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風鈴も眠れない|風まかせ文芸部「初夏」

初夏になると、隣の部屋から風鈴の音が聞こえる。

ちりん。
ちりりん。

一定ではない、不思議な間隔の音だ。

夜風に揺れているというより、
誰かが感情を込めて鳴らしているような気がした。

僕はその音が好きだった。

仕事で疲れて帰った日も、
窓を開ければ、風鈴が鳴る。

一人暮らしの部屋は、静かすぎることがある。

だから風鈴の音が聞こえると、
すぐ隣に誰かが暮らしているのだと思って、少し安心した。

初夏の夜が、少しだけやさしい世界に思える。隣の人も、きっとやさしい人なのだろう。

ちりん。
ちりりん。

心地よい音で、眠りに引きこまれていく。

---

(いた!)

網戸を閉めた一瞬だった。
なぜだ。
どうやって入れた。

電気を消すたび、
ぷぅん、という音がする。

俺は憎っくき蚊に向かって、電撃ラケットを振り下ろす。風圧に煽られて、風鈴がうるさく鳴った。

ちりん。

(うわこっち来た!)

ブンッ!

ちりりん。

(かかってこいやーーーーー!)

俺は汗だくで蚊との死闘を続けた。
今夜は眠れそうになかった。

ちりん。
ちりりん。


こちらの企画に参加させていただきました。

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