見出し画像

スピリチュアルはなぜ叩かれるのかーー4兆円市場の現場から見えた5つの理由

前回の記事「スピリチュアルとは何か」を読んだ方の中には、「でも結局、怪しいんじゃないの?」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「スピリチュアルは怪しいって言われるから、大きな声では言えない。占い師をやっているというのが恥ずかしい。反応が怖いから家族や友だちには内緒にしている。」——そういう声を聞いたことがあります。確かに自分も当初はそんな気持ちを持っていました。

そこで、何が批判の原因になっているのか、しっかり向き合ってみようと考え、この記事を作ることにしました。


まず「スピリチュアルとは何か」を復習しよう

批判を整理する前に、前回の記事で定義した内容を確認しておきます。

スピリチュアルとは、自分の内側に宿る魂(スピリット)の声を聞き、それに従って生きること。またはそれを目指す生き方、在り方。

宗教とは違います。宗教は外の権威に従うもの。スピリチュアルは内の声を聞くものです。「天使にお願いすれば叶う」という話でもありません。

ところで「スピリチュアル」はどれくらいの規模の市場か

批判の話に入る前に、もう一つ確認しておきたいことがあります。「スピリチュアル」という言葉が、実際にどれほど広いジャンルをカバーしているかです。

詳しくは「2026年版業界動向レポート|スピリチュアルビジネスの市場規模と収益モデル」をご覧いただきたいのですが、概要を整理するとこうなります。

矢野経済研究所の調査によれば、日本のスピリチュアル関連市場の規模は2023年度で約4兆2,418億円(ウェルネスツーリズムを含めると5兆円超)とされています。

そしてこの市場に含まれるのは、次のような幅広いジャンルです。

  • 占術・予測(タロット、姓名判断、星占い、電話占いなど)

  • ヒーリング・エナジーワーク(レイキ、チャクラ調整、波動治療など)

  • チャネリング・霊的サービス(除霊、浄霊、アカシックリーディングなど)

  • 能力開発・コーチング(自己啓発、潜在意識活用、コーチングなど)

  • 瞑想・マインドフルネス

  • ヨガ・ピラティス

  • パワーストーン・スピリチュアルグッズの物販

  • スピリチュアル系の講座・養成スクール

  • デジタルコンテンツ・アプリ

  • ウェルネスツーリズム(パワースポット巡り、リトリートなど)

温泉旅行からパワーストーン、コーチング、除霊まで——これが全部「スピリチュアル」という一つの言葉でくくられています。

これが重要です。

批判する側が「スピリチュアル」と言うとき、この10ジャンルのうちのどれかを見ています。でも批判される側は別のジャンルにいる。話がかみ合わないとすれば、理由の一つはここにあります。

メディアで取り上げられる批判

消費者庁や各種報道によれば、霊感商法で数百万円を失った人がいます。「運気が上がる」と言われてパワーストーンを何十万円分も購入した人の相談記録があります。高額講座を受講したのに何も変わらなかったという声があります。カリスマ的な指導者に依存して、自分の判断力を失った人がいます。

「あなたは呪われている。このままでは死んでしまう。これを買えば大丈夫だ」——不安を徹底的に煽り、高額な商品やサービスを買わせる手口も報告されています。

さらに深刻なケースとして、「除霊のために必要だ」とマインドコントロールされ、性的な関係を強いられたという報告もあります。スピリチュアルの権威を、性的搾取に利用した事例です。

このような批判は社会的な問題としてメディアに取り上げられ、広く報道されます。

批判の発生源を六つに分類する

私が現場で観察してきた限り、スピリチュアルへの批判は大きく六つに分類できます。

A:業者側の問題

前述のような詐欺や詐欺まがいの霊感商法。これは批判されて当然です。

消費者庁の公開資料(霊感商法等に関する消費生活相談について・2022年8月)によれば、霊感商法(開運商法)に関する消費生活相談件数の推移はこうなっています。

2021年度の平均契約金額は約113万円。ピーク時の2012年度から件数は半減していますが、依然として年間千件以上の相談が継続しています。

同資料に記載されている実際の相談事例を見ると、手口のパターンが見えます。「字画が良くない、先祖が供養されていない」と言われ印鑑を30万円で購入。「病気が治る」と連れて行かれ、浄霊と称して入会金を請求。無料占いから誘導され、課金制のメッセージサービスで高額請求。

