#131:【パワハラの被害】「証拠がない」という、たった一言の絶望
証拠がない。それが、パワハラ被害者を最も追い詰める一言だ。
会社でパワハラを受けたとき、あなたはどうしているだろうか。
耐えていないだろうか。
その「耐える」という選択は、何も生まない。
証拠が残らないからだ。
声を上げなければ、何も起きなかったことになる。
それが、この国の労災制度の、冷たい現実だ。
会社は、パワハラで社員が精神疾患になっても、絶対に労災だと認めない。
なぜか。
認めた瞬間、その会社は「ブラック企業」になってしまうからだ。
たった一件の認定が、その会社の何十年分の評判を、一気に塗り替えてしまう。
そのリスクを、会社は何より恐れている。
今の時代、ブラック企業という烙印を押された会社で、誰が働きたいと思うだろうか。
就活生は、応募する前に必ず会社のホームページを見る。
SNSや口コミサイトも、当然チェックする。
そこに「パワハラ企業」だと書かれていたら、ブランドイメージは一瞬で崩れる。
採用にも、株価にも、取引先からの信用にも響く。
会社にとって、ブランドを守ることは、社員一人を守ることより、はるかに優先順位が高い。
社員一人の人生より、企業のイメージのほうが重い。
それが、この国の会社というシステムの正体だ。
だから会社は、パワハラがあっても絶対に認めない。
証拠がなければ、なかなか認められないのが現実だ。
言った言わないの水掛け論になった時点で、会社側の「ノーカウント」が確定する。
被害者の言葉だけでは、どれだけ叫んでも、届かない。
記憶も、感情も、証拠としては弱すぎる。
悔しさをどれだけ訴えても、紙の上には何も残らない。
泣き寝入りをしたくないなら、パワハラの場面は必ず録音してほしい。
そのときの言動こそが、唯一の証拠になる。
言葉だけでなく、声の大きさ、口調、間の取り方まで、すべてが証拠になる。
労災の認定率を上げるかもしれない、最後の武器だ。
決めるのは、会社ではない。
労働基準監督署だ。
会社の言い分でも、人事の判断でもない。
社内の力関係とは無関係に、外の機関が事実を判断する。それだけが、唯一の希望になる。
私自身がどうしたか、話そう。
私は、部下からのモラハラに耐えられず、会社の相談窓口に相談した。
どの会社にも、パワハラ防止法によって相談窓口を設置する義務がある。
これは法律で決まっていることだ。
私はその制度を信じて、勇気を出して窓口の前に立った。
正直、相談する前は、何度も足が止まった。
このことを話したら、自分の立場が悪くなるんじゃないか。
そんな不安が、ずっと頭の中にあった。
何度も引き返しそうになったが、それでも、これ以上は無理だと自分に言い聞かせて、窓口のドアを開けた。
ここで、絶対に覚えておいてほしいことがある。
相談した「日付」だ。
私はそれを、覚えていなかった。
当時は、まさかこの先こんなことになるとは思っていなかった。
だから、メモすら残していなかった。
今思えば、それが最初の、そして最大の後悔だ。
あの日付さえ書き残していれば、後の主張はもっと強くなっていたはずだ。
たった一行のメモが、後にどれほどの重みを持つか、当時の私は知らなかった。
相談の結果、モラハラをしていた社員は外された。
ここまでは、パワハラ防止法どおりの対応だった。
正直、ほっとした。
これで終わると、そう思っていた。
窓口の対応は早かったし、会社の制度は機能していると、信じられた瞬間だった。
肩の荷が下りたような感覚すら、あったほどだ。
しかし、そのモラハラ社員の親が、会社の取締役に就任した。
その瞬間、すべてが変わった。
会社は、私を排除する方向に動いた。
昨日まで普通だった空気が、急に変わったのを覚えている。
挨拶の返ってくる回数が減り、会議の予定から名前が外れていく。
小さな変化の積み重ねが、確実に私を孤立させていった。
誰も何も言わないのに、自分の存在だけが薄くなっていく感覚があった。
パワハラ防止法を無視し、取締役という権力に、会社自体が屈してしまったのだ。
これは、明確な法令違反だ。
私はこの経緯を労働局に申告し、調査が始まった。
だが現実は厳しい。
パワハラそのものには、罰則がない。
訴えても、誰も本気で調査してくれないことも多い。
申告した後も、結果が出るまでの時間は、ただ重くのしかかってくる。
何も進んでいないのではないかという不安と、毎日付き合うことになる。
連絡を待つだけの日々は、想像以上に心をすり減らす。
それでも、申告したという事実だけは、誰にも消せない。
今、パワハラ被害に遭っているなら、私からひとつだけ伝えたい。
まず、証拠を残してほしい。
パワハラの場面を録音すること。それが、何より強い証拠になる。
次に、会社の上司、そして人事に相談してほしい。
いつ、誰に、どんな内容を相談したか。
これを必ず記録に残してほしい。
スマホのメモでもいい。メールでもいい。形に残すことが、すべてだ。
記憶は薄れていくが、記録は薄れない。
未来の自分を守るのは、今のあなたが残す記録だけだ。
あの日の私のように、後悔だけはしてほしくない。
それでも会社が何も対応しないなら、それはパワハラ防止法違反だ。
そのときは、労働局に相談し、国に動いてもらえばいい。
あなた一人で抱え込む必要はない。
法律は、ちゃんとあなたの側に立っている。使わなければ、ただの紙切れになるだけだ。
会社で働いていれば、理不尽なことは山ほどある。
私自身、30年働いた会社から、理不尽な扱いを受けた。
それでも、決して声を上げなければ、何も変わらなかった。
黙っていれば、何事もなかったことにされる。それが、一番悔しいことだった。
30年という時間をかけてきたからこそ、最後まで簡単には引けなかった。
でも、私は決めた。
絶対に、泣き寝入りはしない。
あなたは、今も耐えているだろうか。
それとも、もう一歩を踏み出せているだろうか。
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