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【ショートショート】眠れぬ夜の物語 第二夜 #161 再会の意味

電車の扉が開く。

(あっ)

それは、十年前に勤めていた職場の同僚だった。

よくしてもらった人だ。向こうも気づいたらしい。

朝のラッシュ。声を交わす暇もなく、微笑み合っただけですれ違う。

ほんの一瞬だったのに、妙に心に残った。

昼休み。

「お久しぶりです!」

背後から声をかけられ、振り向く。

昔、別の職場で仲良くしていた後輩だった。

「びっくりしました。こんなところで会うなんて」

聞けば、近くの職場に戻ってきたらしい。

「なんか……会えてよかったです」

そう言って笑った顔は、少しだけ変だった。
うれしそうなのに、目だけが笑っていなかった。

数日後。

今度は駅前のコンビニで、学生時代の友人に会った。

卒業以来だ。

「おまえ、変わらないな」

そう言って肩を軽く叩かれた。

その手が離れたあと、なぜか胸がざわついた。

懐かしい。なのに、落ち着かない。

四月に入って、こんなことが続いていた。

もう会うこともないと思っていた人たちに、次々と会う。

誰かが仕組んだはずもない。けれど、偶然にしては出来すぎていた。

みんな、妙にやさしい。

昔は厳しかった人も、気まずく別れた相手も、なぜか今は、会えたことを喜ぶみたいに笑う。

その笑顔を見るたびに、何かが少し遠のいていく。

「次は、あの男ですね」

天上で、天使が名簿をめくった。

神様はうなずく。

「まだ気づかんか」

「はい。ほぼ終わりました。」

神様は、名簿の端に目を落とした。

「そうか」

天使が尋ねる。

「残りは?」

神様は、静かに答えた。

「三日だ」

(おしまい)



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一条 詩紋 いつも読んでいただき、本当にありがとうございます。 物語があなたの癒しになれば幸いです。 チップはご無用です。一緒にドキドキしてくれた思いを伝えてくだされば・・・。それがうれしいです。