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#5-4 意思なき案内人|追憶のオリジン~氷の女王の眠る街

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第4話 意思なき案内人



タトは身じろぎもせず、仮面の男を見つめていた。
言葉が続かない。

すると、レイが脇から口を開いた。


「君は、一人でこの塔と街を見回っているのか?他に人は?」


仮面の男は静かに答える。


「この街の人々は、ここには居ません。地下に暮らしています」


「地下に……?」

レイが小さくつぶやいた。

――昨夜、かすかに聞こえた音。あれは地下からのものだったのか。だが、昨日の調査では地下通路は崩れていた。


「なぜ、地下で?!」

トが思わずきつく返した。


男は仮面の顔を少しだけ傾げた。


「それは、街の人々に直接お尋ねになるのがよいでしょう。 入り口までご案内しましょうか」


声は穏やかで丁寧だったが、不思議なことに、どこか抑揚に欠けていた。感情があるようでいて、ない。
意思を持たない“器”のようでもあった。




男は、「イオフィリア」と名乗った。


「イオ、フリア? 難しいなぁ、イオでいい?」


警戒が解けたミミが、人懐っこく話しかける。


「ええ。構いませんよ」


イオは淡々と答えた。




タトは胸の奥に、ざわめきとは違う感情を抱えていた。タの言動にトは無意識に苛立つ。


なぜ自分から質問しない?レイに任せている?


その得体の知れない感情が、この不自然な状況と重なった。


この仮面の男は、何者なのか?


タトは口をキュッ結び、眉をよせた。





教会塔の地下入口は激しく崩れていたが、イオの案内で建物の裏手へ回ると、
その一角に倉庫の扉のような目立たない入り口があった。


「ここが、街の入り口なの?」


ルリは不思議そうに尋ねた。


イオは頷くと、その扉に取りつけられた古い鎖を引いた。

金属音が静かに響き、遠くでかすかに音が鳴る。やがて扉が、ゆっくりと自動で開いた。


「私は共には参りません。 ですが、彼らは穏やかで、思いやりのある人々です。 安心してお訪ねください」


そう言うと、イオフィリアは振り返ることなく去っていった。




タトはしばらく動かず、開かれた木戸の向こうを仲間たちと見つめた。


「彼は信頼できるのかしら?」


ルリが戸惑いを隠さずに囁いた。


「仮面で感情がますます分からないわね…」


「そしてこの扉だ」


レイは興味深そうに、古い鎖にそっと触れた。


「鎖が奥までつながっていて、知らせを届けた。この塔は、ただ崩れているだけじゃない。何か高度な機構がある」


ミミは扉の奥をじっと見据え、耳を澄ませる。


「……気配がする。結構たくさんいるみたいだよ」


タトは、開かれた木戸を前に深く息を飲み、皆に目配せをして、小さくうなずいた。


木戸の奥からわずかに漏れるのは、光苔のような淡い光だ。

地下特有の埃や土の匂いはなく、あたたかな空気が静かに流れてくる。


五人は、扉の奥――未知の地下通路へと、一歩を踏み出した。




(つづく)



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