『珈琲にドーナツ盤』を読む
寒さの厳しい本日は、早々に確定申告作業を諦めて布団に潜り込んで読んだ、片岡義男『珈琲にドーナツ盤』(光文社文庫2025)の読書感想文です。
憧れの大人
作者の片岡義男氏(1939/3/20-)の名を知ったのは、私が本格的に読書生活を始める以前の高校2年生の夏でした。その時に手に取った本のタイトルも内容も忘れてしまいました(確か新潮文庫の一冊)が、夏休みに練習で通っていた陸上競技場の屋内トレーニング場で、ウエイトトレーニングに使うベンチに寝転んで読みました。そのシチュエーションだけは今でも鮮明に覚えています。
私が大学生だった1988〜1990年頃、人気作家だった片岡氏の著作は角川文庫から毎月発刊されており、毎月買っていました。洗練された、リズム感のある文体が気に入り、愛読していました。また、東京、バイク、サーフィン、コーヒー、バー、スタイリッシュな女性など、私のよく知らない世界が描かれていることが多く、新鮮でかなり強い影響を受けました。また、ご本人自身も垢抜けていてカッコよく、私にとって憧れの大人の代表格でした。
珈琲三部作
本書は、昨年『珈琲三部作』として光文社から発売されたうちの一冊で、片岡氏初の私小説集の位置付けにあります。1960年から1973年までの、氏がフリーランスのライターとして活動していた頃のストーリーが描かれていて、大変面白く読みました。全てのストーリーに音楽が絡んでおり、それも魅力です。
片岡氏の小説に、珈琲は欠かせないツールです。必ずしも全てのストーリーに珈琲が登場する訳ではありませんが、珈琲の湯気と香りが漂ってくるような読後感があります。それぞれのタイトルもユニークで、古さを感じさせない、お洒落な文体だと思います。
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