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#007 サッカー日本代表のこと サッカーは大人を子供に、子供をフーリガンにする

いよいよサッカーワールドカップですね。
グローバル、ローカル其々におけるこの競技の発展を見つめ、深遠なその文化を骨の髄まで味わいながら生きてきた老害サッカー狂人なりに、日本代表について思うことを書いてみます。

日本代表の勝利=グラスルーツの充実

サッカー日本代表は本当に強くなりました。

Jリーグが始まってから30年ちょっとでプロクラブは全国60クラブに増え、クラブや、学校の部活、地域の企業スポーツがそのすそ野を掘り起こし、種をまき、拡げてきたことで、グラスルーツは日本中に広がりました。私も子を育てながらジュニアサッカーに少しばかり関わりが持っているため、この競技のすそ野が時間を掛けてローカルに力強く広がっていることは本当に心強く、それは間違いなく上記のクラブ、学校、企業やプロクラブの下部組織を通じて子供たちの競技環境を作ってくださっているサッカー人達の尽力によるものです。

子供たちが競技を始めようと思えば、よほど田舎でなければ家の近くだけでいくつものクラブが選べて、成長するにつれ部活、ガチ競技、レクリエーションといった選択肢も豊富にあります。時代のライフスタイルに合わなくなった少年団の数は減っている一方で、さまざまな特色あるクラブチームの数が増えています。ここ10年で4種登録チームの総数こそ減っているものの、選択肢のバリエーションは本当に充実しています。また、進む若年層の人口減に対し、幼少期にサッカーに触れる人口の比率はここ40年で2倍(約50%)に増えているとの統計もあり、サッカーはマーケット全体の縮小に対しカウンターアタックを浴びせることに成功しています。

選択肢の多さが、競技者のニーズを満たし、ポテンシャルも開花させている。

ジュニア年代向けの地域内、地域間の大会も数多く開催され、子供たちの切磋琢磨を温かく見守りながらLTV向上やヘリテージブランディングのためにクラブや大会にお金を出してくれるスポンサー企業もたくさん存在します。彼らが大人に近づいてきたら、プロ契約の選択肢は国内外世界中に豊富にあり、大学進学してからでもプロとして活躍する道があります。いずれのキャリアパスも、たくさんの先輩が切り開き、踏み締めてきた道が既にあり、その道に導いてくれるエージェントもたくさんいます。そして、彼らが最終的にプレーを披露する代表チームや、プロクラブには多様なキャリア、多様なルーツを包摂する競技カルチャーとチームマネジメントがあり、実際にそうしたキャリア、ルーツを持つ選手たちがフェアな評価と機会を得て、才能を発揮しています。

サッカー競技者の可能性を広げる選択肢と環境が、エコシステムと言っても良いレベルで社会に実装され、本当に充実してきていると感じます。スカウト網で良い選手だけを囲い、エリート養成校で仕上げる少数精鋭・一点突破による選択と集中方式の強化策とは違い、完成された大きな社会システムから自然に優秀な競技者が湧いて出てくるわけですから、今の日本代表レベルの選手たちの競技力は、当面の間大きく崩れることは無いでしょう。

一方、サッカーの文化面から見てみると、私の子供の学校ではジュビロの話題が尽きず、ヤマハスタジアムに行けばクラスの友達と普通にすれ違います。どのご家庭も一目で親御さんもサッカー好きと分かる格好や雰囲気で、この親が子供たちがサッカーを楽しめる環境を守り、必要なものを与えてくれているのだろうなと思うと本当に心強いです。仮にこの子供たちに競技の才能や競技を続けるカネが無くても、楽しみながらボールを蹴る仲間がいて、校庭や家庭内にもサッカーの話題があります。成長して大人になれば、ひとりのファン・サポーターとして、サッカー文化の担い手や体現者になってくれるだろうし、グラスルーツを支える側や、稼いだカネをつぎ込むスポンサーに回ってくれる可能性もあります。

バス囲み、卵投げの歴史を次世代に伝える意味(ねえよ)

私が学生の頃は、クラスにサッカー競技者は1~2人。サッカーファンは数人。ヤマハスタジアムのホームゲームに通っている人は1人いれば良いほうで、明らかに趣味の珍しいオタク、変人扱いをされていました。当時のジュビロは強かったですが、国内リーグを優勝したシーズンでもヤマハスタジアムが満員になることはほとんどありませんし、SNSで異論激論が飛び交うほどの熱いファルカルチャーも存在しませんでした。そんな時代の日本代表はワールドカップに出たことも無く、日本の経済力と政治力のおかげでワールドカップ開催権は手に入れたものの、バブル崩壊後はサッカー界にお金を出すスポンサーは思うように増えず、お金を払って観に来てくれるお客さんが減り続ける中、日本代表は綱渡りのような強化が続き、プロ黎明期の選手たちは一つ負ければサッカーが社会のお荷物になり、日本サッカーの未来が無くなる、吹けば飛ぶようなシチュエーションをギリギリ切り抜けてきました。

