたのよね?ありがとう、イオ」
その声には、どこか甘い余韻と無邪気な誘いが混じっていた。
「どういたしまして」
イオは変わらぬ調子で返すが、ルリはその無表情な様子を見てフッと笑う。
(ふふっ、これは確定ね。イオは私を…)
ルリはそっとイオの腕につかまった。
「どうしました?」
「少し、こうしていたいの。」
イオは特に拒まず、そのまま歩みを続ける。
白い森に、寄り添う二人の足音が響いていた。
***
ルリとイオが去ったあと、
残されたタト(タ・ト)、ミミ、レイは、予定通り空白の塔へ旅を進めた。
タとトは胸に大きな穴が空いたような気がした。
それは、一人の時には感じたことのないものだった。
ルリが…そして、
まさか、仲間になったばかりのイオもいなくなるなんて…
視線を落として歩くタトに、後ろからレイが声をかけた。
「僕らは元に戻っただけだよ。ルリはオリジンじゃない。もちろんイオもだ。」
タの足が止まった。同時にトも止まる。
ミミが心配そうにタ・トを見る。
「そう、ルリはオリジンじゃなかった…」
つぶやいたタの脳裏に、ヴァリスでの光景がよみがえった。
*
「ねえ、タト、お願い」
ルリの声は、いつもの歌うような声よりも切実で、青く澄んだ瞳は、タトだけに向けられていた。
「私も旅に連れて行って。」
真剣な顔のルリに、レイは言った。
「…君は、オリジンではないだろう?」
「そんなの関係ないわよ。
オリジンは、特別な力があるわけじゃないんでしょう?
それに、あの旅人も石は光らなかったわ。」
そう言って、ルリはそっとタトの手を取った。その手のひらは温かく、タトの鼓動を確かめるように強く握られた。
「もしオリジンでなくちゃできないことがあるなら、そこはあなた達がやればいい。
旅は誰でもできるし、私はあなた達の力になれるわ。」
*
あの時、心強い仲間ができたと、そう思った。
ルリの迷いのない前向きさ。響く歌声、活気あふれる踊り、笑顔と優しいしぐさ…。
トが、ギリッと奥歯を噛み締めた。
「タト。過ぎたことを考えすぎてはダメだ。これからの事を考えよう」
レイの声で、タとトははっと顔を上げた。
「ご、ごめん!」
「イオがいない以上、魔現象への対策は組み直さなければならない」
「うん、そうだね…」
再び視線が落ちる。
ミミに集まるあの現象を、どう避けるのか。
イオのような魔法はない。
いずれにしろ、魔現象は氷山次第なのだ。
気を引き締めなければ。
タとトは肩に力を入れ、歩みを速めた。
(つづく)
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