さらに深刻なのが、宗教法人を隠れ蓑にした洗脳と献金のセットです。信者が家庭に入り込み、知らぬ間に入信させられ、繰り返し献金を求められる——気づいたときには預金がほぼ空になっていたという報告があります。洗脳状態では本人も被害と気づきにくく、家族が異変に気づいて初めて相談に至るケースが多い。

ただしこれは「スピリチュアルが悪い」のではなく「悪質な業者・組織が悪い」という話です。飲食業界に食中毒を出す店があっても、飲食業界全体が批判されないのと同じ構造です。

B:受講者・消費者側の問題

動画講座を受講したものの結局続かず、放置——というケースは珍しくありません。私の知り合いにも、30万円の動画講座に申し込んで1本も見ていないという人がいます。本人が納得しているなら、それはその人の選択です。

また、「これをやったら運が良くなる」と言われてサービスを受けた。
でも体感がない。

問題はその後です。「高いお金を出したのに何も変わらなかった」という不満が、「騙された」という解釈に変わるとき、批判が生まれます。家族が「何十万円ものお金が消えた」と感じれば、批判は講座やサービス全体に向かいます。

でも本質は、行動できなかったことの問題ですし、体感は非常に個人の主観によるものです。もともと五感が鈍っている場合や、以前の状態を明確に記録していない限り、何がどう変わったのかを振り返ることは難しくなります。(願いも、メモしていない限り、叶っていたとしても分からないのと同じです)

C:構造の問題

AとBが混在しているせいで、外から見ると全部同じに見えます。良心的な実践者も、詐欺師も、依存している受講者も、行動できなかった人、感じられなかった人も——全員が「スピリチュアル」というラベルの下に一括りにされる。区別がつかない。「スピリチュアル=怪しい」という印象が固まります。

D:認知の問題

そもそも「スピリチュアルとは何か」を知らないまま判断している層がいます。前のセクションで示した10ジャンルのうち、パワーストーンへの依存やパワースポット巡りだけを見て、それがスピリチュアルの全体像だと思っている。断片だけを見て全体を判断している状態です。

ただでさえ目に見えなくて説明が難しいのに、この業界は圧倒的に感覚派の女性が多い。感覚で受け取り、感覚で動く。それ自体は強みです。

ただ、感じていることを言語化する訓練を受けていないまま発信すると「宇宙がー」「波動がー」「龍がー」という表現になる。本人には確かな体験があったとて、外部には伝わらない。しかし本人は幸せそうーー怪しさ倍増でしょう。

余談ですが、スピリチュアリスト同士でも「それって本当?」「そんなのあるんだ!」と思うサービスは山ほどあります。この業界は新しいサービスが次々と生まれ続けている。

レイキですら「これは臼井式レイキよりすごいレイキなんです」と言われ、「すごいって・・・何が? どう?どれくらい!?」と聞き返したところ「えっ(苦笑) 分からないけど、そう教えてもらったから」と言われて困惑したことがありますが、それくらい当事者が説明できないケースもあります。

外部の人間が「何が何だか分からない」と感じるのは、ある意味当然です。

E:科学信仰の問題

「科学的に証明されていないものは信じない」——この立場の人が一定数います。批判としては理解できます。

ただ、考えてみてください。

テレビ・ラジオ・Wi-Fi。電波は目に見えません。でも誰も「電波は怪しい」とは言わない。測定器で数値化できるから、存在を認めている。「測れる=本物、測れない=嘘」という構図です。

ではカウンセリングで「心が軽くなった」という体験は、数値化できますか。愛情は測定できますか。芸術の価値に数式はありますか。科学で測れないが、誰もが価値を認めているものは無数に存在します。

スピリチュアリストが「意識」「波動」「エネルギー」と口にした途端に怪しまれる。でも「周波数」「バイオフィールド」と言えば、研究対象として扱われることもある。言葉が変わっただけで、指している現象は近い。

科学は現段階の人類のテクノロジーで再現・測定できる範囲を扱うものです。万能ではない。「現時点で測れない=存在しない」は、論理として成立しません。

批判の本質はここにあります。スピリチュアルが怪しいのではなく、測定できないものへの不信感が投影されているのです。

F:メディアの煽り

悪い事例ほどニュースになります。霊感商法の被害、高額請求、マインドコントロール——これが繰り返し報道され、SNSで拡散されます。一方、良心的な実践者の地道な活動は可視化されません。「見えるものが全て」「科学的にーー」という認知バイアスが批判を増幅させます。

