目視ミスゼロ・作業者1名削減——タイ現地物流センターの改善術
この記事を読むと、こんな課題の解決策のヒントが得られます
● 多種多様なラベルや目視検品の限界に直面し、誰でもミスなく動ける
デジタル化の仕組みを模索している
● 保管スペースの逼迫や多重チェック作業による残業が常態化し、データ
管理によって労働生産性の向上させたい
● 言語や文化が異なる海外拠点において、作業者の判断に依存しない強靭
な運用体系を築きたい

1.サマリー
本記事は、大手電機メーカー系物流会社が運営する、タイ国内の電子部品物流センターにおける2つの業務改善事例をご紹介します。
入荷照合の目視ミスが繰り返され、固定ロケーション管理では保管スペースが逼迫し、出荷時の非効率な多重チェックが残業を生む——こうした課題に対し、OCR(光学文字認識)の導入とフリーロケーション管理+重複チェック機能の追加という2つのアプローチで改善を実現しました。

2.背景:海外物流拠点における品質管理の難しさ
製造業のサプライチェーンがグローバル化する中、タイをはじめとする東南アジア拠点での物流品質向上は急務となっています。
一方で、海外拠点には独特の難しさがあります。
・ サプライヤーが多国籍にわたり、ラベル様式・言語・フォーマットが
多種多様
・ 現地スタッフへの業務標準化・教育コストが高い
・ 「目視確認に頼らざるを得ない」属人的オペレーションが温存され易い
・ 倉庫スペースの拡大が難しく、在庫管理の非効率が積み重なる
こうした状況の中で、「いかに人手に依存せず、システムと仕組みで品質を担保するか」が問われています。
3.現場で起きていた課題:目視照合ミスと保管スペースの逼迫
今回の事例の舞台は、タイ国内の工業団地に立地する電子部品物流センターです。国内外のサプライヤーから納品された電子部品の入庫・検品・仕分け・保管・ピッキング・荷揃え・出荷を一貫して担っています。
課題(1):入荷照合の「目視チェック」によるミスの繰り返し
改善前の入荷作業は3名体制で運用されていました。ラベル貼付者がPart No.を確認してラベルを発行・貼付し、検収者が目視でPart No.と数量をチェック、入荷スキャン担当者がQRラベルをスキャンして仕分けるというフローです。
この運用には、構造的な問題が3点ありました。
問題① サプライヤーによってラベルの様式が多種多様で、確認箇所がわかりづらい
問題② 荷主のPart No.とサプライヤーのPart No.が混在しており、目視での読み替えが必要
問題③ 照合をすべて目視で行うため、時間・労力がかかり、見間違いが発生しやすい
実際に過去、同一の目視チェックミスが年間4件発生。返品コストや顧客満足度への影響が問題視されました。
課題(2):固定ロケーション管理によるスペース逼迫と非効率な出荷チェック
別ラインの部品では、2つの問題が同時に発生していました。
問題④ 「決まった棚・場所に保管する」固定ロケーション運用では、入荷量が増えるとオーバーフロー品が発生し、Part No.・数量・入荷日・ロケーションの4項目を紙にマニュアル記入する必要がありました。記入ミスのリスクが常につきまとい、管理工数も膨らんでいました。
問題⑤ 出荷時には、ロットNo.の重複読み取りを防ぐシステム機能がなかったため、過剰・過少出荷防止のためにピッキング・荷揃え・梱包時と3回の目視チェックを行う運用になっており、これが残業時間増加の一因となっていました。
4.ソリューション:2つのアプローチで「人の判断」をシステムに置き換える
▮ なぜ既存の運用では解決できなかったのか
入荷照合については、ラベルのフォーマットをある程度統一するサプライヤーマニュアルの整備は2020年に実施済みでした。しかしそれだけでは根本解決にならず、「照合そのものをシステムで行う」仕組みが必要だという結論に至りました。
出荷チェックについても、「目視でダブルチェックを続ける」限り、ミスリスクとコストの両方を同時に解消することはできません。人的チェックをシステムに代替させる発想の転換が求められました。

