脳科学者がガチで考えた禁酒法:30年大量飲酒の私が、楽に禁酒できた戦略
要約
わたしは、30年、大量飲酒生活を送っていました。飲むことは生きることの一部でした。一方で、中年になると、飲むことのデメリットが深刻になってきます。「節酒」を試みましたが、全く上手くいきません。そこで、脳科学者としての知識を総動員し、禁酒戦略を真面目に考えました。その結果、拍子抜けするほど楽に禁酒できました。禁酒したいと思っている方に少しでもお役に立てれば幸いです。なお、これはわたし個人の体験ですので、万人に当てはまるものではありません。問題を感じているとしたら、専門科への御相談をおすすめします。
1章:30年大量飲酒していた私が禁酒した理由
わたしは大学生から、ずっと大量飲酒生活を送ってきました。飲み会に行き、友達を増やすこと、ワインや日本酒に詳しいことがカッコいいことだと本気で思っていました。そのうち、飲むことが生活の一部になり、毎日ワインボトルを一人で一本開けるのがデフォルトでした。流石に「飲みすぎ」と自覚し、節酒アプリをインストールしました(↓)。

これがアプリを入れてからの記録です。これでも我慢した努力の結果です。記録前と比較すれば、おそらく20~30%は減っています。しかし、それでも中々の量です。こんな「結局は大量飲酒生活」が、4年ほど続きました。
2章:改めて考える飲酒の衝撃のデメリット
さらに年をとり、大量飲酒のデメリットが、生活を圧迫するようになってきました。
1,健康への悪影響
2,仕事のパフォーマンスが下がる
3,時間の浪費
4,自己嫌悪になる
5,馬鹿にならない経済コスト
1、健康への悪影響:元来、わたしは体だけは健康でした。ところが血圧が上がってきました。収縮期170、拡張期で110という凄いスコアを叩き出し、これは明確に医学介入が必要なレベルです。塩分を大量に取っているわけでもないし、腎機能が悪いわけでもない。原因を考察したところ、疑わしいのは飲酒でした。アルコールと高血圧の関係は、医学的にもよく知られています。さらなる悩みは肥満です。20代の頃は40kg後半でした。それが、じわじわじわじわと増加し、禁酒前では67kgと肥満体でした。
2,仕事のパフォーマンスが下がる:年を取るにつれて、翌朝のお酒が抜けにくくなりました。ひどい二日酔いではありません。毎朝、“軽く”だるいのです。しかし、それは、自分が夜型人間だからと考えていました。これは体質。なので、午前中はメールチェックとか簡単な雑用を行います。論文を書く、外部資金の申請書を練るというような頭を酷使する作業は、午後以降の仕事でした。しかし、この「午前中は、使い物にならない問題」がどんどん悪化してきました。
3,時間の浪費:管理職になったころから、休日の昼飲みが始まりました。おそらくストレスだったのでしょう。午前中に最低限の家事、つまり、洗濯、掃除、夕食まで仕込む(あとは炒めるだけ、温めるだけ状態)だけします。それが終わると、即ワインを開けます。場合によっては1日で2本くらい飲みます。そうすると、もうその日は終わりです。読みたい本があっても読めない。見たい映画があっても見られない。見ても覚えていない。ヨガもできない。勉強もできない。貴重な週末が、何も生み出さない怠惰と虚無で終わります。
4,自己嫌悪になる:酒の席で失敗することもありました。大きな事故ではありません。でも、たまに、本当にいらんことを言う。少し攻撃的になったり、普通に暴言だったりもします。若い頃なら許されるのでしょうが、いい大人がみっともないです。翌朝、うっすら覚えていて、盛大な自己嫌悪に襲われます。こういう自己嫌悪は、じわじわ効きます。世の中から消えたくなります。
5,馬鹿にならない経済コスト:ワイン好きが高じて、スーパーで売っているワインでは物足りなくなりました。そこで、専門店から購入した3000円以上のワイン、場合によっては、もっと美味しいものを!と味覚と欲望がインフレしていきました。
週5本。1本3000円。
週に1万5000円です。月に6万円くらい。年間だと約78万円。
