#5-5 緑色の世界|追憶のオリジン~氷の女王の眠る街
(前回までのお話)
次の街ラーフェへ向かう途中、タトは怪現象に見舞われ、体が二つに分かれてしまった。どちらも本人だと言い張り、「タ」と「ト」の二人として旅を続けることに。
五人は、崩れた愛の塔で出会った奇妙な仮面の男・イオフィリアに案内され、地下都市があるという入口へとたどり着いた。
第5話 緑色の世界
木戸をくぐり、五人は薄暗い石造りのトンネルへ足を踏み入れた。
外の冷気が遠のき、温かな空気が頬をなでる。
ゆるやかに下る通路の先に、もう一つの重厚な扉が見えた。
タトが手をかけ、力を込めて押し開ける。
その先には、さらにもう一枚の扉があり――
その扉を開くと、
光苔のような淡い緑色の光が、視界一面に広がった。
「すごいわ……」
ルリの声が、柔らかな光を受けて震えた。
壁から天井まで隙間なく積み上げられた石の通路。
美しく切り出された石が緑色に照らされ、その先の広場へと続いている。
五人は導かれるように、そっと歩みを進めた。
「回廊だ……!下にも続いている!」
広場に出たレイは息を呑み、瞳を輝かせた。
回廊の手すりからは、三層ほど下へ続く巨大な吹き抜けが見下ろせた。
石造りのドーム状の天井、光を拡散する大天窓、そして各階を巡る美しい回廊と、階下に広がる広場。
五人は言葉もなく、その光景を見渡した。
「う、わぁ……!!」
ミミがその広さに歓声を上げる。
壁に等間隔で並ぶ明かりが蛍のように淡く光り、この巨大な空間全体を神秘的に包み込んでいた。
「あの奥は……この構造だと、塔の地下と直結しているんだ!」
回廊の先を見渡していたレイが確信の声を上げた。彼が一歩踏み出そうとした、そのとき――
脇の部屋の扉が、音もなく開いた。
「地上からお越しの方々ですね。どうぞ、こちらへ。」
五人の胸が一斉に高鳴った。
現れたのは、頭からマントをかぶった人物。顔は見えない。
「はい。あの……ここは、愛の塔の街でしょうか?」
タトが慎重に尋ねる。
「そうです。イオフィリア様から連絡を受けています。さあ、どうぞ。」
案内人は穏やかな声でそう告げ、すぐ脇の部屋へと五人を導いた。
そこはすっきりとした広間で、五人は石造りの大きなテーブルに腰を下ろすと、茶をすすめられた。
「こちらは清めのお茶です。地上から来られた方は、まずこれを飲みます。」
地上の穢れを清めるための儀式だという。
一口含むと、体の芯まで温かくなるような、不思議に優しい味がした。
冬の始まりだというのに部屋は暖かく、皆はマントを脱いだ。
「それでは、隣の部屋へどうぞ。」
通された次の間は、居心地よく整えられた応接間だった。磨かれた乳白色の石材の壁。そこには細い水路が流れていた。水と天井のラインが淡く光を放ち、部屋全体が白く照らされている。
まるで異なる世界に入り込んだようだ。
案内人が去ると、ほどなくして年配の男女が入ってきた。
二人とも穏やかな笑みをたたえている。
「旅の方々、ようこそおいでくださいました。ここは地下都市ラーフェです。」
水の流れる音が静かに響く中、男性の声が家族を迎えるように温かく、部屋に広がった。
五人はどこか夢心地で、彼らをみつめていた。
(つづく)
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