改善(1):OCR(光学文字認識)の導入
「入荷照合の目視チェックによるミスの繰り返し」(課題1)に対し、HHT(ハンディターミナル)へのOCR機能搭載を採用しました。
OCRとはラベルに印刷された活字を画像として読み取り、テキストデータとして認識する技術です。バーコードがないラベルでも、サプライヤーのPart No.をシステムが自動的に読み取れるようになります。
改善後の入荷フロー:
ⓐ作業者がHHTをサプライヤーラベルにかざし、OCRでPart No.を
自動読み取り
ⓑシステムが商品マスターを参照し、荷主のPart No.へ自動変換・照合
ⓒ一致すれば「OK」、不一致ならば「NG」がHHT画面に表示
ⓓ荷主ラベルのQRコードをスキャンし、入荷データを確定・転送
この方式により、検収者による目視チェック工程そのものが不要になりました(ECRS改善:排除)。
3名体制が2名体制に移行し、1名の削減を実現しています。
検討開始から本格導入まで約1年、当社の物流技術部門・荷主・システム会社の三者が連携してスケジュール通りに推進しました。
導入後もOCRが読み取れないケース(手書きラベル・曲がったラベル・特殊フォント等)が一部発生しましたが、荷主を通じてサプライヤーへ改善要請を行い、OCR読み取り率を99.2%(HHT導入直後)→ 99.8%(HHT導入2年後)に引き上げました。

改善(2):フリーロケーション管理+重複チェック機能の追加
「固定ロケーション管理によるスペース逼迫と非効率な出荷チェック」(課題2)に対し、2つの対策を実施しました。
対策A:フリーロケーション管理への移行
固定ロケーション運用を廃止し、どの棚にも柔軟に保管できるフリーロケーション管理を導入しました。
入荷時はロケーションコードをスキャンしてから製品バーコードをスキャンするだけで保管登録が完了し、移動時もHHTで両ロケーションをスキャン・数量を入力するだけでシステムが自動更新します。
マニュアル記入によるオーバーフロー管理は完全に不要になりました。
対策B:ロットNo.重複チェック機能の追加
自社システムに同一ロットNo.の重複読み取りを検知するアラート機能を追加しました。
誤って同じリールを二重スキャンした場合、即座にHHT画面へエラーが表示されます。
これにより、3回実施していた目視確認のうち2回が不要となりました。
当社の物流技術部門・情報システム部門及び荷主の三者が連携し、検討開始から1年半後に本格運用を開始しました。
5.具体的な効果:コスト・品質・業務効率の三方よし
改善(1):「OCR導入」の効果

1箱あたりの照合時間も平均4.6〜4.7秒短縮(内箱単位:11.5秒→6.8秒)され、日常業務の負荷も大幅に改善しました。
改善(2):「フリーロケーション管理+重複チェック機能」の効果


オーバーフロー品は運用開始以降ゼロを継続。スペース活用効率が飛躍的に改善されました。
6.横展開・応用可能性:こんな企業・課題に有効です
今回の2つの改善アプローチは、以下のような状況に置かれた企業・物流担当者に特に有効です。
OCR導入が効果的な場面:
・ 複数サプライヤーからの仕入れがあり、ラベル様式が統一されていない
・ バーコードのない旧来のラベルが混在している
・ 入荷照合を目視で行っており、ミスや工数の削減を検討している
フリーロケーション管理が効果的な場面:
・ 在庫品目数・入荷量の変動が大きく、固定棚では対応しきれない
・ オーバーフロー品の管理に手間がかかっている
・ 入出庫のたびにロケーション確認でロスが発生している
電子部品に限らず、食品・日用品・工業部品など、多品種少量管理が求められる倉庫全般に適した手法です。
また、今回は海外拠点(タイ)での事例ですが、国内倉庫はもちろん、同様のラベル多様性・スペース課題を抱える拠点であれば業種を問わず応用可能です。
7.まとめ:現場改善は「仕組み」と「関係者との連携」で成り立つ
今回の2つの改善事例に共通しているのは、以下の3点です。
・ 課題を数値で把握し、根本原因を分析する
(ミスが4件→「なぜ目視に頼るのか」へ)
・ 人の判断をシステムに置き換える
(OCRによる照合、重複チェック機能)
・ 荷主・サプライヤー・IT部門など多様な関係者と連携して実現する
特に海外拠点での改善は、現地スタッフと本社のノウハウを組み合わせることで、より大きな効果が得られます。「海外だから品質に妥協が必要」という発想を覆す事例として、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。
当社では、こうした「物流の課題を多面的に整理し、関係者全体を巻き込んで解決する」ノウハウを積み重ねてきました。コスト・品質・業務効率の三方よしを実現する物流改善を、ぜひご一緒に検討しませんか。
8.お問合せ
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