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HANAのJISOOちゃんとNoNoGirlsに学ぶ理想の日本語学習環境

HANA Official siteに、ロゴや写真を特別に利用できる例として、「アーティストの写真やグループのロゴ等を、アーティストを応援することを目的としてSNSに投稿すること」とありましたので、HANAの応援のために、写真を使わせていただきます~。

こんにちは。日本語教師のはやしえみです。
前回はJISOOちゃんの日本語能力の高さについて、私の学生は文法の正確さや語彙の豊富さ、漢字の読み書きのことを語っていましたが、それだけではないよーというお話をまとめました。
https://note.com/maturibayasi78/n/n5e2e04a19600?sub_rt=share_pw

JISOOちゃん、本当に日本語が上手です。

天性の歌声が魅力的でずるいほど(ちゃんみな談)なのに、性格はふわふわ(メンバー談)。だけど、完璧主義で実は根性もありそう。私もすっかりファンになりました。

このお盆休みに、No No girlsを一気見してみて、ますますJISOOちゃんのことが好きになったのですが、それと同時に、JISOOちゃんの日本語学習環境がとても勉強になったので、まとめて書いておこうと思います。

JISOOちゃんの日本語力が高いのは、天から与えられた語学能力の高さと本人の努力!それは大前提なんですが、それに加えて、学習環境が理想的だったのではないかというお話です。

これから外国人を受け入れる会社や自治体にとってもとても参考になると思うので、またまた長くなりそうですが、読んでいただければと思います。

JISOOちゃんの日本語が上手になった理由、それは本人の能力と努力に加え、「与えられたタスクがよかったこと」と、「日本語学習環境がよかったこと」にあると思っています。

タスクのゴールがはっきりしている上に、学習者の得意な内容だった


オーディション番組の3次審査はグループで与えられた課題曲をふりつけ付きで歌う。4次審査では3人一組で、曲を作ってそれを披露するのように、審査ごとに課題(タスク)が与えられていました。

オーディション参加者たちは、まずはどのパートを歌うかを話し合って決めます。希望が重なってしまった場合は、話し合ってどちらが歌うか決める調整をしていました。調整や交渉は高いコミュニケーション能力を必要としますので、もしかしたら初めての課題曲では、JISOOちゃんは希望どおりのパートを歌えていなかったかもしれないなんて思ったりもします(わかりません。テキトーなこと言ってます)。それはともかく、どこを歌うかを調整して決めるというタスクはゴールが明確です。

次に、振付師から決められた振付を習います。JISOOちゃんは歌を専門にやってきた方で、ダンスはあまり経験がないとのことだったので、慣れない日本語で説明を聞きながら、振りを覚えていくのは大変だったのではないかと想像します。(ダンスは身振り手振りでも伝わるから、もしかして、ことばは関係ないのかな?)ですが、ここでも説明を聞いて、振りを覚えるという明確なゴールがあります。

4次のクリエイティブ審査では、3人で曲を作るという課題が与えられていました。JISOOちゃんが入ったグループはもう一人のメンバーMOMOKAちゃんとJISOOちゃんが作詞作曲経験者で、残りの一人が未経験者でした。

MOMOKAちゃん主導でどんな曲にしていくかを話し合っているシーンでは、音楽の専門用語が飛び交っていましたが、その語彙のほとんどがおそらく英語からの外来語(私の知らないことばばかりでした)で、JISOOちゃんは問題なく聞き取り、「そう思う」などと返答していました。一方、未経験の日本人メンバーはついていけていない様子で、MOMOKAちゃんができるだけ専門用語を使わないで、わかりやすく説明しなおしているのが印象的でした。

タスク達成型の授業でよく言われる、「学習者の持っている知識全部を使って課題を達成する」とはこのことだというシーンでした。明らかに日本人メンバーのほうが日本語力が高いのに、タスク達成のためのコミュニケーションはJISOOちゃんのほうが取れている。お互いに得意なところ、苦手なところを探り合い、補い合って課題を達成していく。そのコミュニケーションにより、日本語が上達していくのだということが可視化されたシーンだったと思います。

そして、この審査でも曲を作り上げる、それを録音する、振付を考える、審査員の前で披露するなど、ゴールが明確です。

JISOOちゃん自身はもしかしたら意識はしていなかったかもしれませんが、一つ一つのタスクをクリアするたびに、日本語でのやりとりに自信がつき、次のタスクに向かうモチベーションになっていたのではないかと思います。

