見出し画像

キルトピーストケラウノス#01

#創作大賞2026 #ファンタジー小説部門


【あらすじ】
CIA日本支部最強の諜報部員”ハト”は、
極秘任務中に致命傷を負い、
生と死の狭間で謎の老人”ユピテル”と出会う。
老人は、自らをゼウスと名乗り、
「世界を平和へ導け」という条件と引き換えに
神の力を授けた。
雷を操り、あらゆる兵器を凌駕する力を得たハトは、テロリストや、巨大犯罪組織を
次々と制圧していく。
しかし、絶対的な力は新たな脅威を呼び覚ます。
神を敵視する者、力を奪おうとする者、
そして世界の秩序そのもの。
これは、一人の殺し屋が”神”となり、
世界平和という最大の使命に挑む
SFアクションである。


〜ゼウスが人間の願いに耳を傾けたなら、
 すべての者が滅びるだろう。
(人間は)人類に有害な多くのものを
 要求するからである。〜

[ 出典 ]エピクロス『断片』
(紀元前4~3世紀・古代ギリシア
 ヘレニズム期 哲学者、前341~前270)




-2049年9月2日 日本 東京-
黒く濡れた路面が、
派手に輝くネオンを映し出している。

大股で歩く黒のローファーに踏みつけられた
水溜まりの中の世界は、
水飛沫と共に暗闇に弾けた。

夜は少し肌寒さを感じるようになってきた季節。
黒いシングルスーツに身を包んだ男が、
咥えタバコをふかしながら
繁華街をズンズンと進んでいる。

派手に開いたシャツの胸元からは
細めの金のネックレスが2本覗いており、
純粋なアジア人がやったらいかにも
品の無いような出立だが、
いやらしく見えないのは
ヨーロッパ系の血筋が混じった
顔立ちだからだろう。

遠巻きに見ても目立つ整った顔立ち。
ホリの深い顔に綺麗な二重瞼、
ドンと主張してくる高い鼻。
薄い唇の周りには、
ワイルドさと品を備えた口髭が蓄えられていた。

無造作に伸びた少し癖のある長い髪は、
無理矢理後ろで固めてオールバックにしているが、
少し崩れているところが色気を帯びている。

そんな怪しげな雰囲気を纏った男に、
キャッチの男達は目を背け、
水商売の女達は囁き合いながら
興味津々の視線を飛ばした。

しかし、当の男はどこ吹く風と
ツカツカ歩いて通り過ぎる。

男は咥えた煙草を摘んで口から離すと、
大きく息を吸い込み、
空に向かって紫煙を吐き出した。

薄い煙はあっという間に夜空に溶け、
両脇に構えるビルに見下されているような
感覚を覚える。

電子タバコや、電子大麻、携帯シーシャが
当たり前となった昨今。
紙タバコを吸ってる人間は絶滅危惧種である。

男は "seven star"  の文字が、
燃えてしまいそうなほどに
縮まった煙草を、格好よく路地裏に向かって
ぴんと弾き飛ばし歩みを進める。

しかし、クルクルと回りながら
飛んでいったタバコは
ビルの谷間を吹き抜けるビル風により、
男の元に帰って来て手の甲を直撃する。

「あっつっ!!」男は手を振りながら痛みを
和らげようとしたがなんともドジである。

さする手の甲には、鳥が羽根を広げて丸い形状に
なった、家紋のような刺青が入っていた。

男はブツブツと悪態を吐きながら
スマートフォンを取り出すと、
地図アプリで住所を確認し、また歩きだした。
都会では大通りと裏路地では見えない壁があり、
別世界の様な雰囲気を醸し出している。

