【ショートショート】眠れぬ夜の物語 第二夜 #161 再会の意味
電車の扉が開く。
(あっ)
それは、十年前に勤めていた職場の同僚だった。
よくしてもらった人だ。向こうも気づいたらしい。
朝のラッシュ。声を交わす暇もなく、微笑み合っただけですれ違う。
ほんの一瞬だったのに、妙に心に残った。
*
昼休み。
「お久しぶりです!」
背後から声をかけられ、振り向く。
昔、別の職場で仲良くしていた後輩だった。
「びっくりしました。こんなところで会うなんて」
聞けば、近くの職場に戻ってきたらしい。
「なんか……会えてよかったです」
そう言って笑った顔は、少しだけ変だった。
うれしそうなのに、目だけが笑っていなかった。
*
数日後。
今度は駅前のコンビニで、学生時代の友人に会った。
卒業以来だ。
「おまえ、変わらないな」
そう言って肩を軽く叩かれた。
その手が離れたあと、なぜか胸がざわついた。
懐かしい。なのに、落ち着かない。
*
四月に入って、こんなことが続いていた。
もう会うこともないと思っていた人たちに、次々と会う。
誰かが仕組んだはずもない。けれど、偶然にしては出来すぎていた。
みんな、妙にやさしい。
昔は厳しかった人も、気まずく別れた相手も、なぜか今は、会えたことを喜ぶみたいに笑う。
その笑顔を見るたびに、何かが少し遠のいていく。
*
「次は、あの男ですね」
天上で、天使が名簿をめくった。
神様はうなずく。
「まだ気づかんか」
「はい。ほぼ終わりました。」
神様は、名簿の端に目を落とした。
「そうか」
天使が尋ねる。
「残りは?」
神様は、静かに答えた。
「三日だ」
(おしまい)
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いつも読んでいただき、本当にありがとうございます。
物語があなたの癒しになれば幸いです。
チップはご無用です。一緒にドキドキしてくれた思いを伝えてくだされば・・・。それがうれしいです。