コンビニでの雨宿り
「こんにちは」
背後からの声に振り返ると、若い女性の笑顔が目に入った。
瞳を輝かせ、こちらを見上げている。
場所はコンビニの自転車置き場。
原付のスタンドを立てたときだった。
どこかで見た顔だ・・・が、誰であるかすぐには思い出せなかった。
親し気な笑顔。天文館のどこかの店の女の子かとも思った。
「あ・・・、知ってる顔だけど、どこで会ったんだっけ?」
「店員です!」
一瞬、意味がわからなかった。
少し遅れて記憶がふわりとつながった。
そうだ、ちょっと前、この店で、レジの新人さんに話しかけたことがあった。
「最近入ったんだね。あなた、見た感じがすごく優しい感じに見える。見た感じだよ。実際にはどうだか知らないけど、それって財産だよ。幸せな人生を送れそうな気がする」
「ありがとうございます」
その子は、少しはにかんだような笑顔を浮かべた。
その時と違い、今は仕事上がりの私服姿。仕事から解放された伸びやかな表情。だから印象が違って見えたのだ。
そんな声かけをするようになったのは、いつの頃からだろう? 自分が歳を重ね、若い子たちが息子や娘、あるいは孫みたいな存在に思えるようになってからのことだ。
むこうから声をかけてくれたその日、店内で買い物をしている短い間に天気が急変し、足止めを喰らってしまった。その女の子、たぶん自転車通勤で、僕と同じように雨宿り状態になってしまった。
店内の小さなカウンターでドリンクを飲みながら、手持無沙汰だったので、その女の子に声をかけ、マジックを2~3楽しんでもらった。
コインを握ったときの綺麗な手が印象的だった。
その後しばらくその店に行く機会もなかったのだが、いつしか姿が見えなくなっていた。短期バイトだったみたい。
あれから約3年。どうしてるかな?