やはりタスクのゴールを明確にし、タスク達成を学習者自身が感じられるような活動が重要なのだと思いました。

周囲の人が学習者の母語やわかる言語で話してくれる


番組にはスタッフが本人にインタビューをしている映像もあるのですが、その中に、日本語でのコミュニケーションについて聞いているシーンがありました。それに対して、JISOOちゃんは「わからないときは、他のメンバーが韓国語や英語で教えてくれるから大丈夫」と答えていたことが非常に印象的でした。

実際、オーディション参加者達はJISOOちゃんのことを「オンニ(韓国語でお姉さん)」と呼んでいて、練習中のふとした場面で韓国語で話しかけているシーンも多数見られました。

やっぱり、K-pop人気の影響なんでしょうか?私が20代のころには、韓国語を理解し、積極的に使う人はこんなにたくさんはいなかったように思いますが、彼女たちの中には自然に日本語の中に韓国語の語彙を混ぜて話している人もいました。そういえば、クリエイティブ審査で、韓国語の語彙を歌詞に入れたメンバーもいましたっけ。

学習者の周りの人が母語やわかる言語で話してくれることのメリットはいろいろあるのですが、ここでは2点取り上げます。

一つは、学習動機が高い瞬間にインプットできるチャンスが広がるということです。コミュニケーション時、日本語でやりとりをしていて「意味がわからない」というのは、ほとんどの場合その意味を知ることが一番必要で、知りたい気持ちが高まる瞬間です。つまり、学習動機が最も高いときと言えます。その瞬間に、さっと意味を教えてくれる人がいれば、教科書で覚えることの何倍もの浸透力で記憶に定着していくことでしょう。JISOOちゃんはグループで練習しているときに、わからないことがあっても、その瞬間に韓国語や英語で説明してくれる仲間に恵まれ、語彙や表現をぐんぐん獲得していったのだと思われます。

もう一つは、自分の母語やわかる言語を話す人がいることが心理的安全性の確保につながるということです。海外で寂しいとき、不安な時に、自分がわかることばを話してくれる人がいる。そのこと自体が安心感につながり、リラックスさせてくれるというのを経験したことがある人も多いのではないでしょうか。

自分のわかることばを話してくれるという親しみが、人間関係をさらに深め、日本語学習によい影響を与えたのではないかと思います。5次審査(だっけ?)で、JISOOちゃんが泣いてしまったとき、ちゃんみなさんが「他の先生があなたに言ったのはこういう意味だよ」、「あなたはあなたらしくいればいいよ(意訳)」というようなことを韓国語で説明していました。たとえ日本語の説明で聞き取れていたとしても、あの瞬間に韓国語で話してくれる人がいることの安心感はどれほどだったかと思います。

日本語の間違いを周りが好意的に受け取ってくれる


JISOOちゃんは本当に正確性の高い日本語を話しますが、100%「間違いがない」ということはありません(当たり前のことです)。ただし、意味が通じないとか、意味を誤解させてしまうということはないので、コミュニケーションに支障をきたすことはありません。

でも、正直に言うと、形式の間違いはなくても、待遇等で誤解を与えてしまうような表現を使っている場面はありました。私はJISOOちゃんと同じ言葉遣いをして、日本人に怒られている学生を見聞きした経験があるので、内心ヒヤヒヤししてしまいました。

でも、そんな時、JISOOちゃんの周りのメンバーは「なんでそんな言い方するの?」、「失礼だ!」という反応は一切せず、好意的に受け止めている様子が見られたのです。本当に驚きです!(外国人の日本語に怒ったり、笑ったりする日本人に爪の垢を煎じて飲ませてやりたい!)

例えば、私だったら、「わかりますか」と言う場面で、JISOOちゃんが「みなさん、わかっていますか」と言うシーンがありました。「わかる」と「わかっている」の使い分けは難しく、私が教えてる留学生にもそう言うべきでない場面で「わかっていますか」と言ってしまう人がいます。

日本語ネイティブのみなさんなら、どんな時、「わかっていますか」を使いますか?

知ってて当然、当たり前のことを確認する時、もしくは「わかってるのに、何でそんなことをするの?」と責める時、「わかってる?」と言いませんか?

