【読書レビュー】つみたて投資の終わり方、資産を増やすより難しい「下り方」の最適解、ポートフォリオの管理を変えた話
私たちは「資産をどうやって増やすか」については熱心に学び、実践し、何年もかけて積立投資の堅牢な習慣を身につけていきます。
しかし、いざその山を登りきった後、どのように「下りる」べきか、その出口戦略について真剣に考える機会は意外と少ないのではないでしょうか。
私が本書、カン・チュンド氏の著書『つみたて投資の終わり方:100年生きても大丈夫!人生後半に向けた投資信託の取り崩しメソッドを解説!』を最初に読んだのは、今から4年前の2022年のことでした。
2022年当時、私が出口戦略を考え始めた際の記事はこちらを参照ください。
この本は、私の資産運用に関する考え方の「基礎」になっている大切な一冊であり、非常に気に入っているバイブルのような存在です。
定年退職やFIREといった人生の転換点を見据えるにあたり、今回改めてこの名著を読み直し、現在の視点も交えてご紹介したいと考えました。
著者のカン・チュンド氏は、長年投資信託に特化した独立系ファイナンシャルプランナーとして活躍されており、現在はnoteやXでも精力的に本質的な情報発信を続けられています。
著者のカン・チュンド氏のnote:カン・チュンド|FPの知恵袋
著者のカン・チュンド氏のX:@4649kang
本書は、低コストの投資信託で積立投資を実践し、これからリタイアを迎えるような投資家に向けて、これまでタブー視されがちだった「投資信託の賢い取り崩し方」を徹底的に論理化した、まさに欲しかった一冊でした。
本書を読んで強く共感した、投資の「下り道」の難しさ
本書の核心にある「階段を下りる勇気、ありますか?」という問いかけには、何度読んでもハッとさせられます。
長年コツコツとお金を増やすマインドセットが習慣(強固な堅牢ルール)になっている人ほど、リタイアを迎える「Xデー」以降、資産を売却して使っていくフェーズ(下り)に移行した際、ファンド解約を躊躇したり、資産が減る恐怖に囚われたりしやすいといいます。
本書では、積立期と取崩し期を合わせて「生涯投資」と定義しています。
◆生涯投資 = 積立期 + 取崩し期
積立を止めることや、ポートフォリオを保守化することよりも、何より難しいのが「投資信託を売却すること」そのものです。
自分の身を削るような錯覚を覚え、お金を増やすマインドセットが解けない人は案外多いのです。
しかし、リタイア後は資産の多寡ではなく、その資産を賢く利用することにこそ価値が生まれます。
また、リタイア後のインカム戦略として「高配当株(個別株やETF)」を好む人も多いですが、本書ではその弱点として以下の二点を明確に指摘しています。
投資対象が偏ること(幅広い銘柄分散のインデックス型に比べ、大型バリュー株に偏在する)
インカムの大きさを投資家側でコントロールできないこと(配当額の決定権は企業や運用会社側にあり、自分にはない)
だからこそ、リスク資産を低コストなインデックス投資信託のみにスリム化し、管理と取り崩しのオペレーションを極力簡素化することが、気持ちの起伏を抑えて投資と健康的な距離を保つために最重要である、という主張には深く納得させられました。
自分のポートフォリオ管理を「金額」から「割合」へ変更した理由
2022年に初めて読んだ時も大きな衝撃を受けましたが、これから来る本格的な取り崩し期(FIRE後)を現実的に見据える今、私自身の資産管理に対するアプローチを大きく変える決断をしました。
元々、私のポートフォリオにおける現金(安全資産)の管理は、「生活費の1〜2年分」という具体的な「金額」をベースにロックする手法をとっていました。
しかし本書では、取崩し期において最も優先すべきは、安全資産とリスク資産の「比率(割合)」を一定に保つことであり、年末に総資産額を算出して取り崩し額を決定、年始に「リバランスを兼ねて取り崩しを実行する」という手法(トータル資産からの定率取り崩し)が推奨されています。
単に証券会社の「投資信託定期売却サービス」を使うだけでは、安全資産(預金など)に独自の仕事をさせることができません。
全資産のトータルから定率で引き出し、同時に「安全資産:リスク資産の比率」を元に戻すリバランスを行う。
これを徹底すると、相場が良い年は多めに取り崩し、暴落などでリスク資産が減った年は少なめに取り崩すというメリハリが自動的に効くようになり、資産の持続率が圧倒的に高まります。
比率を復元しながら取り崩すことで、初めて預金と投資信託間で資金が美しくスイング(循環)するようになるのです。
この合理性を再認識し、私もポートフォリオの管理を金額ベースから「全体に対する割合(比率)」による管理へと変更しました。
積立期からリバランスを実践することの意義
取り崩し期においてポートフォリオの比率を維持するための「リバランス」ですが、私はFIRE・リタイア前の積立期である現時点から、常にその比率調整をシミュレーションして考えています。
「ファンド価格がマイナス30%超となる暴落に遭遇しても、淡々とルール通りに定率売却を続けられるか」という重い問いがありますが、積立期に養ったリスクに対する耐性は、取崩し期でも確実に役に立つはずです。
私にとって、このような資産配分や比率のコントロールをあれこれ考えることは、一種の「趣味」のようなものなので、全く苦になりません。
むしろ、普段の積立期から当たり前のようにリバランスを実践し、リスクの制御を身体に染み込ませておくことで、将来の取崩し期が訪れても、市場の急落や急騰に惑わされず同じ姿勢を保つことができると考えています。
将来の取り崩し比率とシミュレーションについて
現在の私の計画では、いざ取り崩すフェーズに入った際の比率は、ひとまず「毎年4%(定率)」を基準に考えています。
ただ、本書でも「資産全体の期待リターン > 取り崩し率」であるべきと述べられている通り、4%のリターンを叶える資産配分が自分のリスク耐性に本当に合っているか、全資産の最大損失割合を著者の推奨する「25%程度」に抑えられているか、という精査は不可欠です。
本当に必要なFIRE後の生活費や、今後のインフレリスク、将来のライフイベントに伴う支出変動などを加味した、よりリアルな取り崩しシミュレーションについては、現在計算を重ねています。
この具体的なシミュレーション内容や支出の最適化については、長くなってしまうため、また今度の記事で改めてnoteにてご紹介したいと思います。
2022年に初めて出会ってから4年。
現役引退前のラスト5年間を生活と投資の「準備期間」としてポジションを保守化していくプロセスも含め、本書はやはり、私にとって「生涯の設計図」だと確信しました。
これからの資産形成後半戦を迎えるすべての人に、改めて強くおすすめしたい一冊です。
最後に著者のnote記事の中でも特にこの本と関連の深い2つを紹介したいと思います。
皆さんも是非一度読んで頂ければと思います。
よく読まれている記事です。
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