「夢は、大人だって見ていい」──モリエル・デスペラード、覆面の下に込めた“本当の叫び”【後編】
※この記事は、モリエル・デスペラードさんの人生ストーリー【後編】です。
前編では、夢を否定され続けた少年時代から、プロレスとの出会い、そして覆面レスラーとして再起するまでの道のりを描きました。
そして後編では、デビュー後に訪れた“評価されない苦悩”、プロレスと仕事の両立で直面した葛藤、そしてそれでもリングに立ち続ける理由に迫ります。
モリエル・デスペラード── 覆面の奥に隠された“本当の叫び”とは。
前編、「『芸人やるなら家を出ろ』——夢を奪われたモリエル・デスペラード。歯科技工士x覆面レスラーで再挑戦【前編】」はこちらからご覧になれます。
同期に抜かれても、自分を見失わないために戦う
初のタッグタイトル戦、初のメインイベント、初のユニット加入。
順調に見えたスタートだった。だが、同期は次々とベルトを手にする中、自分だけが“評価されない側”になっていく。
「メインから外されていく感覚が正直キツかったです」
SUGAMOプロレスが徐々に注目されはじめ、観客も増えていく中、自分だけが浮かび上がれない。
その“置いていかれる感覚”が、彼の心をじわじわむしばんでいった。
そんな中、初のシングルタイトル戦『偽WGP』が蘇ったのだ。
人生で初めて、シングルベルトをかけた挑戦。相手はグレート・CO・カーン。
相手としては不足がない、むしろ十分過ぎる強敵だ。
「歯科技工士の仕事も手につかないくらい、すべてを注ぎ込みました」
結果は敗北。
ただ、観客からは「一番面白かった」という声もあった。それでも彼は、 「ベルトを取れなかった。それがすべてだと思ってしまった」と、胸の内を明かす。
夢と仕事の両立—繰り返す退職と再起

プロレスへの情熱が強くなればなるほど、日常とのバランスが崩れていく。
「有給でやってるなら文句は言えないが、分かってるよな?」
当時働いていた会社にも、SUGAMOプロレスでの活動が知られてしまった。与えられた有休休暇の中で、大好きなプロレスをやっていただけなのに……少しずつ上司からの空気は冷たくなり、会社へ行きづらくなってしまった。
そして退職。
プロレスも仕事もうまくいかない。
そんなとき、知り合いから電気工事の仕事を紹介された。
「初めての現場仕事だったけど、挑戦してみようと思いました」。しかし、現実は甘くない。厳しい現場。しだいに心が壊れていった。
病院では「精神疾患」の診断が下された。
「頑張ろうと思った。でも……壊れました」
無念の退職。その後、紹介者との関係も完全に絶たれてしまう。
それでも、彼はまた立ち上がる。
専門学校時代の仲間からの紹介で、再び歯科技工士として再就職した。
「人間関係でダメになってきた自分だからこそ、その大切さにあらためて気づかされました」
家族、それぞれの距離感
プロレスをしていることを、母親にはずっと話していなかった。
だが、ある日ふと尋ねられる。
「そういえば……あなたプロレスやってるの?」
どうしてわかったんだろう……きっとSNSで気づいたのかもしれない。
また自分の楽しみを否定され、奪われてしまうのだろうか。母の言葉の一つひとつがチクチクした。
しかし、プロレスやっていることに関して母は何も言わなかった。 でも、応援の言葉はなかった。
「父は会場に来てくれます。母は興味もないから来ない。でも、それでいいんです」
もう、自分の人生は“自分のもの”だと思えるようになったから。
いつだって夢を語る大人でいたい

モリエル・デスペラードは過去の自分にこう言い聞かせた。
「ずっと挫折の繰り返しでした。年齢的にも最後の挑戦だと思ってます」。
夢を語れない大人が多い。恥ずかしいことは1つもない。
「今の社会は“夢を諦めること”が前提で作られてる」
大人だって夢を見ていい。夢を語っていい。それは強く伝えたい。
憧れだったプロレス、夢だったお笑い。
それらを融合させたお笑いプロレスの世界で、モリエル・デスペラードは生きている。
そして、もっと大きな夢を実現させるために走り続けている。
「生きてきたことが無駄じゃなかったと証明したい。そのためにも、なんとしてもベルトが獲りたい」
何かを最後まで達成した経験がない。だからこそ、大好きなプロレスの舞台で証明したい気持ちがある。
「僕には1つやりたいことがあるんです」。
自分がSUGAMOプロレスでベルトを巻き、社会でもっと有名になれば、夢を諦めてきた大人たちに勇気を届けられる。
その姿がきっと届く。そう信じている。
夢を諦めるために社会人になってしまうことが許せない。
「言いたいコトも言えないそんな世の中じゃ“POISON”っていうやつですよ。
人の夢を応援できない上司や会社は全部潰れてしまえ」
「俺たちのバカな姿を見て、“まだ生きてていいかも”って思ってもらえるなら、それが最高の価値なんです」
笑いたかったら、SUGAMOに来い
正直、生活は安定しているかもしれないが裕福ではない。安定が幸せとも思わない。
「SUGAMOにいる芸人さんたちは、本当に生き生きしている、人生を楽しんでいる」
どうせ生きるなら、人生楽しんだ者が勝つ。
「いい大人の悪ふざけって、結構楽しいですよ」
プロレスに、命をかけるわけじゃない。 でも、魂を込めて“真面目にふざけてる”。誰かの涙を、笑いに変えるために。
それがリングに立つ理由。
社会人として、「安定した収入を得ろ」「安定した生活をしろ」そんな意見を言う大人は多い。
でも、夢を語り、夢を追いかけ、心のままに泣いて、笑っている人生のほうが100倍楽しいはず。
人生がつまらないと感じている人がいるならば、これだけは伝えたい。
「笑いたかったら、SUGAMOに来い。笑わせてやるから」

【インタビュイー】
モリエル・デスペラード(SUGAMOプロレス所属)
X:https://x.com/Suzukigun_KING1
SUGAMOプロレス:https://x.com/sugamo2018
【インタビュー/執筆】
眞木優(ライター)
YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@urakaidouch
