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誤解

この小説は
#風まかせ文芸部  掌編小説です
が、#田原にかさんの #幼馴染
から始まる正人と美智子の物語でもあります。
単独で成立し、なお連載になっていれば成功だと思っています。
i様よろしくお願いします
#ふあっとことばあそび

また皆様のご意見も聞かせて頂ければ嬉しいです
厳しいご意見もどんどんお寄せください
作品をより良いものにしたいので・・・<(_ _)>


「あれ、まだ線香花火がこんなに残ってるから
正兄ちゃんいっしょにしようよ」
地蔵祭りから帰ると、あの喧噪も遠のき、
近くの草むらから虫の声が聞こえてきた。
明日には遥は横浜にもどることになっている。

「仕方ないな~」と言いながら正人は遥に付き合ってやる。
年の離れた姉たちは、お盆ではなく地蔵祭りに合わせて帰ってくる。
地蔵菩薩の菩提寺は、盆より地蔵祭りを大切に思っている。
正人はまだ大学生だから、いつも子ども扱いで、
大人の話には入れてもらえない。
「あんたなんか、まだ子供子供!遥かとでも遊んでおいで」
小学生のころから、ずっとそうだった。

バケツに水を用意してやり、風よけになってやる。
「私ね、花火大会みたいな大きな花火じゃなくて、
消えそうで、消えない線香花火が一番好きなんだ」

「なにバカみたいなこと言ってんだよ」
ほらよと、正人は縁側の前にろうそくを立ててやった。
「高校生の癖に、好きな男でもできたんか?」
遥は答えなかった。

ふたつの線香花火が、交差し
闇の中でかすかな音を立てながら、あちこちに弾けた。

遥は来年まで置いておくと湿気るからと
次々と花火に火をつけた。
正人も何も言わず、それに付き合った。

「ねえ!正兄ちゃん、さっきお地蔵さんで会った人が好きなの?」
「どうだろう。幼稚園から一緒だから幼馴染かな?」
「正兄ちゃんって、意外と鈍感なんだね。なんだっけ美智子さん?
わたしのこと正兄ちゃんの恋人だと思ったみたいだよ。誤解は早く解いた方がいいよ」

「あいつがそう思ったんなら、それでいいんだ。美智子さんは庄屋の跡取り娘で、頭が良くて、どうせ俺には高嶺の花なのさ。高校生の時も誘ったけど相手にもされんかった」

「ふ~ん。それでいつの時代のこと言ってるの?おじいちゃんに言われたの?正兄ちゃんも跡取りだから近づいたらダメって?バカみたい!江戸時代じゃあるまいし」

「それだけじゃないのさ。農地っていうのは、お前が考えているほど簡単なものじゃないんだよ。お互いに農地と多くの先祖がおる。骨をその辺に放っておくことはできんじゃろ」
「まあいいわ。じゃあ正兄ちゃんは広島の大学を出たら、ここに帰ってきて
働きながら、稲を作って、ふさわしいお嫁さんをもらうってことね?孝行息子だ」

今度は正人が黙った
線香花火も残り少なくなった。
正人だって本当にそれが正しいのかどうかわからなかった。
都会で就職したいと言ったらおやじは何というだろう?

遥は遥で死にたいほど悩んでいた。
好きだと口に出せば、二度と会えなくなるし、姉弟に亀裂が入る。
許されない恋っていうのはこういうことなのに。
叔父さんは、バカだと思った。
いや、私の方がどうかしているのだろう。

たぶん、あのふたりは両思いだ。

花火がすべて終わり、辺りは真っ白になった
遥は躓いたふりをして、正人に抱きついた。
胸が高鳴り、もうどうなってもいいと思ったが、
「おい、気をつけろよ。まったく」と遥を支えたあと、
正人はバケツの中の花火の始末を始めた。

遥は来年は受験の年だ。
これ以上深入りしてはいけない。
ここに来るのも今年で最後にしようと強く思った。

湿った火薬の匂いだけを残し、
遥の夏が静かに終わろうとしていた。



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