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共生の黎明 #41 第13章 第2節:広がり始める、言葉のぬくもり 連続小説

それは、ひとつの小さな提案からはじまった。

福祉センターでの会話の中、「アヤ/ユラを、職場で使えたら」と呟いた職員がいた。
その場にいた数人は顔を見合わせ、ゆっくりと頷いた。

試験的な導入が始まったのは、その数週間後。
職員同士の日々のやり取り……感謝、ねぎらい、共感の一言……にアヤやユラがそっと添えられるようになった。

昼休み、共有スペースの一角では、操作方法を尋ね合う姿が見られた。

最初は戸惑いもあったが、次第にそれは「気持ちを伝えるきっかけ」として浸透していく。

ある日、職場の一人が静かに語った。
「“ありがとう”って、こんなに伝えそびれてたんだね」

週の終わりには、短い振り返りの時間が設けられた。
アヤ/ユラで交わされた想いが、集計されるわけではない。
ただ、その一部が壁に貼られた紙に書き写され、誰でも読めるようにされていた。
そこには匿名のまま、あたたかい言葉たちが残っていた。

その試みは、思わぬ波紋を広げた。
「この仕組み、私たちの学校にも合うかもしれない」
「うちの商店街にも、一度説明に来てくれないかな」

どこからともなく声がかかり、気がつけば、市役所職員や図書館、保育施設の一部でも、静かな導入が始まっていた。

制度として正式に採用されたわけではない。
けれど、「必要としている人のそばに置かれるもの」として、アヤ/ユラは、確かに広がりを見せていた。

その光景は、どこか懐かしく、そして未来を感じさせた。
人と人のあいだに、そっと差し出されるやわらかな手のひら。
言葉とともに届く、そのぬくもり。

この日もまた、ひとつの「ありがとう」が誰かの心に灯りをともしていた。


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