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「愛子天皇」推し活勢に言いたい、「俺のフグ返せよ」

なんだこのルサンティマンは

20年ほど前の2月、その頃、総合月刊誌の編集長をしていた私は、イラク問題の意見を聞くため中東研究者や記者に、新宿でフグ料理を振る舞いました。ところが席の冒頭、この4日前に発表された秋篠宮妃ご懐妊が話題になった途端、一人の女性研究者が痛くお怒りに。「そもそもあの〇子(畏れ多くも畏くも宮妃殿下の御名です)気に食わないのよね」とヒステリーを続けて結局、イラクの話はどこかへ飛び、フグはタダ食いされました。

この4年ほど前、皇太子夫妻(現両陛下)に、愛子内親王が生まれましたが、雅子妃は高齢出産で、次子は期待できない状況。この世代の皇族はすべて女性で、そのままだと現在の皇位継承条件の「男系男子」は今の天皇と弟の秋篠宮で途絶えることに。女系への道を開く女性天皇を認めるか、臣籍降下した旧宮家から養子を迎えるか、が、現実的な問題として「熱く」論議されていました。

外交官からの皇室入りした上で、後嗣問題をはじめ、皇室という旧弊な「家」の中で深刻なプレッシャーに苛まれていた雅子妃に「社会的に不当に抑圧された自分たち」を仮託した女性たちが中心になって「愛子天皇」待望論が燃え上がりました。小泉政権下での皇室典範改正論議では、女性女系天皇への路が開かれようとしていました。つまり「愛子天皇」は現実性の高い事となっていたのです。

ところが、そこに降って湧いたようなご懐妊。しかも結局男子出産。この段階で、従来の制度での、この世代の皇位継承者が確保され、皇位継承問題は一旦、沙汰止みとなりました。

件の女性研究者の狂乱は、振り上げた拳の持って行き場を失ったためなのでしょう。

「王」の条件

2020年には秋篠宮の立皇嗣が行われ、今の天皇が宣明、つまり正式に国事行為として内外に発表しました。その後、悠仁親王は無事、成人。

しかし、その次の世代で男子が続く保証はどこにもなく、政府は、皇族数確保のため皇室典範改正を準備しています。方策は、女性宮家と旧宮家男子の養子で、また激しい論争となっています。

おかしなことに「愛子天皇」を推す声が再び燃えさかっています。底辺労働者である私はいまだに編集者稼業で糊口をしのいでいますが、「愛子天皇」に否定的な記事への暴力的な圧力、秋篠宮家に対する誹謗中傷を日々目にしています。「識者」と呼ばれる人々までが「国民の人気が高いので愛子天皇を」と主張する始末。20年前の、かの女性研究者の感情爆発を再び目の当たりにしています。

しかし20年前の議論とは前提が全く異なってしまっているのです。今のルール、というかこれまで続いていた皇位継承ルールでは、今の天皇のあとの継承順位第一位は皇嗣の秋篠宮、そして第二位は悠仁親王となります。愛子内親王世代の皇嗣は今のルールでは悠仁親王しかあり得ません。今回のは、その後の世代をどうするかを今のうちに考えておく、ということなのです。

現代の先進国の王制の正統性は、突き詰めれば、既定の継承順で決まることで恣意性を排除出来ることにあります。

おおよそ、国というシステムでは政治的実権とは別に制度運営の運用上の側面や内外での儀礼的な要請から、「国のトップ」を大抵の国は置いています。政治的実権をもつ君主や大統領が兼ねるという古いタイプの国もありますが、ヨーロッパの多くの王国や英本土以外の英連邦諸国のような「象徴王制」、ドイツやイタリアのようにわざわざ選挙で「象徴大統領」を選出する共和制国家もあります。

つまり王に実権はなくともその権威はいまだに国の運用にとって重要なツールです。ムードや圧力でその座を左右させない必要があります。

初の女系だろうと南北朝期に別れた旧宮家からの養子だろうと、国民が正統の範囲と受け取るなら、どちらもありと私は考えていますが、既に存在する皇嗣を圧力ですげ替えること、それが可能であると思わせることは別、恣意的なルール否定、王制に対して決して取ってはならない行為です。

そもそも、今の天皇が立皇嗣を決めて「宣明」している段階で愛子内親王の世代での皇位継承者は悠仁親王で確定しております。「綸言汗の如し」とありますが、天皇が一度、国事として正式に決めて発表した事柄が翻されることは天皇そのものを否定することになります。

ですから「女性天皇」論と「愛子天皇」論とは、全く質の異なるもの。「愛子天皇」推しは、天皇制や皇位継承について語っているのではなく、「女性問題」で何事かを言いたい人々が、20年前の無念をただごり押ししているだけとしか思えません。

どの辺りが震源か想像に難くないですが、社会的ヒステリーによってルールがねじ曲げられた王位を戴くくらいなら、今の日本では選挙の方が、よっぽどまともな正統性付与シムテムとして確立されているので、共和制に移行した方が健全です。

この件についての私の想いは、今もって「俺のフグ返せよ」なのです。

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