本当に「わかるかどうか」を知りたい時、「わからないなら教えよう」という場面ではおそらくほとんどの方が「わかりますか」と言うと思います。

そういう場面で「わかってる?」と聞かれたら、カチンとくる人もいるんじゃないでしょうか。

でも、JISOOちゃんが「わかってますか?」と言った時には、周りの女の子たちが「オンニ、ドヤってる!」、「ドヤ顔かわいい!」、「わからないから、教えてくださーい!」などと笑っていて、誰一人「そんな言い方ないんじゃない?」という人がいませんでした。

もちろん内心不愉快だけど、それを見せなかった可能性がないというわけではありません。ですが、私が見る限りみんな笑って受け入れ、人間関係が悪くなっている様子はありませんでした。 

また、別のシーンではJISOOちゃんが聞き取れなかったことを、聞き返すのに、「あぁっ?」と言っている場面もありました。これは韓国人だけでなく、東アジアや東南アジア出身の日本語学習者にもみられる言い方です。日本語なら、「えっ?」と聞き返すとき、多くの国では「あぁっ?」と言うんです(日本語だとけんか口調に聞こえますね)。私も初めて学習者からこれを言われたときは、びっくりしました。

そのシーンでは、JISOOちゃんが「ああっ?」と言った瞬間、周りのみんなが笑いながら、「オンニ、怒らないで!」、「ごめん!ごめん!」と言っていました。このやりとりで、JISOOちゃんは嫌な思いをすることなく、韓国の言い方で聞き返しをすると、日本人には怒っていると受け取られることを学んだのではないかと思われます。

ここに書いた「間違い」は実は日本語学習者にとって一番難しい部分でもあります。言語形式は間違っていないし、意味は通じるので、一般的に間違いとは受け取ってもらえず、「失礼な言い方」だと捉えられるものです。日本語の教科書的には「使い間違い」なのに、日本語ネイティブには「間違い」と受け取ってもらえず、「人格の問題」にされてしまう危険な「間違い」とも言えます。ともすると、人間関係を壊してしまう可能性もあります。実は私の教えている学生の中にも丁寧に話しているつもりが、無意識に相手を怒らせた経験から、話すのが怖くなったという人がいます。

誤解されるような表現を使っても、「嫌な言い方」ではなく、「冗談を言っている」と受け取ってもらえるのは、JISOOちゃん自身のやさしい性格と、築き上げた信頼関係のおかげだと思います。でも、それってJISOOちゃんだけがすごいことなんでしょうか?私にはJISOOちゃんのことばを受け入れている周りのNo No girls達の力も大きいように思えるのです。

日本語学習者全員にJISOOちゃんのような性格になれとか、受け入れてもらえるような人間関係を築きなさいというのは酷な話です。でも、学習者の周りの人が「失礼だ」と感じる日本語に出会ったとき、不愉快になる前に、実はこれは日本語の難しい部分なんじゃないかと立ち止まることは、そんなに難しいことではないと思います。日本語の難しさって、動詞や形容詞の活用や助詞のような文法の話だけじゃないんです。いや、むしろ上記の例のほうが難しかったりするんです。

まとめ


JISOOちゃんを通して、理想の日本語学習環境について考えてみました。

まず、学習者に「やってほしいこと」と、「ゴール(出来上がり)を明確にして伝えること」が肝要です。そして、できたことできなかったことをフィードバックするのも忘れないようにしましょう。

そして、周りの人が学習者の母語やわかることばも使う!これにより、学習動機が最も高い瞬間にインプットしたり、心理的安全性を確保したりすることができます!

また、学習者の語用のまちがい(言語形式は間違っていなくても、待遇表現やニュアンスが変わってしまう表現)に寛容になること。これは学習者の性格やお互いの人間関係に頼らずとも、私たち日本語話者が日本語の特徴を学び、意識することで達成できるはずです。

 これらにより、本人の持って生まれた語学の才能と、努力が最大限に発揮された結果がJISOOちゃんの日本語力なんだと思います。

JISOOちゃんの日本語能力の高さは、HANA(No No girls)のメンバー(とスタッフのみなさん)のおかげとも言えるんじゃないかと思うんです。

 これから、外国人を受け入れる会社や自治体のみなさん、日本語学習の支援とは、日本語教材を買ってあげたり、日本語教室を開講することだけではありません(もちろん、それもやってね)。あなた自身が相手の言語を学び、相手の日本語に寛容になること。そのことをJISOOちゃんが改めて教えてくれました。カムサハムニダ~。

長い文章を読んでくれてありがとうございました。

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