ここに会食などの外飲みの費用が乗ってきます。
わたしは節約ガチ勢なのですが、お酒に関しては、なぜか別勘定でした。ワインは大人の嗜み、こんなに頑張っているのだから、ご褒美くらい当然でしょう。しかし、真面目に考えると実に馬鹿々々しいことに気づきます。
3章:禁酒成功の秘訣を振り返る
だらだらと節酒するという過去の戦略を4年間試し、これが全く機能しなかった敗戦を踏まえ、今回は禁酒法を超真面目に考えました。今こそ、精神医学と脳科学の英知を、自分のために利用する時と思いました。
禁酒を達成した今、振り返って見た場合、勝利のポイントは3つでした。
秘訣(1)絶対に禁酒すると覚悟を決める。
秘訣(2)急峻なドーパミン放出を抑制する。
秘訣(3)前頭葉で戦わず、線条体にゆだねる。
一つ一つ解説させてください。
4章:禁酒への絶対覚悟(秘訣1)
絶対に禁酒する。考えない。飲まない。絶対ルールです。これは、精神論ではなく、実は、精神医学的にも脳科学的には合理的な覚悟です。その理由は、「嗜癖」という言葉を理解すると分かります。
嗜癖(しへき)。日常ではあまり使わない言葉で、精神医学の言葉です。依存症、例えば、アルコール依存、薬物依存、買い物依存、ギャンブル依存、ゲーム依存、SNS依存、止まらない承認欲求などです。
「嗜癖」は、正式診断名ではありません。しかし、人間が報酬系に支配されるという側面はよく似ています。つまり、同一の概念でこれらの状態を一元的に理解しやすいので、この言葉は病態理解という上で便利なのです。
この「嗜」という字が、実によくできています。「嗜む」は、たしなむ、好んで親しむ、という意味です。酒を嗜む。芸術を嗜む。悪い言葉ではなく、人生の余白を彩る美しい言葉です。「癖」は、くり返される行動の型です。つまり、嗜癖とは、最初は、好きなもの、楽しいもの、慰めてくれるものが、癖になったのです。嫌いなものには、嗜癖しません。
ある日の嗜癖の光景です。新鮮な刺身とキンキンに冷えた日本酒を用意します。猫らをよしよしヾ(・ω・`)しながら飲む。飲む。飲む。
控え目に言って最高です。

嗜癖の怖さは、「やめたくない」ことではありません。「やめたいのに、欲しい」という渇望に支配されることです。脳がハックされているのです。
だからこそ、「やめる!」と自らが覚悟をもって決める必要があります。
精神科医が、アルコール使用障害などの嗜癖の患者さんと話すとき、最初に見るのもここです。この人は、本当にやめたいのか?これは、患者さんを責めるためではありません。「覚悟が足りないからダメなんだ」と言いたいわけでもありません。程度が強ければ、専門家や家族などのサポートが必須であり、一人で抱える案件ではありません。
それでもなお、本人の中に「変わりたい自分」が明確に立ち上がっていないと、どれだけ周りがサポートしようとも、治療は前に進みにくい。精神療法では、この矛盾を丁寧に扱います。お酒をやめたいと思いますか?なぜ、やめたいと思いましたか?このまま飲み続けると、何が一番困りますか?逆に、お酒はあなたに何を与えてくれていましたか?お酒をやめたら、何を取り戻せそうですか?また飲みたくなる場面は、どこですか?そのとき、誰に助けを求められますか?こういうことを聞きます。説教ではありません。正論でもありません。正論でやめられるなら、誰も苦労しません。
自分の言葉で、自分の損失に対峙することです。
私は、この作業を自分にやりました。
血圧が高い。朝がだるい。太る。お金が消える。休日が溶ける。酒席で失敗する。翌朝、自己嫌悪になる。自分の醜く怠惰な部分に対峙しました。酒に酔っているときは、直面しなくてすむ問題です。だからこそ、酒が便利なのです。仕事のプレッシャーも進捗の遅さも、競争社会の辛さや感情の乱れも。ワインを飲むと、麻酔のように消えます。しかし、翌朝、戻ってきます。だるさと、盛大な自己嫌悪と、パンパンにむくんだ顔を引き連れて。
だからこそ、「本当にやめる」と覚悟をもって決めたのです。
5章:ドーパミンを操る(秘訣2)
