#4-9 教会塔調査|追憶のオリジン〜氷の女王の眠る街
前回の話
夜の教会跡に現れるという亡霊。ルリは町の規則を破り、夜中にその前でひとり慰めの歌を歌っていた。そして彼女は、タトたちの旅への同行を願い出る――。
翌日、
ミミは早朝から、森の探索へとあっという間に姿を消した。
一方、レイは教会塔の調査を申し出たので、タトもその跡地を一緒に回ることにした。
昨晩の出来事が夢のようだった。
レイは無言で、昨晩来た場所を調べていた。
「タト、来てくれ。ここ、地下への階段がある」
「地下なんて、あったんだ…」
「ノーレムの塔も、同じ構造だよ」
レイは、一部の人しか知らないという塔の構造を語った。
「塔の中心は地中にあって、そこに“源光盤”があるんだ。
源光盤は、薄い六角形のプレートで、オリジアの源を映すとされている。
塔を支える“心柱”は、そこから伸びているんだよ」
レイの言葉に促され、
二人はまるで初めて地下を発見した探検家のように、崩れた瓦礫の間から慎重に階段を下りていく。
「ここで行き止まりか。塞がれてるな……壊せないかな?」
通路は固く封鎖され、二人がかりでもびくともしなかった。
途方に暮れ、タトはふと空を仰いだ。
(ミミ、もう戻ってるかな…)
その時、瓦礫の上から、聞き慣れた声が響いた。
「タト、みっけー!獲物とってきたよ!」
ミミが、瓦礫の隙間からひょっこりと顔を出した。
「ちょうど良かった!」
レイは顔を輝かせた。
赤獅子の獣族であるミミの、圧倒的な炎の力で、先の道が切り開かれた。
「えー!地下探検!?ワクワク」
「ミミ、灯りを頼む。
ノーレムと造りは同じはずだ。通気口は無事だな。
中心部へ行ってみよう。きっと道は通じてる」
レイはどこか、確信に満ちた口ぶりだった。
三人は、カビとホコリが混じったような、澱んだ空気の狭い通路を抜け、やがて広い空間へ出た。
どこからか、風が吹き込んでいる。
長い間息が止まっていたような、冷たい匂いだった。
「ここは、荒らされていないね…」
タトが辺りを見回してつぶやくと、レイは頷いた。
「ここで、最後まで籠城していたのかもしれない。
でなければ――亡霊には、ならない」
「えっ……?」
それ以上、レイは語らなかった。
ただ、慎重に足を進め、部屋の中央へ向かう。
たどり着いた中央部には、区切られた小部屋があった。
中心の床は丸く窪んでおり、黒い六角形のプレートがはめこまれている。
そばには、古びた石盤が置かれ、何かの文字が刻まれていた。
「……あった。
これはおそらく、“言霊能力者”による『縛り』だ」
レイは膝をつき、石盤に手を触れながら、低くつぶやいた。
「言霊って……やっぱりレイも、その能力者なんだね?ティルのときのあれも……」
「ああ。傷つけるつもりはなかった、けれど…。
言霊は、強い意志で発動する。
つまり……相手を支配したい、服従させたい――そんな時に使う。とても慎重に扱うべき力だ」
タトは息を飲んだ。
小部屋の裏側へ回ると、
そこには、いくつかの白骨が祈るような形に崩れ落ちていた。
レイの指先が石盤の彫り跡をなぞる。
淡く、沈痛なレイの声が響く。
「この石盤は、ここで果てた教会の守り人たちの思念を、繋ぎ止めていた。
“街を守れ”“塔を守れ”という想いが、今もここに残っている」
その言葉が、タトの胸にザァっと、突風のように吹き抜けた。
(つづく)
目次
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