日本サッカーがワールドカップ予選敗退ギリギリに追い詰められた試合で、予選を余裕で通過した韓国ゴール裏から掲げられた「一緒にフランスへ行こう」の横断幕。今では考えられないが、韓国に情けを送られるような時代があった。
(写真:97年頃の週刊サッカーマガジン)

98年のフランスW杯予選のように、国立競技場に集まった1人ひとりが悲壮感渦巻く空気を作り出し、あと1ミリ1センチの際を俺たちの力で選手を突き動かしてモノにさせないと日本サッカーが終わってしまう、2002年に日本は世界の笑いものにされる、なんて瀬戸際にヒリヒリするような場面はもうしばらくの間起こることは無いでしょう。1つ2つ負けたとしても、30年以上かけて競技を、グラスルーツを、ビジネスを、そして文化をつくってきた私たちサッカーファミリーがついていますし、社会システムのレベルにまで発展したサッカーエコシステムから新たな挑戦者が次々と育ち、反撃の一発をお見舞いしてくれるはずです。

だからもう、国立競技場の裏の屋台で卵を売ってもらって、選手バスの出入り口で皆で待ち構えて、不甲斐ない選手達に投げつける必要もありません。カズさんがキレて飛び出してくることももう無さそうです。

バブル崩壊前に先人達が作った千載一遇のチャンスを、バブル崩壊後に限られたリソーセスで何とかモノにしなければ全てが水泡に…崖っぷちだった。
(写真:97年頃の週刊サッカーマガジン)

一応、日本サッカーの深遠な歴史を次世代に伝える責任を果たそうと思い、自分の子供を国立競技場に連れていき、屋台のあった場所と、卵を投げつけられた日本代表のバスが出入りしていたゲートと、そして試合のずいぶん前からシート貼りをして代々木の公園でホームレス生活を送りながら3食ホープ軒(国立の斜向かいにあるギトギトなラーメン屋)でラーメン食ってキックオフを待っていた酔狂な人達が、日本サッカーが世界への扉を開くために、あと1ミリ1センチの際で選手を突き動かす素晴らしいサポートを繰り広げ、後のサッカーファンカルチャーの礎となったことをレクチャーしましたが、そんなもんは今の子供達にとってはただの笑い話でしょう。それでいいんです。

黄色い建物がホープ軒。日本サッカーを愛する私たちをギリギリな時代から脂っこく見守り続けてくれている。
(国立競技場の上層より撮影)

愛と希望の象徴、眩しすぎるサッカー日本代表

日本代表戦の雰囲気も、競技のエコシステムの充実とともに大きく変わったように感じます。
日本代表の試合は、もはや血を吐きながら声圧をピッチに押し付け、今ほどうまくもない選手たちの背中を何とか突き動かして日本サッカーの、サッカー界全体の首の皮一枚を繋ぐ、試合の前後の夜は興奮で眠れなくなるギリギリな覚醒剤みたいな存在ではありません。私は正直言って今の新国立競技場や埼玉スタジアムのスタンドの優しい雰囲気にはかなり戸惑いますが、今のサッカーファミリーにとっての日本代表はサッカーを愛するみんなが期待と夢を託して、温かく応援する愛と希望の象徴なんだろうと思います。 

子供のころから明確なキャリアプランを持ち、日々高いレベルを求めて自ら進む道を選択し、努力研鑽を重ね、堂々たる勝者のメンタリティと豊かな人間性を兼ね備えた今の日本代表の選手達は私のような老害フーリガンにはいささか眩し過ぎますが、日本のプロサッカー黎明期に多感な時期を過ごした私達の世代が世界津々浦々のスタジアムでゲロ吐きながら応援し、精魂も資金も尽きて倒れ、その後の社会人キャリアに深刻なダメージを負った犠牲の先に、今のこの素晴らしい選手達と、希望に満ち溢れたファン・サポーターのみんな、そしてこの選手達に夢を乗せてボールを追い掛ける子供達、そしてそしてそれを応援してくれるグラスルーツを支える人たちがたくさんいるのだと思うと、本当に誇らしい気持ちになりますし、心から勝利を願う気持ちが湧き上がってきます。

今の日本代表は、私たちサッカーファンの愛と希望の象徴です。

サッカーのせいで人生に必要な多くの大切なものを失い、沢山の回り道をしてきた私ですが、自分の子供に、愛と希望の象徴となってすべてのサッカーファミリーを元気にしてくれるカッコいい日本代表を見せることができるのは本当に誇らしく思います。特に、W杯出場を決めたバーレーン戦では久保建英選手のとんでもない地球レベルのプレーを埼玉スタジアムのスタンドで見せてあげられたこと、強い日本代表を彼の心に最高に熱い形で残すことが出来たことで、何だかよく分からないけど、精魂も資金も尽き、まともな社会人になれないほどの深刻なダメージを負うに至った自分のサッカーファン・ライフの色々なことが報われ、繋がったような気がしました(わたしのライフ・キャリアをまとめたnoteも是非ご覧ください↓↓)。

サッカーは大人を子供に、子供をフーリガンにする。

もう少しだけ続くぞ。W杯楽しみましょうね。

ばも
ちゃうちゃう

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