次に真面目に考えたのは、どのようにドーパミンを扱うかです。

ドーパミン。一般にもかなり知られるようになりました。ドーパミンが出る。ドーパミン中毒。SNSでもよく見ます。ただ、少し雑に使われすぎています。ドーパミンは、単なる「快楽物質」ではありません。
むしろ、「これは価値がある」「次も取りに行け」という、価値の学習と動機づけの信号に近いものです。とくに一過性かつ急峻なドーパミン応答は、「予想より良かった」「予想より悪かった」という差分を認識し、それを元に脳の回路を書き換えていくものです。
もちろん、ドーパミンだけが動物を動かしているわけではありません。セロトニン、ノルアドレナリン、GABA、グルタミン酸、社会環境もすべて関係します。しかし、それでも、ドーパミンが報酬、欲求、学習、行動選択に巨大な影響を持つことは間違いありません。
しかし、食べ物を探す。恋をする。Sexをする。新しい場所を探索する。褒められて嬉しい。うまくいって、また頑張ろうと思う。これまでにない美しいものを創造する。このような工程に、ドーパミンは、生命を前に進めるエンジンとして働いてきました。つまり、快楽や予測、それに伴う学習をドーパミンが強力に推進したため、われわれは進化の歴史のなかで絶滅せず、より良いものを創造し、文明を発達させてきました。
本来ドーパミンは、生きるうえで強力な味方だったのです。
だからこそ、厄介です。
ドーパミンが非常に強力な効果を持つからこそ、我々の脳は簡単に乗っ取られます。酒。ギャンブル。薬物。甘いもの。買い物。SNSの通知。承認。「もっと欲しい」と脳が暴れます。
条件づけ場所嗜好性(CPP)実験: これは非常に有名な動物実験です。2009年、DeisserothらのグループがScience誌に報告した、非常にセンセーショナルな論文です。少々とっつきにくいかもしれませんが、この論文にはドーパミンの怖さが凝縮されており、ここを理解するとドーパミンを適切に扱うことの重要性が分かります。
実験では、マウスの脳の腹側被蓋野(VTA)のドーパミン神経を、光遺伝学という技術で人工的に刺激します。その結果、従来の方法では成しえないほど高い精度で、狙った時間だけ、ドーパミンを一過性に、急峻に上昇させます。すると何が起こったでしょう?

Aという部屋、Bという部屋があり、マウスは自由に行き来できます。しかし、Bという部屋にマウスが入った時だけ、ドーパミン神経を刺激します。ドーパミンが急激に分泌されます。そうすると、マウスはB部屋に長くいるようになります。B部屋に食べ物があったわけではありません。異性のマウスがいたわけでもありません。ただ、ドーパミン神経が刺激されただけで、脳は「B部屋は価値がある」と学習したのです。
テストの日には、もう光刺激はありません。つまり、人為的にドーパミン神経を刺激していません。それでもマウスは、以前にドーパミン刺激と結びついた部屋Bに長くとどまります。今まで無価値だった部屋Bに、報酬の記憶が付与されたのです。
意味が分かると怖い話です。
「あの快感」という記憶と、その「快感をもう一度」という渇望に、脳がハックされているのです。
ドーパミンの性質を理解すると、さらに恐ろしいことが分かります。
ドーパミンは、「報酬」や「快楽」を貰えた時に、単純に分泌される物質ではありません。ここが、マスコミがドーパミンを雑に説明している部分だと思います。ドーパミン神経は、報酬の「予想」と、得られた報酬の「実績」の「差分」に強く応答します。ここの違いが恐ろしい結果を誘発します。例え話で説明すると、以下です。

あなたは近所のおばちゃんの家で、たまたま、お手伝いします。何の期待もしていません。そうしたら、おばちゃんは貴方に500円くれました。幼い貴方は、大変驚き、「やほーーー!」となったかもしれません。
次の日。またお手伝いをすることなりました。おばちゃんは再び500円くれました。あなたは嬉しいけれど、初日ほどの驚きも興奮もありません。
