#5-8 異なる信念の中で|追憶のオリジン~氷の女王の眠る街
第8話 異なる信念の中で
地下都市ラーフェは、とても快適で、興味深かった。
ルリとミミは毎日のように、迷路のような街を歩き回った。
タトとレイは、モーゼに頼み込み、書庫を訪れた。
青の広場にある書庫は、湿気を完全に遮断した石造りの空間で、数百年にわたり受け継がれた地下都市の記録が、整然と並んでいた。
「書物もたくさんあるだろう?私もすべては把握していないのだよ。
写したいものがあれば、管理の者に声をかけておくれ。」
レイは古い書物を慎重に手に取り、外の世界や伝承に関する記録を探した。
タトは地下都市の歴史書を一冊ずつ丁寧に読み進めた。
*
また別の日は、黄色の広場にある発掘品の倉庫を訪れた。
そこには瓦礫や石、化石や木の根……乾いた土の匂いが棚ごとに漂っていた。
「ここはね、土の中から見つかった珍しいものを保管しているの。
モーゼは集めるのが趣味で、ガラクタばかりが増えて困っちゃうのよ」
ラーは苦笑しつつ、部屋の奥へ案内した。
「彼は古いものを捨てられない人なのね。
きっと全部、なにかの記憶だと思っているんだわ。」
続けて、少し声をひそめる。
「私のお気に入りは、こっちの棚にあるのよ。」
その棚は布が敷かれ、埃が払われているだけなのに、空気まで澄んで見える。ラーの感性で選ばれた品々は、どこかオーラをまとっているようだ。
その一角に――
黒い六角柱の石が、ひっそりと置かれていた。
タトとレイは同時に足を止めた。
「……あった」
レイが低くつぶやく。
タトはそっと手を伸ばし、触れた。その瞬間、黒い表面がゆっくりと白く透き通り、中から淡い光があふれ出した。
「まあ……!!これ、そんなものだったの?」
目を丸くして驚くラーに、タトは固く頷いた。
「これが、探していた『オリジア石』です」
*
その日の食事後、タトはモーゼに尋ねた。
「この石を、譲っていただけませんか?」
モーゼは少し驚いたように目を細めた。
タトは希望の塔のオリジア石を、ミミは友情の塔の石を、
そして、レイは知識の塔の石をそれぞれ差し出した。
「ほう……同じものが、すでに三つあるのかね。これが源光盤と同じ石で、塔の象徴というわけか」
四つの石が並ぶと、淡く光が重なった。モーゼはその光を見つめ、少し考え込んだ。
「なるほど、興味深い」
「氷山のパレスに入るのに、必要だと言われています」
モーゼはゆっくり頷いた。
「――いいだろう。必要なら持っていきなさい。ただし、役目を終えたら、ここへ戻してくれるかな?これは大切なコレクションのひとつだからね」
そう言って、ウインクをしてみせた。
ラーフェの人々は、『オリジン』に関しても探す予定はないという。
タトたちはこの地下都市で、他の街にはない知識や技術、エレメンタルの魔法に触れた。
ラーフェの人々は皆、穏やかで優しかった。
しかし、彼らの信念は交わることはなかった。
五人は一週間後、地上へ戻ることを決めた。
*
「残念だわ。またいつでも、いらっしゃいね。」
タとトは、ラーの手を握り丁寧にお礼を言った。
ラーに見送られながら、五人は来た道を戻る。
それぞれの色を象徴した広場を抜け、初めて訪れた緑の広場の回廊を通り、小さな通路へ入った。
やがて、教会塔の裏にある簡素な扉から外に出ると、外の風は刺すように冷たかった。
森の上部は白く、雪が舞い始めていた。
(つづく)


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