一年前の悩みは宇宙の彼方へ
43歳で無職になり、無職のまま44歳になり、無職のまま一年を過ごしました。
無職トピック、だいぶ引き延ばしています。それくらい、年齢的にも強烈な出来事だったし、また、今までの「退職」と一味違って、「次の仕事なにしよう」ではなく「これからの生き方どうしよう」に突入する大きなきっかけとなったからです。2024年の夏は経済的にもそこまで余裕はなく、今回の無職は楽しんじゃお!と決め込む反面、ちょっとしたアルバイトすら見つからなかったらどうしよう、と、パートナーが出社したあとの寝室で、ひとりタウンワークを開いては閉じ、スクロールしては閉じ、「世界に私の居場所なんてない」を体現していました。不安状態を抱えた無職は、朝も夜も関係なく、どの時間帯にもうっすらと自分のほの暗い影が付きまといます。
思わぬルートで叶う夢
一年前の「世界に私の居場所なんてない」は、一年後にはすっかり解消されて、同じ悩みは一年続かないという真理は、無職状態を脱したときほど実感することはないですよね。ヴィパッサナー瞑想合宿へ行ったり、毎日が最高の一日になるように過ごしたりしているうちに、生き方の方向性も見えてきて、私は今、小さな出版社で駆け出しの編集者をしています。
会社員もフリーランスもやってきて、どちらの良さも悪さも知り、一長だし一短だし。私はどちらも向いてるし、どちらにも不満はある。ただ会社組織の良いところは、自分ひとりではやれない規模の仕事ができる、ということだと思います。これは待遇や福利厚生、安定性よりもずっと、「会社員であるメリット」であると。大きい仕事を会社が連れてきます。フリーランスだと、横のつながりは強固になっても、身に余るほどの仕事にはなかなか巡り合えません。少なくとも私はできなかったんです。
小さな出版社に入り、フリーランス時代に鍛え上げた「プロフェッショナルな雑務」をしているうちに、身に余る仕事に立ち会わせてもらえることになりました。それは、業界の著名人の取材に同行し、撮影をするというもの。業界は伏せますが、あなたも私も好きなやつです。そして、世の中に欠かせないもの。クレジットとして、私の名前が誌面に載ります。WEBじゃなくて、誌面です。これがしびれます。編集長からすれば、あなた写真も好きなんだし、この業界にも興味があって入ったんだし、毎日仕事がんばってるんだし、連れて行くよ、という感じなんだと思います。最初の現場は京都で、宇宙がひっくり返るような吸引力の取材の中、京都という場所がいっそう思い入れ深い土地になりました。(弾丸でしたけれど)
自分の写真が名前入りで世の中に出る。それはフリーで活躍しないとできないことだと思っていました。それを叶えたくて出版社に入ったわけじゃないけど、大事な業務の一つになりました。こんなルートで夢が叶うなんて。
ただ、これは自分が撮った写真だけれど、「自分の写真」じゃないことも理解しています。仕事で写真は撮るけど、写真を仕事にしているわけじゃない。同じシャッターを切るにも、意味は幾重にもなります。会社では「撮らせていただく」。自分の写真は「私が撮る」。(私の場合はその間に、「お撮りしましょうか?」というフレンドリーポジションも発生します)
取材に同行して撮影をするというのは、給料以上に得られるものが大きい。プロフェッショナル同士の対話をまじかで見て、心眼が開く瞬間に立ち会う。これは疲れてなんかられないなと思う。緊張なんてもってのほかだな、と。
呪詛も100回送れば姿を変える
「撮らせていただく」をしながら、取材の言葉から導きを得て、「自分の写真」も深堀りしていく。今の私が考えうる限りの最高の環境に、今はいます。なにもかも、一年前には想像もしなかった次元にいる。だから、異動辞令を出してくれた前職には、一周しても二周しても、やっぱり感謝しています。ちょうど一年前に、こんなことを書いています。
一年前には想像もしなかった次元にいるけど、ちょうど一年前から舵を切った方向で、着くべき島にたどり着いたんだなとも思います。そうなると不思議なことに、私の呪詛が便りとなり、前職の仲間たちとの良い関係が、再び繋がったりしています。
取材、同行、撮影、編集、大変、怒られる、疲れる、楽しい、みたいなこんな武者修行を、若いときにやれたらよかった。いや、若いときにもそれなりに仕事してきた気もするけど、「うまくやれることだけをスムーズにしてきた」ずるい自覚もあります。うまくやれることと、得意であることは、ほんの少しだけニュアンスが違う。うまくやれることは必ずしも、人を喜ばせるとは限らない。得意なことは、誰かを喜ばせることができる。
「好きなことを得意なやり方で、人に喜んでもらうために」
もうね、仕事はこれでしかないです。あと何年、現場にいられるかわからないけど、中年の武者修行を長く続けられたらいいなと思う。
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