さらに次の日。またお手伝いすることになりました。なぜか、おばちゃんは、1円もくれません。あなたが抱いていた「今日も500円ゲット!」という予想は砕け、なんか、がっかりです。
これは客観的に考えれば、不思議です。
初日は、貴方は、何の期待も抱かず、おそらく清い(?)心でおばちゃんを手伝ったはずです。その結果、予想外にもらった500円に大興奮し、脳の中ではドーパミンが大きく反応したはずです。次の日にも500円はもらえました。でも興奮は半減です。500円の価値は同じはずです。でも、500円貰える?という予測があり、予測どおりの報酬が得られたので、phasicなドーパミン応答は小さくなります。さて、3日目。今日も500円貰えるだろうと「予測」し、意気揚々とお手伝いした結果、0円です。がっかりです。やっぱり不思議です。初日は何も期待しないでお手伝いしたのに、今回は、何も貰えないとがっかりです。これは、ドーパミンの応答を考えると説明できます。
これは恐ろしい話です。
なぜなら、2日目でも500円はもらえたのです。にもかかわらず、phasicなドーパミン応答は小さくなります。3日目では、明確にテンションがダウンでドーパミンもダウンです。
これこそが、「もっと欲しい」「もっと。もっと」と、より強い刺激を求めるメカニズムです。スーパーのワインでは我慢できない!もっと、インプレッションが欲しい!昨日より少ない!これじゃダメだ!となってしまうメカニズムです。
このドーパミンの性質を知らないと、お酒の誘惑に容易に負けます。なぜなら、敵は酒ではなく、過剰なドーパミンだからです。とくに、急峻なドーパミンの上昇は、報酬学習や条件づけを強めやすく、嗜癖に関与しやすいと考えられています。
では、どんな状況で、ドーパミンが急峻に分泌されるか?
予想外の報酬、強い刺激、目新しい刺激、強い報酬の手がかりなどに応じて、ドーパミンが一過性に大きく反応すると考えられています。
だから私は、急激にドーパミンが出ないように、日常を置き換えました。
まず、徹底的に薄味にし、脂っこいもの、スパイシーなもの、甘いもの、濃厚なものを辞めました。濃厚なチョコ、チーズ盛り合わせ、ジューシーな牛肉料理。そういうものは、いったんやめました。チョコではなく、和菓子。チーズはモッツァレラ。牛ではなく、魚と鶏むね肉です。
ドカンと脳を殴るような食事から、静かに味わう食事へ変えたのです。
そして、五感の解像度を上げました。mindful eatingに近いことです。
mindful eatingとは、簡単に言うと、食べている今この瞬間に、ちゃんと食べ物に注意を向ける食べ方です。カロリー計算ではありません。
食べ物の色彩を視覚で堪能し、そして香り、温度、食感、味の変化、飲み込んだあとの余韻、そして自分の空腹感や満腹感、自分の内受容感覚を丁寧に感じるのです。ヨガにも通じる考え方です。
お刺身を食べるとき、日本酒は欠かせない存在でした。でも、断酒中は、刺身そのものを真剣に味わいました。まずは、綺麗な皿にうず高く、上品に盛ります。これは以前の魯山人先生の知恵です。
そして、刺身の舌に触れたときの質感。脂の甘み。わさびの香り。醤油の塩味とコク。噛んだときの繊維のほどけ方。飲み込んだあとの余韻。そして、緑茶を味わいながら飲みます。
すると、面白いことが起きました。
お酒がなくても、食卓が完成したのです。
イタリアンなら、炭酸水に本物のライムを入れ、ライムの新鮮な香りと酸味を感じました。皮を刻んで、その苦みも味わいました。
アルコールを模したノンアル飲料(注)も使いました。ノンアルの日本酒。「ノンアルの日本酒なんて、この世の終わりだ」と思っていました(すみません)。実際、それほど素晴らしいお味はしませんが(すみません。2度目)、「あり」か「なし」かで言ったら、全然「あり」です。のんあるビール。のんある酒場の白ワインスパークリング。これらが効きました。我慢ではありません。脳が満足するようになりました。再学習です。
(注)アルコールを模したノンアル飲料:これは人によっては悪影響のようです。アルコールを模しているが故に、本物のお酒への手がかりになり、避けるべきと警鐘を鳴らす専門家もいます。
