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大自然が作り出す記録④ - リアス海岸

海岸線が描く複雑な湾、海に突き出した半島、海岸近くまで迫る急傾斜地。
風光明媚な景色の中で営まれる養殖業。
穏やかさと凶暴さの二面性を持つ海。

その地形、もしかしたら
「リアス海岸」かもよ。

前回の「三角州」の記事はこちら

リアス海岸ってなんだっけ?

リアス海岸。
川の侵食によって形成された、山と谷のある地形が沈降し、谷に海水が入り込むことでできた入江地形だ。
特に、海岸線に対して垂直に谷が伸びるものを指すよ。

一方で、海岸線と並行に谷が入り込む地形は「ダルマチア式海岸」と呼ばれる。

クロアチアのダルマチア地方に広がる海岸で、ここでは詳しくは書かないが、いつかまとめてみたいと思う。

どうやってできるの?

平原が隆起して河川の侵食力が高まると、海に向かって流れる河川が大地を削り、深い谷を作っていく。
その後、大地が沈降して谷の部分が海に沈むと、山の部分は半島に、谷の部分は入り江となる。
この谷は「溺れ谷」と呼ばれ、それが連続した地形となることで、リアス海岸となるんだ。

リアス海岸の生成過程

リアス「式」海岸じゃないの?

そう思ったあなた!
昭和か平成初期生まれね?
ちなみにあたいも最初にそう思ったわよ(←誰?)

リアス(rias)は、スペイン語で入り江を表すリア(ria)の複数形なんだ。
スペイン北西部のガリシア地方には入り江が多く、「リアスバハス海岸」と呼ばれている。
この名前を由来として、同様の地形を英語圏では「rias coast」と呼ぶようになった。

その名前に対する和訳として、昭和30年代以降「リアス式海岸」の表記が使われ、定着していったんだ。
しかし、「リアス」そのものが入り江の地形を表す用語なので、「式」を入れる必要はなく、また「リアス地方の海岸地形」と、あたかも地名のように受け取られる恐れがあった。
次第に「式」を抜いた「リアス海岸」という表記がより適切とされるようになり、地図帳や教科書もそれに伴って改訂されていったんだ。
(教育出版様、帝国書院様のサイトより一部抜粋)

教育出版様では平成18年度(2006年)から、帝国書院様では平成20年度(2008年)から「リアス海岸」に表記が変更されているよ。

リアス海岸の由来って何? って聞いたら、「あれでしょ? リアス地方の海岸と似てるんでしょ?」って答える人、多いんじゃないかしら?
あたいもそう思ってたわよ(←だから誰?)

日本各地のリアス海岸

日本には、大小様々なリアス海岸が各地に点在している。
ここでも地理院地図を使いながら、各地のリアス海岸を見ていこう。

三陸海岸南部(岩手県・宮城県)

リアス海岸を語る上で、まず外せないのが三陸海岸南部だろう。
「日本のリアス海岸代表」と言っても過言ではない存在だ。

俺が初めて訪れたのは30年以上も前になるけれど、その美しさに感動した記憶は今でもはっきりと残っている。
三陸海岸の最南端にあたる牡鹿半島だけは、その後2006年にも足を運んだ。

牡鹿半島の万石浦

三陸海岸全体を見ると、実は隆起傾向にある海岸だ。
ただし宮古市を境にして、北部は隆起がより強く現れる一方で、南部では隆起量が小さい。
そのため三陸海岸南部では、海面上昇の影響が相対的に大きく現れ、結果としてリアス海岸が発達しているんだ。

日本の代表的なリアス海岸(出典:地理院地図)

三陸海岸の総延長は約600kmにも及ぶ。
そのうち南半分が該当すると考えると、日本でも屈指の規模を持つリアス海岸であることがわかる。

若狭湾南岸(福井県・京都府)

日本海側では数少ないリアス海岸。
若狭湾はその代表で、貴重な地形といえる。
東西の長さは約100kmだ。

敦賀市付近の断層を境に、東側は隆起、西側は沈降していて、沈降側にリアス海岸が形成されている。

日本海側では珍しいリアス海岸(出典:地理院地図)

付近の三方五湖(みかたごこ)は、俺が一度訪れてみたい場所でもある。

また若狭湾の西の端には、日本三景で有名な天橋立もあって、この地形は「砂州」と呼ばれているんだ。
砂州については、このシリーズの別の記事でまとめようと思う。

宇和海(愛媛県)

四国西岸に広がるリアス海岸。
豊後水道は全体的に沈降傾向にあるため、対岸の日豊海岸にもリアス海岸が広がっているよ。

また宇和海は水深が深く、黒潮由来の海流が入り込みやすい地形となっており、絶えず海水が循環している。
そのため好漁場となっているんだ。

南西側から黒潮が入り込む(出典:地理院地図)

三陸海岸に比べると沈水の規模が大きく、「多島海」の一面も見せる。
多島海についても、このシリーズの別の記事でまとめていくよ。

リアス海岸と暮らし

リアス海岸は、入り組んだ地形によって外洋の波が遮られ、波が穏やかで水深も深いという特徴を持っている。
このため古くから天然の良港として利用され、港を中心に人々の暮らしが築かれてきたんだ。

