ゆうめい 『ハートピース』 (配信)
1月末に突如ドロップされた期間限定配信にて視聴。こちらの公演は特に気になっていたので予期せぬプレゼントを頂いた心持ちがしてありがたやであったが、年末から各劇団の配信ラッシュ(毎年こんな感じだっただろうか…?)で大忙し。ようやくここまで手が回ってきた。
🪜ゆうめい10周年全国ツアー公演『養生』
— ゆうめい (@y__u__m__e__i) January 30, 2026
🥪『弟兄』再再演
❤️『ハートピース』
🎞️約1週間⏳期間限定⌛️全編映像配信🎞️
【1/31(土)10:00 〜 2/7(土)23:59まで】
🌐https://t.co/ENMxXbzlNv
🎫各視聴料金:1,500円(税込)+手数料377円
📚全国ツアー版戯曲&グッズ通販も開始!📸 pic.twitter.com/JlgeH61pia
DVDも買っておいた。デザインもかわいい。
概要
まずは概要から。
東京芸術劇場にて上演し、第68回岸田國士戯曲賞を受賞した『ハートランド』。受賞記念として、作品モチーフとなった岐阜県高山市のブックカフェバー「こどものほんや ピースランド」の現地にて『ハートランド』の無料上映会、そして続編である新作『ハートピース』の回遊型上演を行います。
『ハートピース』では、『ハートランド』で江原幸子役を演じた高野ゆらこ、『姿』で高野との夫婦役を演じた五島ケンノ介、ピースランドのマスターである中神隆夫が出演し、現実と虚像のクロスオーバーを実現します。実際のブックカフェバー内を鑑賞者の皆様と回遊しながらの特別上演です。
まさかの『ハートランド』続編。とにかく特殊な企画であるが、上演あとがきに全て書いていただいており理解が捗る。『ハートランド』ももう一度観ようかな…。
映像は、作品モチーフとなった「こどものほんやピースランド」における回遊型上演を擬似体験させるべく撮られており、長回しを多様。イメージとしてはApple TV『ザ・スタジオ』に近いとも言えるだろうか。
それを2025年3/21(金)・22(土)・23(日)と3日間、各日4回公演というハードスケジュールで行っており、さすがに池田氏も反省されているようだが、お父さん(五島ケンノ介)もマスター(中神隆夫)にしても、この一事を取って只者ではないことがすぐに分かる。
あらすじ
3人芝居である。
拠り所にしていたブックカフェバー「ハートランド」を去っていった江原幸子(高野ゆらこ)が数年後に帰ってきた。隣には猫のフィギュアを持った白髪の男性(五島ケンノ介)がいる。そしてマスター(中神隆夫)が帰っていた。平穏を求め、再び現実が溶け込み邂逅する山奥での一幕。
ほっさんを「汚物顔のはせがわ〜」といじっていた江原幸子は、ほっさんからの復讐(大好きだった「百万回生きたねこ」の猫のフィギュアに精液を掛け続けられる)に傷つき「ハートランド」を出ていった。ここまでが前作。
今作はその2年後、江原幸子が白髪の婚約者(五島ケンノ介)を連れて「ハートランド」に舞い戻り、前作では行方不明だったマスター(中神隆夫)に対して、ほっさんの一件がいかに苦しいことであったかを語りだすのである。
いじめ加害者である江原幸子の被害者性
ゆうめい作品の大きな基調をなすのは、池田氏自身のイジメの体験であろうと思う(『弟兄』等)。その体験を直接的に描くところから、劇団8年目の『ハートランド』、9年目の『養生』ともなるとその先 ── すなわち、加害者の中にある被害者性や、加害者が陥る陥穽、加害者も被害者も共にこの時代における被害者として捉えた連帯の可能性 ── が表現され、書かれるようになった(と、勝手に捉えている)。
描き方も『弟兄』の頃に比べ、体験の事実を以前より手放し、客体化することで"笑っちゃいけない"感じも減じており、代わりにリアリズムから離れたフィクショナルな笑いを携えて、舞台芸術でしかできない表現の地平に歩みだしている。
江原幸子を演じるのは高野ゆらこ。池田氏自身の母親を描いた『姿』においてその母親を演じた彼女を、再び池田の実父である五島ケンノ介と組ませる。それによって『姿』における母の姿が重なり、女の役割を押し付けられ苦しんできた"時代の女性"の苦悩がここにダブっても見えてくるのだが、さらに江原幸子の(イジメの同調圧力に屈した)弱さ、むしろ仲間であったほっさんを裏切った罪の意識までもが深い層から掘り出されていた。
見えない法律に縛られて
ネタバレになるので詳細までは触れるのを控えるが、江原幸子は再び「ハートランド」を出ていく。しかし今度は、過去の全てを乗り越えた新しい自分として。
それを物語るのが主題歌の『種をまこう』(作詞・作曲:中神隆夫)である。聞いて最初は「高田渡の曲か?」と思ったが、まさかマスターのバンド(フライングアジール)によるものとは。大名曲。終わり方は本当に美しいだけでなくカッコよくて、最後は幸子に幸あれ!と幸子を好きにもなりました。
ゆうめいの作品全てに共通して言えることだが、演じられる話はシリアスでも終始どこか面白く、笑える、泣き笑える。五島ケンノ介が葉っぱの絵をもちながらバズりを狙って写真の画角を工夫する場面は特に最高でした。
当然『養生』も年末に観ていて、配信でも見返したりしているので、こちらも早いところ感想を残したい。7月の新作公演も今から楽しみである。
(2026年2月6日視聴)