6章:線条体を味方につける(秘訣3)
三つ目は、習慣の力です。禁酒前の私は、毎日、前頭葉で戦っていました。
飲もっかな。やめようかな。。。どうしようかな。。。
しかし、ここで秘訣(1)の覚悟が効いてきます。「もう、やめる」と決めたので、毎晩の脳内裁判は不要です。
検察側は言います。血圧が高いでしょう。太るでしょう。朝がだるいでしょう。週末が消えるでしょう。だから飲んだら駄目です。すると、弁護側が出てきます。でも、今日くらい良いでしょう。仕事も頑張ったでしょう。今日はお刺身だから、刺身には日本酒でしょう。それは美しい日本文化でしょう。人生の豊かさでしょう。
この弁護士は、相当優秀です。毎晩、勝訴します。なので、私はこの前頭葉で繰り広げられる脳内裁判をやめました。飲まない。考えない。
前頭葉、とくに前頭前野と、背側線条体に関して、脳科学的に補足します。
前頭前野は、計画を立てたり、未来の結果を予測したり、衝動を抑えたり、目標に沿って行動を選んだりするのに重要な領域です。いわば、「考えて選ぶ」ための脳です。一方、背側線条体は、報酬、行動選択、反復された行動の習慣化に深く関わります。
つまり、毎晩「飲むか、飲まないか」を考えている状態は、前頭前野にかなり負荷をかけている状態です。しかも、夜です。仕事で疲れている。お腹も空いている。スーパーで輝くようなローストビーフを買って来てしまった。そんな状態で、前頭前野に「我慢しなさい」と命じても、無理です。
ところが、「飲まない」と決める。炭酸水にライムを絞る。ローストビーフではなく、鶏むね肉を用意する。具だくさんのサラダを作る。ドレッシングも薄味を自作する。これを習慣にする。背側線条体が活躍する作業です。
仕事の飲み会や懇親会にも行きました。でも、参加して、早々に宣言します。「今、禁酒中なので、飲みません」。みんなびっくりします。「どうした???」。しかし、段々、「まだ禁酒続いているの?すごいじゃん」と変わっていきます。昔はまだしも、最近は、飲まない文化も尊重されるようになり、随分と禁酒がしやすい環境になりましたね。このように、自分の習慣をつくり、宣言することで周りも巻き込みます。
禁酒とは、毎晩、前頭葉を酷使することではありませんでした。
禁酒とは、背側線条体を含む習慣回路で生活を自動運転にすることでした。そうしたら、簡単にやめられました。
本当に、拍子抜けするほど簡単でした。
自分の意志が強くなったわけではないです。
脳との戦い方を、変えただけです。
7章:禁酒して起こったこと
1,痩せた
2,よく眠れる
3,午前中から絶好調
4,肌の透明感がアップ
5,血圧が正常化
6,馬鹿にならない節約効果
7,週末の趣味が充実し、リフレッシュ感が爆増
8,今までの当たり前、思い込みが消え、思考が柔軟になった
1,痩せた:まず、自然に痩せました。8か月で、67kgから58kgになりました。食事量も減り、ヘルシーなものを好むようになりました。「食べたい!!」という欲望が、起こりにくくなりました。以前は、酒を飲むと、食欲も一緒に暴走していました。ワインを飲む。チーズとチョコを食べる。さらに飲む。さらに食べる。酒、しょっぱいもの、甘いものの三角ループができると、無限に食べられます。我ながら最低でした。
2,よく眠れる:睡眠ポリグラフなどで睡眠構築を見れば、どれだけ深く眠れているか客観的にわかります。お酒で睡眠の質が悪化することには、明確なエビデンスがあります。私の場合も、禁酒後、泥のように眠れるようになりました。そしてすっきり起きられます。さわやかな朝です。
3,午前中から絶好調:当然、朝から絶好調です。朝の仕事のパフォーマンスも明確に改善しました。これは、いちばん衝撃でした。上述したように、以前の私は、論文作成や研究費申請書のような重い仕事は、午前は無理でした。でも、禁酒したら、朝から論文がスラスラ書けるようになりました。私は20歳からデフォルトで大量飲酒していたので、朝にだるいのは、自分の体質だと思っていました。私は朝は弱いのね。そういう人間なのね。違いました。酒でした。
