【2026年3月号】 Reading Journal──私はこの本をこう読んだ
春ですね。
何かを始めたくなる一方で、
続けてきたことをただ続けることにも、意味があると思っています。
今月のReading Journalは、4冊。
文体も少しずつ試しています。
その違いも含めて、楽しんでもらえたらうれしいです。
📖 ホルヘ・ルイス・ボルヘス 『伝奇集』 岩波文庫

🔖心に残った一節
第一に、図書館は永遠を超えて存在する。世界の未来の永遠性を直接的な帰結とするこの真理を、いかなる合理的な精神も疑うことはできない。不完全な司書である人間は、偶然もしくは悪意ある造物主の作品なのだろう。
有名な「バベルの図書館」を読みたくて手に取った、ボルヘスの短篇集『伝奇集』。
ガルシア=マルケス『百年の孤独』と同じ鼓直さんの翻訳ということもあり、勢いで読んでみました。
正直、面白かったとは言えません。
よくわからなかった、というのが一番近い感想です。
でも、何か全篇に漂う不穏さというか危うさは感じ取れた気がします。
例えば「バベルの図書館」で語られる図書館は、私が知ってる図書館ではありませんでした。
人間の叡智が無限に積み重ねられた場所。
手が届きそうで決して届かない永遠と完全性を備えた空間。
優しく迎えてくれるような母性の象徴たる図書館が、崇高な存在として時に冷たく突き放してくるような、畏怖すら感じさせる厳格な存在として立ち現れてきます。
何度か読んで、ようやくその輪郭が感じられるボルヘスの迷宮。
その入り口で立ちすくんだ、そんな体験でした🌀
📖 網野 善彦 『無縁・公界・楽』 平凡社ライブラリー

🔖心に残った一節
そこにふれ、またとびこむと、外の勝負、戦闘とは関係なくなり、安全になる場所や人、またそこに手をふれ、足をふみ入れることによって、戦闘力、活力を回復しうるような空間や人間。
青木真兵『手づくりのアジール』で知った、「アジール」という言葉。
その原点とも言える名著・網野善彦『無縁・公界・楽』 を読みました。
(アジールとは、「時の権力の力が及ばない自由で安全な場所」のこと)
なぜそこまでアジールに惹かれるのか。
それはどこか生きづらさを感じる現代社会こそ、
本当の自由と安心が取り戻せる「拠り所」が必要だと感じたからです。
日本の中世では、人々はアジールに救われ、
その中で芸術や文化を育んできた。
子ども遊びの“陣地”では、追手はそこに入ることができない。
この不思議なルールは、人間が共生する上での原始的な知恵なのです。
私はそのアジール性を、「読書」という営みに受け継がせたい。
最後の最後は、本が人の自由や存在を守ってくれる。
そう信じています。
📖 加藤 秀俊 『独学のすすめ』 ちくま文庫

🔖心に残った一節
いまの日本の社会での教育の根本問題は、このような意欲づくりにあんまり貢献していないのみならず、むしろ、意欲を圧殺している
もはや学校には行かなくてもいいのではないか。
加藤秀俊『独学のすすめ』を読むと、そんな気持ちにすらなってしまう。
大切なのは、学ぶ意欲である。
意欲さえあれば、人は勝手に学ぶ。
私も大人になってはじめて、
良い成績を目指した勉強より、独りで学ぶ喜びを知った。
学校に頼る必要はない。
大切なことは、いかに自分で学ぶ意欲を育み、守るかだ。
📖 福澤 諭吉 『現代語訳 学問のすすめ』 ちくま新書

🔖心に残った一節
人間が世の中を渡っていくようすを見ていると、自分で思っているよりも案外悪いことをし、自分で思っているよりも案外愚かなことをし、自分で目指しているよりも案外成功しないものである。
「人間は愚かで案外成功しない」
福澤諭吉は『学問のすすめ』の中で、そう言っています。
この前提こそが、学びを豊かにしてくれる。
成功や評価のための学びは、
いつしか自分を縛り、自由を奪ってしまう。
私もかつてはそういった学びしか知りませんでした。
しかし「もう誰からも評価されたくない」と思ってから学びの質が変わりました。
常識を疑いながら、
人間の愚かで悪い面も見つめ、
答えではなく、考えるために本を読む。
どんな場面でも、まず考えられるようになった。
学びの本質は、成功ではなく自由になることです。
なんとなく、4つ目の『学問のすすめ』で書いたような、断定と丁寧が混ざる文体がしっくりきています。
書くことも、もう少し磨いていきたいところです🖊️
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