ビルの谷間をしばらく歩くと、男はとある古びた
雑居ビルの前で足を止めた。
「ドラゴンビル、、、だっさい名前だねぇ」
黒ずんだ壁を見上げながら独りごつ男。

裏に回ると、フェンスに囲まれた
非常階段にたどり着く。
フェンスには、建物の古びた雰囲気には
似つかわしくない
最新式のデジタル錠が設置してあった。

男は周囲をさっと見廻すと、
懐を弄り、USB型のデジタル錠破壊ガジェット
(USB KILLER)を取り出した。

それをデジタル錠のポートに差し込むと、
束の間ランプが点滅しピーという機械音の
祝福と共にあっさり解錠した。

「技術が発達しすぎるのもいかがなものかね」
鍵の開錠はほとんどがデジタルとなった昨今、
相手によっては南京錠の様な、
アナログな物がよかったりするのであった。

ゆっくり扉を開けると、敷地内に足を踏み入れる。
男は錆びついた階段を
音も立てずに慎重かつ素早く登っていく。

この男にとってそれは、雑作もない事のようで、
まるで平地を歩くように余裕を持って
軽やかに登っていく。

目的の階は最上階の20階だが、
その程度では息のひとつも上がることはない。

19階に差し掛かった時、20階の踊り場に
2体の警備ロボットが配置されているのに気付き、
すっと足を止める。

ロボットはロシアのロボット産業会社
"ROBTEC社"が数年前に売り出して以来
世界中で爆発的大ヒットを飛ばしている
人型警備ロボット"The Guardian01990 "
通称 トリグラフ"である。

トリグラフは、高度な人工知能を搭載し、
ボディに取り付けられたカメラやセンサーで、
炙り出した不審者が有害か無害かを
自ら判断し対処する。

接近戦となると全身を防弾素材で覆われた
屈強なボディで押さえつけ、距離が出来ると
備え付けられたテザーガンで捕縛する。

犯罪者からしたらまさに
恐怖のセキュリティロボットで、
実例として、犯罪の絶えなかった街に
試験的に5台導入し
パトロールさせた結果一ヶ月のうちに
50人の犯罪者を逮捕して
街の犯罪が90%減ったという。

そんな、守護神とも呼べるロボット
"トリグラフ"が二体入口を固めているという、
一見鉄壁の守りを構える扉だった。

しかし、さすがの守護神でさえ、
この男の前ではその能力を遺憾無く
発揮する事は難しかった。

男は19階の踊り場の手摺の上に乗ると、
跳躍して20階の踊り場の手摺を掴んで登った。

手すりを掴んだ時に少々音が出たが、風の音に
掻き消されて、反応される事は無かった。

静かに降り立った男は、ジャケットの懐から
ゴルフボール程の黒い球体を取り出すと、
トリグラフの方に転がす。

2体の顔がボールの方に向いたが
しばらく見つめると
異常無しと判断したのかまた正面へと向き直った。

「あばよ、ポンコツ君」
男が手にしたスイッチを押すと、
闇に溶けた球体は開き、光と振動が発生した。

トリグラフは2体とも
前を向いたまま痙攣している。
男が投げた物は電子手榴弾という代物で、
妨害電波と電撃を放ち、ロボットの動きを
止める機能を持つ現代の兵器であった。

しかしトリグラフの前では電子手榴弾も
暫しの足止めにしかならないと知っている男は、
すぐさま、人間で言う延髄の部分に当たる
電源ユニットを破壊する為に
2体の後ろに回り込む。

男は素早く背後を取ると
1体の首にナイフを差し込み、
柄に付いたスイッチを押す。
すると、トリグラフは大きく痙攣し、
煙を出して倒れ込んだ。
ナイフから電気が流れたのだ。

男が、もう一体も破壊しようと
身体を反転させた時、
突然腹部に衝撃を受けて吹っ飛ばされた。


最後まで読んでいただき、
本当にありがとうございます。
「面白かった」「少しでも刺さった」
と感じていただけたら、
ぜひ“スキ”とフォローで
応援していただけると嬉しいです。
あなたの反応が、次の一篇を書く力になります。
#創作大賞2026 #ファンタジー小説部門

いいなと思ったら応援しよう!