4,肌の透明感がアップ:なんということでしょう!肌の透明感が上がりました。以前は、くすんでいました。まあ中年なので、そんなもんだと思っていました。これも、間違いでした。
5,血圧が正常化:これは全くの意外な出来事だったのですが、あれだけ高かった血圧が、全くの正常値に戻りました。少しは下がるだろうとは予想していましたが、まさかこれほどの効果があるとは思わず、近いうちに高血圧外来には行こうと思っていました。しかし、もはや血圧外来は不要です。高血圧で良いことなどほとんどないので、大変うれしい変化でした。
6,馬鹿にならない節約効果:ノンアル飲料は安いです。ソーダストリームで作った炭酸水とライム、緑茶、ハーブティーはもっと安いです。育てているペパーミントにお湯を注ぐだけで驚くほど爽やかな香りがします。十分です。以前のように、家飲みだけで年間約78万円以上かかっていたものが、ほぼ0になったことを考えれば、かなり大きいです。
7,週末のリフレッシュ感が爆増:充実した休日が戻ってきました。昼から飲む虚無の休日に、読書、映画、ガーデニング、DIY、ヨガ、散歩など、沢山のことができるようになりました。少し瘦せたので、お洋服も自分で直し、おしゃれが楽しくなりました。生き生きした時間が戻ってきました。
8,今までの当たり前、思い込みが消え、思考が柔軟になった:これは自分にとって一番大切なことだったので、次の章で深掘ります。
8章:禁酒は、思い込みを壊す実験だった
今回、禁酒して一番よかったことは、酒をやめられたことそのものではないです。自分の思い込みが、いくつも壊れたことです。私は朝が弱い。中年だから、太るのは仕方ない。中年だから、肌がくすむのは仕方ない。仕事で疲れているから、夜にご褒美は必要。週末に昼飲みするのは、人生の楽しみ。お酒をやめるなんて、なんてつまらない人生だろうと。
全部、間違えていました。
少なくとも、私の場合は、思い込みでした。
自分の体質だと思っていたものが、実は生活習慣だったりする。
自分の性格だと思っていたものが、実は睡眠不足だったりする。
自分の限界だと思っていたものが、実は報酬系の暴走だったりする。
そして、きちんと戦略を立てれば、脳は変わることを、自分という1症例ですが、明確にわかりました。気合いではありません。
脳は私の行動を30年ハッキングしました。
脳科学・精神医学の知識で、脳をハックし返してやりました。
おわりに
繰り返しですが、わたしの禁酒法のポイントは三つです。
(1)絶対に禁酒すると覚悟を決める。
(2)急峻なドーパミン放出を抑制する。
(3)前頭葉で戦わず、線条体にゆだねる。
専門的に言えば、嗜癖の両価性を直視し、報酬系の手がかり反応を減らし、毎回の意思決定を習慣化された行動に置き換える、ということです。
簡単に言えば、こうです。酒と毎晩、交渉しない。脳を刺激しすぎない。飲まない習慣を自動化する。これだけです。
もちろん、すべての人に同じ方法が効くとは思いません。アルコール使用障害が疑われる方、離脱症状がある方、飲まないと手が震える方、不眠、発汗、動悸、不安、けいれんなどがある方は、ひとりで急に断酒しないでください。精神科、依存症専門外来、地域の相談窓口に相談してください。ここは本当に大事です。
完全禁酒ではなく、節度のある飲酒に戻る過程について書きました。ここも、かなりバチバチに考えました。依存体質な人間にとって、完全禁酒より、適度に飲酒を楽しむ方が難しいのです。でも少しは飲みたいです。神が作りたもうた最高傑作が猫だとしたら、人類が作りえた最高傑作はワインだと思っています。だからこそ、支配されずに、嗜みたい。もし、みなさんの中にも、お酒との距離感について考えている方がいらっしゃったら、「脳科学者がガチで考えた節酒法」も読んでいただければ幸いです。
一緒に、脳をだまし、楽に生きていきましょう。

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