とはいえ、目に見えないがゆえに

六つの分類を示しましたが、実際に世間の批判が最も燃え上がるのは、感覚値として二つに絞られます。

一つ目は、嘘とお金が絡んでいる部分。いかんせん目に見えない世界の話ゆえに、人を騙して稼ごうとする人達が存在するのは事実。

高額講座、霊感商法——金額が大きいほど批判は激しくなります。場合によっては家族を巻き込み、命に関わる問題へと発展することもあります。

二つ目は、実践者本人の在り方・見え方。
いわゆる「ふわふわスピリチュアルおばさん」という揶揄です。根拠なく「宇宙がー」「波動がー」と語る人の姿が、業界全体のイメージを作ってしまう。これはAやBの話ではなく、個人の言語化力と自己認識の問題です。

目に見えない世界を扱うこと自体に嫌悪感を示す人達からすると、すべてが怪しく、悪に見える。しかし、ただ自己の内面を探求しようとしている当事者からすると、「そんなことしてないんだけど」となる。

お金が流通していることで、余計こじれている部分もあるでしょう。目に見えない世界のできごとに値段を付けるわけです。無料でアドバイスされたら受け取るけれど、「○円になります」といわれたとたん、嫌悪感を示すーー

批判している人が怒っているのは何に対してか。
それは「スピリチュアル」が悪いのか?

スピリチュアルビジネスの未来に何が起きるか——現場からの予測

推測を含みますが、現場にいる人間として考えておく必要があると思っていることがあります。

市場が5兆円規模まで拡大し、被害相談が年間千件以上続くとなれば、行政が動くのは時間の問題です。すでにその流れは始まっています。

2022年の旧統一教会問題を機に、消費者契約法が改正されました。「霊感等を用いた告知」が新たな契約取消事由に追加され、スピリチュアル業界への法的な目は明確に厳しくなっています。

今後、考えられる規制の方向性は大きく二つです。

一つは表現規制。薬機法が「この薬を飲めば治る」という効能効果の断言を禁じているように、「必ず運気が上がる」「絶対に願いが叶う」といった結果を保証する表現への制限が入る可能性があります。

もう一つは説明義務・資格の明確化。高額サービスを提供する際の事前説明義務、返金ポリシーの明示義務、実績・資格の開示義務といったルールが整備される方向性です。

実践者一人ひとりが、他人事ではなく自分ごととして考えておく必要がある局面に来ているのではないでしょうか。

あとがき

ここでは、だから○○が悪い、○○すべきだ、反論せよ!と言う話はしません。

目に見えない世界を一切信じない人たちがいます。その人たちを説得することは、おそらくできません。価値観の根本が違うからです。そしてそれでいい。

大事なのは、スピリチュアルを信じる人と、一切信じない人(嫌悪する人)が共存している世界に、私たちは生きているということを認識することです。

(抵抗すること、そちらにフォーカスすること自体がエネルギー的な拡大を生む・・・などと言い始めると、またややこしくなりますから)
スピリチュアル界隈にいる生息する当事者として、強いて言うならば。

「スピリチュアル=宗教じゃないし、不安を煽って高額の壺やパワーストーンを売ろうとする人を見て、それがスピリチュアルの全体だと思わないで欲しいなぁ・・・・・・。」

と言う気持ちで、本稿を作成しました。

お金が流れる場所に、悪質な業者が参入するのは、どの業界でも起きていることです。5兆円規模まで拡大したスピリチュアル市場も例外ではないということ。

さあ、これからどうなるか。

#スピリチュアルビジネス #占い師 #スピリチュアル批判 #霊感商法被害 #消費者庁 #スピリチュアル起業 #スピリチュアル市場 #占い #ヒーリング #スピリチュアルとお金

杏樹のプロフィール → こちら
杏樹のサービス一覧 → こちら

【こちらもおすすめ!】

スピリチュアルとは何か
スピリチュアルビジネスの市場規模と収益モデル
投資家向けメディアがスピリチュアルビジネスを選び始めた。次に何が起きるかデータで読む
AIが占い師の仕事を奪う、は本当か?

いいなと思ったら応援しよう!

直澄杏樹 よろしければ応援お願いします!いただいたチップはさらなる研鑽に活用させていただきます!

この記事は noteマネー にピックアップされました

noteマネーのバナー