波が穏やかであることは、養殖用のイカダが荒天の影響を受けにくいことを意味している。
さらに水深が深いため、栄養塩を含む外洋の海水が入り込みやすく、湾内では海水の循環も起こりやすい。

加えて、入り江の奥には川が流れ込むことが多く、山から運ばれてきた栄養分が海に供給される。
こうした条件が重なり合うことで、リアス海岸では入り江ごとに環境の異なる海が生まれ、沿岸漁業や養殖が盛んに行われてきたんだ。

各地域で代表的な養殖品は、次のとおりだ。

  • 三陸海岸
    カキ、ホタテ、銀鮭など

  • 若狭湾
    カキ、フグ、マハタなど

  • 宇和海
    マダイ、シマアジ、真珠など

このように、リアス海岸では海そのものが生業の場となり、港・漁場・集落が近接した《海と一体化した暮らし》が形成されてきた。

また、海女漁のような伝統漁法や、多様な海産物、美しい景観など、観光資源にも恵まれているよ。

一方で、リアス海岸は山地が海岸線まで迫るため、平地が少なく、陸路での移動は不便になりやすい。
そのため都市は大規模になりにくく、集落が入り江ごとに分散するという特徴も持っているんだ。

リアス海岸と津波

リアス海岸は地形の特性上、津波の被害が大きくなりやすいという特徴がある。
これは特定の地域が「危険」という意味ではなく、地形そのものが持つ性質によるものだ。
以降は、必要以上に怖がらず、逆に決して過小評価することなく読んでほしい。

入り江の入り口は幅が広く水深も深いが、奥に行くにつれて次第に狭く浅くなるため、津波の力が一点に集中しやすい。
さらに、その地形のせいで引き波も強く、一度巻き込まれてしまうと沖合へ流されやすいんだ。

想像してみてほしい。
緩やかな滑り台と急な滑り台があって、下からバケツで水をぶちまけたとする。戻ってくる水の力はどちらが強いだろうか。

リアス海岸は平地が少ない。
一気に坂を駆け上がった水は、その勢いで沖合へと戻っていくんだ。

また、リアス海岸の津波被害は、入り江の向きと震源の位置関係にも大きく左右される。
三陸海岸は、プレート境界である日本海溝が沖合にあり、そこが震源になりやすい。
さらに、その震源に対してほぼ垂直に入り江が伸びているんだ。

過去には明治三陸地震、昭和三陸地震、チリ地震、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)と、大きな地震とそれに伴う被害が発生してきた。
特に東日本大震災では、最大遡上高が約40mに達した場所もある。

もちろん、他のリアス海岸は危険性が低いというわけではない。
砂浜海岸も津波の被害は大きくなることがある。

大切なのは、津波の予報が出ているときは絶対に過小評価しないことだ。
津波は通常の波とは全く違う。どちらかといえば洪水や鉄砲水に近い。
わずか30cmの津波でも、人は立っていることが難しい。

そして、「自分は大丈夫」「今回は大丈夫」という正常化バイアスを持たないことが、本当に重要なんだ。

(補足)ここではリアス海岸の話から少し広げて、津波そのものにも触れていった。
地形に関わらず、正しい理解と行動が命を守ることにつながる。どうか、あの悲しい出来事が未来で少しでも減ることを願っている。

まとめ

穏やかさと凶暴さ、その両方を抱えた海と共に生きていく。それこそがリアス海岸の暮らしなのかもしれない。

壮大な景色の中にあったのは、豊かな恵みと、時に訪れる大自然の脅威だった。
それでも人々は、大自然と向き合いながら、知恵と工夫で立ち向かい、日々を暮らしている。
その姿が、少しでも伝わっていたら嬉しいな。

リアス海岸を訪れたときは、その地で営みを続ける人たちの人生にも想いを馳せてみてほしい。
もしかしたら、また違った景色が見えるかもしれない。

ここで取り上げた場所以外にも、日本には多くのリアス海岸が存在する。
もし「ここに行ったけど素晴らしかったよ」という場所があれば、ぜひコメントで教えてください。
一緒に盛り上がりましょう!

次回は「多島海」を投稿予定!

最後まで読んでくださりありがとうございます。
記事が少しでもあなたの心に残ったら、【スキ】で知らせてくれると嬉しいです。
それでは、また!

参考資料

国土地理院「地理院地図」
https://maps.gsi.go.jp

教育出版 「Q3『リアス海岸』について」
https://www.kyoiku-shuppan.co.jp/textbook/chuu/shakai/document/ducu6/docu602/1781.html

帝国書院「『リアス式海岸』が『リアス海岸』と表記されるようになったのはなぜですか。」
https://www.teikokushoin.co.jp/high/faq/detail/115/

Wikipedia「リアス式海岸」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%82%B9%E5%BC%8F%E6%B5%B7%E5%B2%B8

#Masaharuの学び記録 #自然地理メモ #リアス海岸

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